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第1話 二度目の召喚

週に1〜2話ほどのペースでいこうと思います。

章題は後々

「おぉ!『勇者』様が目覚めたぞ!」

「《勇者召喚の儀》は無事に成功したようですね」


 目覚めてすぐに二人の声が聞こえてくる。

 懐かしい声だ、本当に。

 つい今すぐにでも殺したくなる感情をいなして二人に顔をあげる。


「ここは?」

「ここはクレイベルク王国の儀式の間ですよ、『勇者』様。私はこの国の王女のセラフィ=F=クレイベルクと申します」

「『勇者』……俺が?」


 何も知らない『勇者』のように、その男は振る舞う。

 改めて俺が『勇者』と呼ばれたことに吹き出してしまいそうになる。


「『勇者』様、どうかこの国をお助け下さい……魔族の中から魔王が出現して、それを倒すことが出来るのは『勇者』様だけなのです」

「魔族? 魔王? まるで意味がわからない」

「そう、ですよね。始めからお話致しますね」


 それは魔物や魔族、『魔王』についての話。

 基本的に人に対して害になり自律的な知能を持つことが稀な魔物、その魔物を統制する高度な知能を持つ魔族。

 この二つはなんとかこの世界の住人でも対処は可能なのだ。

 それなりの犠牲を覚悟すればだが。

 しかし『魔王』だけは別だ。

『魔王』は魔族や魔物が魔王核と呼ばれる原初の魔王から受け継がれてきた選定機によって選ばれ、特殊な力を持った個体になったものだ。

 そして『勇者』は『魔王』と対となる存在であり、唯一『魔王』を殺すことが出来るのだ。


「どうでしょうか?何か質問はありますでしょうか?」

「いやいい。やってやるよ『魔王』討伐。それで報酬は何だ? 金か? 地位か? 名誉か?」

「ありがとうございます! 勿論報酬は『勇者』様の望むものなら何でも」

「なら俺への報酬は元の世界に帰ること、だ」


 この一言だけは俺の本当の望みだった。

 これさえ叶うのなら復讐はしなくてもいいほどに切望する願い。

 けれど俺は真実を知っている。


「わかりました。報酬はそのように」


 セラフィは笑顔を俺に向けてくる。


 ――気持ちが悪い


 一度目ならその笑顔に魅了されていたところだろうが、今は違う。

 その笑顔の裏を何度も何度も見せられてきた。

 醜悪な人間の欲望を。

 だから俺はこう返す。


()()()()()()。俺は天野だ。これからよろしくな」

「アマノ様ですね。よろしくお願いしますね」


 それからの話は実に退屈なものだった。

 一度聞いたことのある話なのだから当然といえば当然なのだが、それでも俺が思うままにことを進めるために必要だった。





 話が終わった俺は一人、王国の王城の一室にあるベッドで仰向けに倒れていた。


「こんなベッドで寝たのなんて何時ぶりだ?追い回されてた時はほぼずっと野宿だったしな」


 久しぶりの柔らかな寝床の感触に思わず気が緩みかける。

 けれど、ここで眠りに落ちたところで心の炎が消える訳では無い。

 俺は復讐のためにここにいるのだから。


「っと、ステータスの確認でもしておくか。そのままだといいんだが」


 そう言い男――天野 誠はいつも通りにステータスを開く。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 天野 誠 【勇者】


 HP378/378 MP216/216

 レベル1


 筋力221

 体力243

 耐久198

 敏捷276

 魔力254

 魔耐262


 固有技能(ユニークスキル)

【完全模倣】【解析】【並列思考】


 技能(スキル)

『剣術 lv6』『体術 lv4』『瞬動 lv4』『天駆 lv3』『千里眼 lv3』『隠密 lv5』『探知 lv5』『隠蔽 lv3』『威圧 lv4』『耐性《状態異常 lv4》《全属性 lv4》』…………


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 どうやらレベルは初期値であるレベル1になっているようだったが、技能(スキル)はそのまま引き継がれているようだ。流石に技能(スキル)レベルは下がっているようだったが。

 ぱっと見てみただけでも技能(スキル)の数が多いのは、誠の固有技能(ユニークスキル)の【完全模倣】によるものだった。

【完全模倣】は見た技能(スキル)を自分のものとして模倣することが出来るようになるものだ。

 しかし、普通はそれだけでは体が追いつかないはずなのだ。

 それを解消させて思うがままに使わせている理由は二つ目の固有技能(ユニークスキル)である【解析】だ。

【解析】で見たものや知っている技能(スキル)を分析し、誠の動きに合わせるように効率化させているのだ。

 最後の【並列思考】は、この【解析】で効率化させた技能(スキル)の動きを瞬時に判断、選択して行動させる役割がある。

 他の二つに比べて地味なように感じるが、この固有技能(ユニークスキル)の恩恵は非常に大きい。

 まず、通常では人というのは別々のことは同時に思考することが出来ないだろう。

 しかしこの【並列思考】があることによって、別々のことを別々の場所で処理することが出来るのだ。

 例えば戦闘では攻撃のことを考えながら次の手を考え、その内容を【並列思考】で複数処理し、【解析】で相手の動きに合わせて適切な行動を取ることが出来るようになるのだ。

 話は戻るが、誠がもつ【解析】は技能(スキル)である【鑑定】よりもさらに多くの情報を引き出す。

 その一つが素質というステータスでは見えない、才能の部分を見ることが出来るようになるというものだ。


「裏も一応見ておくか」


 心の中で【解析】と唱えると、さっきのステータスを写していたものと別のものが見えてくる。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 《素質》

