第17話 集う狂者
投稿を始めて二ヶ月と、20000pvを達成致しましたっ!
これも読んでくれている読者様のお陰です!
是非、これからもよろしくお願いしますっ!
無事にルーナとベルは契約をすることが出来たようだ。
……条件が緩すぎる気がしないでもないが、本人達が納得してるなら良いだろう。
「美味しいものを食べさせてくれ」って何だよ、アバウトすぎるだろと思ったが、案外邪神というのもそういうものなのかもしれない。
食べるから『暴食』なのであると考えれば、納得出来ないことも無いが。
その点でいえばマモンの『強欲』というのも的を得ていると言えるが、何か関係があるのだろうか。
「それじゃ、僕は彼女の中に戻るよ? このまま実体化しているのも辛いし」
「そんなこと出来たのか」
「契約するとその人に縛られることになるからね。実体を持って封印を破ったからこれまでは動けていたけど、今は違うから。でも、そのお陰で魔力さえ貰えれば実体化出来るよ。……ただ、今はそれだとマスターが辛そうだから」
ベルが押し付けるようにそう言うと身体がどんどん透けていき、最後には消えてしまった。
いきなりではあったが、何とか要点だけは聞くことが出来たので良しとしておこう。
「ん? マスターが辛そうって……魔力欠乏か」
恐らく契約を結んだ瞬間からベルが消費する魔力がルーナのものへ変わったのだろう。
どれだけの燃費なのかは理解出来ないが、手は打つ必要があるだろう。
「大丈夫か」
「……身体が、重い。それに、魔力が足りない」
若干顔を青くしながらルーナが答えた。
「……マコトさん。……血を、吸わせてください。……その方が回復する」
「俺のことは誠でいい。……それは俺も吸血鬼になるのか?」
突然の血を吸わせて欲しいという要請には、流石に即決とはいかなかった。
ただ、これは血を吸われるという行為自体への拒絶ではなく、単純にどうなるかを知らなかったからだ。
地球でよく言われている話は、血を吸われた人も吸血鬼になるというのを思い出して聞いてみたが、その返事は少しばかり違うものだった。
「……普通の吸血鬼ならそうなる。……けれど、私は真祖だから、私の血を与えない限りは大丈夫」
「ならいいか。早くしろ」
「……ありがとうっ」
ルーナの告白に驚きはしたものの、今はそうしている場合でもない。
魔力欠乏は放っておくと危険だし、何よりもう誠には見捨てるという選択肢は存在しない。
それだけ聞くと迷わず誠は首筋をルーナへと近づけ、それを見てルーナも誠へ寄り、首筋へ視線を移す。
肌色が広がる視界へ、ルーナは吸血鬼の特徴とも言える八重歯を立て――かぷりと噛み付く。
直後に堪えるような声と、声にならない声が聞こえてくるが、その全てを無視して一心不乱でその行為へ意識を向ける。
誠の首の後ろへルーナの細い手が絡みつき、抱きつくような体勢になる。
ルーナは温かな体温を感じながらも、意識は既に自らが噛み付いた部分へ集中していた。
鋭く尖った八重歯が肌を突き破ってじわりと赤い珠が浮かばせ、長らく味わうことのなかった赤い命の源を舌で転がし、味わう。
人間には鉄臭く感じるそれは、吸血鬼にとってはどんなものにも勝る極上の食事だ。
誠がチラリとルーナを見ると、顔全体がほんのりと赤く染っていた。金糸のような髪がルーナの動きに伴って視界で揺れている。
「マコト様、大丈夫ですか?」
「ん? 若干変な感じがするが、特に問題は無いな」
「……そうですか」
怪訝そうな視線が向けられるが、誠としてはただ血が吸われているだけなので、問題にすることではない。寧ろ問題にするべきは別な部分だと思ったが、それを言ってしまうと後が怖かったので、心の奥へ引っ込めた。
吸血される感覚は初めてなので慣れないものの、だから断るというほど不快な感覚ではなかった。
そして本番と言わんばかりにもう一度噛み付かれ、さっきよりも多い血が溢れ出る。
それには少し驚いたが、そこまでの痛みは無いため、大人しく血を吸われる誠である。
ルーナは零さぬように赤く染まる唇で受け止め、器用に舌を使って舐めとっているようで、首元がこそばゆい感覚に終始襲われる。
舌が這い、捏ねくり回されるのは、どうにも情欲を掻き立てられるものだが、氷の視線がその思考を読み取ったように誠へ向けられる。
「……ディア。大体想像は出来るが、言いたいことがあるなら言ってくれていいんだぞ?」
「いえ。私はマコト様に思うところなんて全く、これっぽっちもありませんよ」
ダメだこれ、完全に拗ねた。
ならもう下手に干渉しない方がいいな。
……にしてもいつまで続くのだろうか。
一応、未だに引っ付いたままのルーナへ問いかける。
