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第19話 月夜に舞い散る泡沫の夢Ⅰ

先に書いておきますが、戦闘シーンに入れませんでした。

区切り的にここが丁度いいので……

そして更新頻度が落ちます(断言)。

どなたか闇雲に新作を書くなと叱ってください……。


「クヒヒッ、そうか、思い出してくれたか! なら、当然俺の事情だって理解したはずだ。その上で名乗らせて貰うぞッ! ――殺しに来てやったぞ、化物共ッ! もう途中退場も、中途半端な幕引きも許さねぇ! こっからは何もかも全開だッ! 欲望の深淵で死んで逝けッ!!」


 さぁ、始まりだ! 開幕だッ!

 憎悪に歪んだ視線も、醜悪な欲望も、その全てが今宵の調味料だ。

 本当に記憶を()()()()戻してやって良かったと思える表情だ。

 ただ娘とやらを取られた事に対しての感情じゃあ、全然足りない。

 だから、その蝋燭の灯火みたいな火へ薪を焼べた。

 あぁ、早く殺りたいなぁ……。

 だが、まだ紹介が終わっていないからな。

 今宵の主役は俺だけじゃない。

 ディアは間接的な動機なので補助に回ってもらうことになっているが、アイツは違う。


「さて、まずはルール説明とゲストの紹介といこうじゃないか」

「ルール……だと? 何故お前の巫山戯た遊びに付き合う必要があるッ!」

「そうよ!」

「は〜、空気読めよ。その目は節穴か? ただの装飾品か? お前らの娘とやらはこっちのもんだ。つまり生殺与奪の権利は俺らにあるんだよ。わかる?」


 とは言っても()()は生きている訳じゃないがな。

 ともあれ、一つ種明かしはしておこうか。

 その方が面白そうだ。


「つーわけで、取り敢えず洗脳だけは解いておいてやるよ。ゲーム終了まで良い声で鳴いて貰わなきゃならないからなぁ?」

「……下衆がっ」

「なんとでも言ってくれて構わないぜ? 寧ろ褒め言葉だ」


 そうしてエリィに掛けていた洗脳魔法を解く。

 すると次第に表情が年相応のものへ変わっていき、自らが置かれた状況に混乱しているようだった。


「パパ! ママ!」

「エリィ! 直ぐに助けるからな……ッ!」

「大丈夫よ!」


 おー、なんか言ってるなー。

 感情は安っぽくて笑えてくるが、それもまた一興と言うやつだ。


「じゃ、正常に戻ったところでまずはルールの説明だお前らはこいつを取り返せば勝ち。俺らは守り抜けば……ん? 俺らは別に守る必要はないよな、これ」

「破綻もいいところですね、マコト様」

「うっさいっ! ……まぁ、こいつが死ぬ前にお前らが取り返せば良いだけさ。制限時間は付けるがな」

「制限時間……だと?」


 誠が付ける制限時間。

 それはエリィに巻き付けられた縄を導火線替わりにして、燃えて焦げ死ぬ迄だ。

 この縄にはディア謹製の可燃毒が十分に染み込んでいるのでその燃焼性は大変信用出来る。

 詳しく説明するつもりは無いが、こいつらも馬鹿じゃ無いはずなので理解してくれるはずだ。


「ゲーム開始と同時に縄の先に火をつける。後はわかるよな?」


 酷薄な笑顔でそう告げる。

 あー、俺って優しいなぁ……。

 無条件で殺したりしないんだから、これは十分過ぎる譲歩だ。

 あっちがどう受け取るかはさて置いて、だが。

 見てみれば良い感じに仕上がっているみたいだ。

 とてもじゃないが、これ以上我慢というのは死ぬほどキツイが、それは許されそうにないのでもう一つの用件を済ませることにする。


「そんで、もう一人のゲストの紹介だっ!」


 パチンッと指を鳴らして、それを合図に二組の間に霧が渦巻き、収束し、やがて少女の姿を形作った。

 夜の闇に映える金色(こんじき)の髪を流し、その瑠璃色の瞳はさながら蒼い月のようで、蠱惑的な微笑みを浮かべる美少女。

 白磁のような肌が、その存在感を更に強め、際立たせる少女こそが、第二の主役。

 膝丈の白いワンピースの裾を摘み一礼する光景は、これまでの時間が嘘のような錯覚を与えるが、それは全くの間違いだ。

 夜に輝くような瑠璃色の瞳は宝石のように映るだろうが、そこには黒と白の二人と同じ狂気の色が浮かぶ。


「……久しぶり。……私ね、会いに来ちゃったっ! だって、思い出のお返しはしなきゃ、ね♪」

「ルーナ……ッ! 逃がしたのはお前か、小僧ッ!」

「ん? 俺は別に逃がした覚えは無いがなぁ。憶測で喋っても何の得にもならねぇぞ?」


 俺はルーナを()()()()とは思っていないからな。

 だからといってそれ以上のことを言う気は無いが……そこはどうでもいいことだ。


 ――どうせお前らは、ここで死ぬんだからな。


 冥土の土産に……なんてことをするつもりは毛頭ない。

 俺らには何の得も無いからな。


「さぁ、開幕だッ! 俺達の全身全霊を持って冥府への手向けとさせてもらうぞッ!」

「……楽しませて、ね?」

「私はあくまで補助ですが、楽しませて貰いますよっ」


 これは戦いの形式を模しただけの、蹂躙劇だ。

 相手の手の内は全てわかっていると言っていい。

 急所(エリィ)も抑えてある関係上、奴らは逃げるという選択肢は取ることが出来ない。

 いや、取れるが感情がそれを許さないと言うのが正しいだろうか。


「ディーナ、やるしか無さそうだ」

