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第7話 時を越える強さ

100ptありがとうございますっ!

 それはアルメリアへの旅路のことだ。


「マモン、ちょっと聞きたいことがあるんだが」

(なんだ、主よ)

「ディアはレヴィアとの契約で固有技能を手に入れたが、俺は無理なのか?」


 誠が疑問に感じていたこと、それは『契約』による固有技能の習得だ。


(そのことか。なら答えは簡単だ。主には隙間が無いのだ)

「隙間?」

(既に主は幾つものスキルを持っているのではないか?)

「確かにそうだな。……成程、隙間ってのはそういうことか」

(そうだな。今考えていることで正しい)


 要約すると、どうにもスキルの量が多過ぎるが故に新しい固有技能を習得出来ないらしい。

 そこは一応神なんだから何とかしろよと思わないでもないが、心の金庫にしまい込む。


「で、それだと俺は固有技能を習得出来ない訳だが……お前の力をどうやって借りるんだよ」

(それは簡単だ。我自身が主に同化して、その間だけ力を貸せるようにする。負担は大きいだろうが、その代わりに与える力も強大だ。我と主の相性はそれ程に良いのだ)

「ふーん。なら奥の手として取っておくか。……それでお前の力ってなんなんだ?」


 誠としては一番気になると言ってもいい部分だ。

 相性がいいと言うことは少なからず似たり寄ったりの能力なのだろうかと考えていたのだ。


(我の力は、《時空》と《強化》だな。因みにレヴィアは《水》と《毒》だ)

「《時空》と《強化》……それならこんなことは出来るか?」


 マモンの力である《時空》と《強化》、この二つを聞いた瞬間に誠には一つの案が浮かんでいた。

 そしてそれは考えるだけでマモンに伝わる。


(……このように使うか。可能か不可能かで言われれば可能だろう。唯、体への負担はかなりキツくなるぞ)

「死なないならいいさ。どうせ奥の手だからな」

(それなら良い。必要な時は呼ぶがいい)



 ◇



「ぶっつけ本番だが、()()()()()()。――やるぞ、マモン」

(承知)


 誠は何の躊躇いもなく奥の手を切る。

 これはある意味で言えば賭けのようなものだ。

 もし失敗すれば俺達は死んで、成功すれば全て解決するオール・オア・ナッシングの綱渡り。

 既にディアは『悪魔憑きの祓魔師(デビルズエクソシスト)』を相手に防戦に入っている。

 しかし力量差は歴然らしく、後衛的な特性の『悪魔憑きの祓魔師(デビルズエクソシスト)』にすらギリギリで、体には赤いラインが幾つも刻まれている。

 これは長くは持たないだろう。

 それでもディアは戦っているんだ。

 なら、俺がやるべきことは――


「――《同化》」


 まずは奥の手への初手を打つ。

 これは誠が『契約』した邪神であるマモンと一体化して、その力を借りるためのものだ。

 自分と異なる存在が割り込んでくる感覚に嫌悪感を覚えながらも、自我を確かに保たなければならない。


「……ッ……やっぱキツい。……キツいが……()()()


 この時点で体には相当な負荷がかかるのだ。

 圧倒的な魔力が体に宿るのを感じるが、比例的に全身に痛みが増していく。

 しかしこれは唯の前準備だ。

 この程度の痛みで、躊躇っていられない。

 常人なら気が飛ぶような痛みでも、俺にとっては生きてるのを実感する感覚だ。

 ようやく溢れ出る魔力が落ち着いたところで仕上げに入る。


「――イメージしろ、掴み取れ、俺が知る()()()の最強を……」


 極限まで集中して、あの頃の自分自身を思い浮かべる。


 ――そうだ、見えてきた。

 ――ならあとは、いつもと同じだ。


 マモンの《時空》の力で過去の自分を引き寄せ、自身が持つ固有技能である『完全模倣』を《強化》によってブーストさせて、無理矢理模倣させる。

 これが俺が思い描いた最大の奥の手――


「――【神域模倣】」


 それは自分自身の体を一時的に作り替える、神にのみ許された権限とも言える魔法。

 その代償は《同化》の比では無い。

 それでも誠はこの方法を選んだ。

 全ては復讐の為に、立ち塞がる全てを斬り捨てる為に。


 ――さあ、遊びはおしまいだ。


 徐々に体に馴染む力を感じながら剣を握る感触を確かめる。


「……懐かしい感覚だな。体が軽い」


 当然に痛みはあるが、どうやら成功したらしい。

 未だに耐え続けているディアに向けて、叫ぶと同時に()()踏み込んだ。


「ディア!」


 名前を呼んだだけの一言。

 それでもディアは誠の意図を察して鍔迫り合っていた状況から後ろへ大きくバックステップ。

 たったの十数秒しか経っていないはずなのにその体は傷だらけだった。

 だと言うのに、その緋い瞳だけは爛々と輝いて誠の方へと向いていた。


 そして、誠とディアの位置が入れ替わる。

 それは正しく一瞬の出来事で、『悪魔憑きの祓魔師(デビルズエクソシスト)』の痩せこけた顔の目ですら見開かれた気がした。


「よう、久しぶりだな。お前と一度目に戦った時は確かレベル90とかそこらだったな。あの時はどうしようもない強さだと思ったよ。……でも、今の俺は魔王以上だぞ?」


 現在の誠のレベルは一時的にではあるが、一度目の世界での最高だった数値になっている。

 そのレベルは――403。

 ステータスにして凡そ7()()以上になるだろう。

 魔王すら倒し、その後も成長を続けた誠のステータスによる暴力的な膂力は、互角に持っていくだけで精一杯だったディアとは違い、その気になれば何処までも押し切れるほどだ。