【能力値補正】

 成長補正:3.8


【魔法適正】

 火属性:0 水属性:0 地属性:0 風属性:0 

 光属性:57 闇属性:32 無属性:41

 系統外魔法:0


 《契約》

『強欲』


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 どうやらこちらは変わっている部分があった。

 素質の部分では、これまでは0だった闇属性に数値が付いている。

 そして、その原因と思われるもの――『強欲』との契約。

 これは嬉しい誤算だった。

 闇属性の魔法は精神や五感に作用するものが多く、上手く扱えるならば戦闘の幅が大きく広がることになる。


「こっちも概ねそのまんま……というか微強化だな。それにしてもレベル1からこんな『勇者』がいて、俺が魔王なら即逃げ出すか今のうちに殺しておくだろうな」


 ちょっとばかり自分が『勇者』という考えをしたが、誠には今のところ魔王に対しての用事は無かった。

 後々用事が出来るかもしれないが、それはその時考えればいいだろう。


「これなら問題はレベルだけだ。それも本格的に動き出す時に解決出来るなら上出来だろう。それじゃあ、やるとしますか」


 誠はベッドから起き上がり、訓練場へ歩き出した。


 これから暫くの間、一度目の世界では戦闘訓練をしているだけだった。

 その流れを今回もなぞる。

 全ては復讐の為に。



 それから2週間ほど経った日だった。

 いつものように訓練をしていた誠だったが、今日は()()を手に出来る日だ。

 神剣『ディ・グラディウス』と国宝級の防具、そして異界倉庫という生物・無生物を問わずに収納出来る格納庫を使えるようにする指輪。

 これらは本当に優秀な装備で、一度目の時も長くお世話になってきたものだ。

 そしてそれらが誠に渡される理由は一つ。

 訓練の一環として王国付近に存在する迷宮へ行くことになっているからだ。


「アマノ君、いるか?」

「いるぞ、アレスさん」

「そうか、丁度良かった。以前から言っていた迷宮での訓練は明日から行くことになった。それに伴って王女殿下様からお話があるようだ」

「わかった、すぐ行く」


 誠が返事をするとアレスと呼ばれた騎士は立ち去っていった。

 彼は一応誠の訓練をしている王国の騎士なのだが、技能(スキル)を既に習得している誠にとっては本当に無駄な時間だった。

 ここでの訓練は主に誠の固有技能(ユニークスキル)に関わることが主だった。

 そしてその訓練で得られる全ての技能(スキル)を習得した。

 それからはこうして自主的に訓練をするのみになっていたのだ。

 その甲斐あって、王城の中での誠の評判はストイックな『勇者』様となっているらしくそれなりに人気があるらしい。


「あのクソ王女のとこに行くのは気が向かないが必要なことだ」


 誠はそう割り切って王女へ会いにいく。


 王女の部屋に着いた誠は、扉をコンコンと叩く。


「アマノです」

「どうぞ、お入りください」


 セラフィが扉を開けて誠を招き入れる。

 部屋の中は派手では無いものの品の良い装飾品で飾られていて、仄かに甘い香りが誠の鼻をくすぐる。

 そのまま王女が座っている椅子の対面に誠は腰をかける。


「アマノ様には明日から三日間の間、迷宮での訓練にて力をつけて頂きます。今回のお話はそれに伴っての装備品についてです」

「なるほどな。大体理解した」

「話が早くて助かります。アマノ様に預けられる装備品は大きくわけて三つになります」


 その三つはさっき言っていたもので、他には特にないようだった。

 それと、一度王都から出て別の迷宮が近い街で過ごす事になるのでと、5枚の金貨を貰った。

 一般的な家庭では、質素であれば金貨1枚〜2枚程で1年暮らすことが出来るほどの大金だが、勇者相手ともなれば当然ですと言っていた。

 勿論これには明日からの準備金という意味もあるが、それにしても多過ぎる。

 しかしその多過ぎる金額も今は嬉しい。


「それなら金貨2枚と指輪と神剣だけ貰っていいか?他は明日の朝にでも取りに来る」

「かしこまりました。それではお気を付けて」


 誠は望むものを手に取り席を立ち、セラフィの部屋を出る。

 その後ろで笑顔で手を振るセラフィがいる。

 それを見て誠は口が歪む。

 そうやって笑っていられるのも今のうちだけなのだ。

 しかしお前は最後にしてやろう。

 メインディッシュは美味しく調理するべきなのだ。

追記:誠の成長補正の値を修正しました。

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