「……もう、いいか?」
「……良いと言えばいい。……でも、マコトの血、美味しい」
ペロリと噛み付いていた首元を舐めて、そんなことを言ってきた。
上目使いで、赤くなった少女に抱きつかれながら首元を舐められるという特殊すぎるシチュエーションに頭を悩ませるが、答えは出そうにない。
ただ、この状況は少々精神的に厳しい。
最早氷とかの領域を通り越して絶対零度の視線が浴びせられている。
……うん、止めさせよう。
「なら今は終わりにしてくれ」
「……わかった。……また今度」
誠の訴えに渋々といった様子で応じ、離れて立ち上がったルーナの姿は、どうにも魅力的だった。
着ている白いワンピースは所々が裂けて白亜のような肌が露出し、小さな体躯ながら濡れて艶やかな光を照り返す唇と、上気したような頬のアンバランスさは、ルーナの姿を本来あるべき姿へ成らせている。
――吸血姫。
そう呼ぶのに相応しい姿だろう。
存在感というか、生物としての〝格〟が違うとすら思えるものだ。
誠もディアもそんな素振りは見せていないが、それはこの二人が特殊なだけだろう。
そんなルーナには、早くも誠の血を吸った効果が現れ始めていた。
「……治った。……それに、魔力も十分」
身体のあちこちに存在した裂傷や痣のようなものが綺麗さっぱり無くなっていた。
何処を見ても雪のような肌が広がるだけで、傷一つすら見当たらなかった。
「……へぇ。これが吸血鬼の真祖か」
思わずといった様子で零れたその言葉。
若干引き攣る感覚は自覚しているが、ここまでとは予想していなかった。
「もう動けるか?」
「……大丈夫。……今なら、色々出来る」
「随分な自信ですね。マコト様の血を吸ったんですから当然です」
「ディア。もしかしなくても怒ってる?」
「別に、そういう訳では無いです。ただマコト様が警戒しなさすぎだと思っていただけです」
ディアが言うことも一理あるが、別に俺はルーナを信じたわけじゃない。
裏切らないことだけは自信があったから何も聞かずに血を吸わせた。
そもそも、契約を結んだ以上は裏切れるはずがない。
ただ、今は時間が惜しい。
「さぁ、後は舞台を整えるばかりだが……」
やはり演出は過激なくらいが丁度いいだろう。
それならばあれにも上がって貰わなければならない、というか必須だ。
あれが無い舞台なんて興ざめもいいところだ。
なんと言っても愉しくない。
そんな下処理の出来ていない料理なんて食べるつもりは毛頭ない。
きっとそんな復讐では満足なんて出来ないし、復讐とすら感じられないだろうから。
「ちょっと無理してでも準備するか。ディアも、ルーナも、力を貸してくれるか?」
「当然ですよ。マコト様の復讐なら、それは私の復讐でもあるんですから」
「……当たり前のこと、聞かないで。……抜け駆けなんて、させないっ」
二人からの頼もしい返事が返ってきて、予想していたとはいえ口角が吊り上がる。
どちらも同じようで同じではない理由だが、本質的には同一の感情だ。
自分の為の復讐でなくとも、さも自分の事のように扱われる他人の復讐。
自分の為の復讐をより濃密なものへ昇華させる為の、打算的とも言える協力関係。
歪だが、それでいい。
俺達は、復讐という一点で交わっていればそれでいいのだ。
「あー、そうだったな。わりぃ。高揚し過ぎてるんだろうな。それを聞けて安心したよ」
そうだ、この二人だって俺と同じだ。
殺したいと願ったヤツらが目の前でいるのに指をくわえて見ているはずが無い。
仮に俺抜きでやられたら、理性がぶっ飛んで皆殺しにする自信があるがそれと同じなんだろう。
なら、最高の復讐の為にも、最高の同志達の力を借りることにしよう。
残酷に殺す為に。
無情な死を与える為に。
願いすら目の前で踏み躙って絶望を魅せる為に。
一切の隙も与えず、僅かな油断も無く、俺達と同じ失意の墓場へ突き堕とす為に。
「一先ずアイツらへのプレゼントの仕込みといこう。きっと泣いて悦んでくれるだろうなぁ。本当に、楽しみだよ」
これはその時への投資だ。
高みの見物をしている最中のアイツらなんて面白くもなんともない。
俺達と同じ光景を見せてやるよ、特等席でな。
そして、聞いてやるんだよ。
今、どんな気持ちだ? と。
――だから、精々楽しんでくれ。
私事ですが本日誕生日を迎えました……
年の流れが年々早くなっているような気がしますね。
それとは別に、他にも作品を書いていたらストックが切れてしまったのでもしかしたら次話の投稿が遅れるかもしれません。
どうかお許しを……
それと、ルーナのステータスはまだ載せません。もう数話後になるかと思います。