「グッ……イヒヒッ、イヒヒヒッ!」

「うるせぇな……黙れよ」


 気味の悪い笑い声に少しばかり苛立つ。

 わざとらしく鍔迫り合いながら、器用にもくるりと回転して勢いをつけた右脚の回し蹴りをお見舞いする。

 すると決して軽いとは言えない『悪魔憑きの祓魔師(デビルズエクソシスト)』の体がくの字に折れながらピンポン玉のように水平に吹っ飛び、円形を模していた部屋の壁に異形の体を叩きつけた。

 そして激突したのを見届けていると、後ろからか細い声が聞こえた。


「マコト様……ごめんなさい、私……」

「何言ってんだ? 十分に耐え抜いただろ。不満か?」

「いえ、そんなことは無いですけど……それより、その力は?」

「これは、簡単に言えば諸刃の剣ってやつだ。っと、お話は後だ。取り敢えずアイツを片付けてくる」


 心配そうに見つめるディアを尻目に、また誠は走り出す。

 最早瞬間移動としか思えないような速度で立ち上がっている『悪魔憑きの祓魔師(デビルズエクソシスト)』へと接近し、居合いのように神剣を抜き放ち、一息で無数の裂傷を刻む。


「ガァァッ! ……イヒッ、イヒヒッ!」


 しかし体制を崩さずに寧ろ笑い声を上げると、持っていた銀色の錫杖を地面に突き立てた。

 すると徐々に足元に闇色の魔法陣が形成される。

 これが『悪魔召喚』の合図だ。

 この最中はどういう訳か物理・魔法問わずに攻撃が無力化されてしまう。

 しかしそれを見て誠はニヤリと笑って、再び居合いの体勢に入り、詠唱を始めた。


「――彼方を照らす輝きを、遍くを奪う漆黒を」


 それは少なくとも誠自身は知らなかった魔法の詠唱。

 出どころのわからない知識としての魔法ではあるが、それでも出来ると確信した上での選択だ。

 誠からは白と黒が混ざったような色の、しかし別々に乖離した魔力が渦を巻く。

 その白は闇を何処までも照らし、その黒は光を何処までも侵蝕するような錯覚すら覚えるある種の境地とも呼べるものだ。

 そしてそれは神剣の元へと収束する。


「イヒッ、イヒヒッ!」


 高らかに笑う声が聞こえるが、どうやら『悪魔憑きの祓魔師(デビルズエクソシスト)』の『悪魔召喚』が完了したようだ。

 悪魔が住まうと言われる悪魔界への門が開き、それは呼び出される。

 ゆっくりと床に開いた門から、紫色の肌をした人型の悪魔が現れる。

 中性的な体つきと所々破れたような一対の翼を持つ、忌避されるべき存在である悪魔種(デビル)の上位種――上位悪魔(グレーターデーモン)が誠を見て涎を垂らしていた。


「ニンゲン、ォマェ、クッデヤル」


 捕食者として絶対だという自信からくるのであろう、耳元まで裂けた口を大きく開けて誠を喰らおうと接近する。

 しかしこいつは一つだけ勘違いをしている。


「――混じりて滅失の光とならん。『死光(ヴォーパル・)付与(エンチャント)』」


 光と闇という対を成す属性をぶつけることで作り出した消滅の光を神剣に纏わせて、居合いを放つ。

 《時空》の力も組み合わせて距離の概念を無視した必中の凶刃は上位悪魔(グレーターデーモン)の上半身を下半身とお別れさせて、空中でそのまま細切れにして存在ごと消滅させる。

 そのままの勢いで『悪魔憑きの祓魔師(デビルズエクソシスト)』も表すならばXのように斬り裂いて、消滅させる。

 有り得ないと言いたげな極大まで見開かれた目が誠の視線と交錯する。

 しかし、そのまま断末魔すら上げることなく、その姿を永遠に消滅させた。


「喰われるのはお前らだよ、三下」


 既に存在を消したそれへと吐き捨てるように言った。


 ――でも、限界か。


「…………解除っ……く、そ……」

「マコト様ッ!」


 どうしても力が入らず、倒れるだけだった体を咄嗟にディアが支えてくれる。

 ……これは、改良の余地があるだろうな。

 抱えられたままの体は鉛のようになってしまい、脚も痙攣を起こして立てそうにない。

 極端に底上げされたステータスに追いついていない体で短時間とはいえ動いてしまったのだ。

 やはり、まだレベルを上げる必要がある。


 ――でも今は、少し休ませてくれ。


「……すま、ん。ちょっと、ねかせて……」


 なけなしの体力を振り絞ってそれだけ伝えると、誠の意識は闇へ引き摺り込まれた。



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