「わかっているわっ! ……なら、こっちもアレを出さなきゃならないわね」

「準備の時間くらいはやるからさっ! どうせ全部わかってんだ、隠す必要はねぇよ?」

「……精々後悔しない事だッ!」

「えぇッ!」


 二人の指に嵌められた指輪がキラリと輝き、あるものを呼び出す。

 アルムの指輪からは、四方に二メートル強はある、赤黒く、粘性を持った魔法生物――スライムだ。

 この世界のスライムはゲームなんかでよく居るプルリとした可愛らしいものではなく、アメーバ状のドロドロとした液体のようなものだ。

 だが、こいつはゲーム程ではないにしろ、立体的に存在する。

 勿論ただのスライムでは無く、錬金術師らしい、真理を突き詰めた結果の産物。

 その名を――エヴォルスライム。

 その特性は、無限に進化するという単純なもの。

 だが、単純故に……強い。


 一方でディーナが呼び出したのは無機物的な感触が強く現れるゴーレムだ。

 その数、約三〇体。

 一メートルと七十センチ位の身長で、ツルリとした身体付き、全身が土気色で統一されたゴーレム達は、さながら軍隊だ。

 その手には剣や杖が握られていることから様々なタイプが混ざっているのだろう。


「どうした? 怖気付いたか?」


 自信満々といった様子でアルムが告げる。


 ――怖気付く? まさか。

 俺は全部知ってるって言ったはずだ。

 よってこの状況は想定内。

 しかし数の利としてはあちらに分があるのは確かだろう。

 ……それで押さえつけられるのなら、だが。


「全部知ってるって言っただろ? なら当然として対策くらいは立てられるが……。もう待ちきれなさそうなんでなッ! ――ルーナ、点火だッ!」

「……んっ!」


 誠の合図でエリィに括りつけられていた縄が伸びた先の先端に、ルーナが魔法で着火させる。

 ボウッと音を立てて現れたのは赤い炎では無く、青白いものだ。


「えっ!? 燃えて……ゃ……いやっ!」

「エリィ! ……糞ガキ共、楽に死ねると思うなッ!」


 エリィは必死に縄を解こうとしているが、既にがっちりと結ばれているのでそれは叶わない。

 徐々に涙目になり、怯えた表情へ変わっていた。


(さて、二人共。手筈通りに頼む。ルーナは殺すなよ? 俺も遊びたいのに脇役の相手なんだからさ)

(わかりました、マコト様)

(……むぅ、信用が無い。でも、大丈夫だよ? ……直ぐに殺したりなんてしないからっ)

(……ほんとかねぇ)


 念話で確認をしつつ、三人はそれぞれの相手へ目を向ける。

 誠の相手はエヴォルスライム。

 ディアの相手はゴーレムの集団。

 ルーナはメインディッシュであるアルムとディーナだ。

 戦闘に関しての心配はしていないが、ルーナが二人を直ぐに殺してしまうのではないかという一点だけが気掛かりだ。

 本人はああ言っていたが、感情に支配されて一撃で首が飛ぶ……なんて事は止めてほしい。

 残念ながらルーナには二人を瞬殺出来るだけの力があるだけに、一応釘を刺したのだ。

 俺もルーナのステータスを見た時は驚いた。

 レベルの問題はあるが、同レベルなら下手したら俺も魔王も負ける……かもしれない。

 それだけのポテンシャルをルーナは持っていたにも関わらず、ベルとの契約でさらに面倒な力を得てしまった。

 あれを使われたら俺も本気で相手をしなければならないくらいだ。


 ともあれ、俺の当面の相手はあのスライムだ。

 相性で言えばルーナが相手をするのが一番だが、それは見送らせて貰った。

 ルーナの目を見ていたら、少しくらいは譲ってもいいかと思ってしまったのだ。

 これは俺の復讐でもあり、ルーナの復讐でもある。

 俺の場合は全体の一部分だが、ルーナの場合はこれが全てだ。

 だからと言って蔑ろにしても良い訳では無いが、その辺りは理解してくれているようだった。


 話を戻そう。

 スライムというのは核を壊せば倒せるのだが、あのスライムには物理攻撃がほとんど効かない。

 それどころかあれは『進化し続ける』スライム。

 一度使った手は効かないと思った方がいい。

 物理攻撃は完全無効、魔法攻撃なら学習されてもダメージが通るだろうか。

 さらに面倒な事にあいつの核は無数にあると言っていい。

 その全てを同時に破壊しなければ倒すことが出来ないのだ。

 よって基本的に剣士である俺からすれば相性は最悪も良いところの相手。

 ……だが、手はある。

 幸い俺が使う剣はそんじょそこらの物とは訳が違う。

 大抵の物は斬れるし、刃こぼれも覚えている範囲では一度たりともした事が無い、何とも不思議な剣だ。

 だからこそ、あれが使える筈だ。

 使えるのは恐らく一度きり。

 集中力と現状のレベルではマモンの協力が必要なので身体が持たない。


 ――だからなんだ? 失敗は()()()()()


 俺は復讐を果たすと、そう誓ったのだから。


 嫌いな奴の技を使う事になるのは癪に障るが、復讐の方が優先だ。

 改めてスライムへ視線を向けて、夜の闇の中で一際輝く銀色の神剣へ手を掛けた。


ルーナさんはかなりの強キャラです。

もしかしたら後々でサブタイを変えるかもしれません。

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