ぬこさんのドーナツ
その穴は深淵に向かって、視ている者を引き摺り込もうとしている。
茶色の大地にうっすらと凍った様な白化粧が、更なる吸引力を発揮した。
横向きに現れたひび割れは、さながら狼の口の如く、より一層目を釘付けにして止まない。
何の事かと言えば、タイトル通りドーナツである。
練習がてら頑張って表現してみた訳だが、やはり「書く」というのは難しい。
欲望のままに、それに手を伸ばし口にする。
多分、そこまで続けたら、察しのいい人なら気付くかもぐらいにはなっている、といいなぁ。
先日、友人のぬこさんの置いて帰った車を取りに行く為に車を出した対価がドーナツだったので、思いついて試したのだ。
対価など無くても、時間があればいくらでも車くらい出すのだが、くれるのがぬこさんのお菓子なら願ってもない。
ぬこさんのロールケーキはお金が取れるレベルだと思っている。
1番好きなのはメレンゲの焼き菓子だが、卵白が余った時でなければ作らない貴重品だ。
そんなぬこさんのドーナツ。期待は膨らむ。
ドーナツといっても色々な種類があり、好みも人それぞれだと思うが、自分の思うドーナツは母親の作ったドーナツが始めに浮かぶ。
自分が子供の頃、ドーナツは買う物ではなく作る物だと思っていた。母親が色々と作る人だったというのも大きいだろう。
基本的なドーナツ。
フワフワな食感ではけしてなく、適度な甘さと食べ応え。
理想をいえばサーターアンダギーよりは軽い食感。
勿論、サーターアンダギーも好きだ。あればついつい食べてしまう。
好みがはっきりと決まっているため、買ってきた美味しいドーナツを食べても「これじゃない」感がどうしても残ってしまう。
最近ではドーナツ自体を買わなくなってきた。
さて、ぬこさんのドーナツはどうだろう。
グレーズドドーナツ。ぱっと見ると気付かないくらいうっすらとかかっている。
一口食べると懐かしい味がした。
正に理想のドーナツである。勝手に笑みが浮かぶ。
お茶を用意しておけば良かったと思うと同時に、お茶の用意の為にドーナツを置くのも嫌だと思う。
結局、そのまま食べきった。
もっと食べたいけど、食べたら無くなるのがもったいない。
その日の内にメールを送った。
「お金を払っても、食べたい」と。
だがその前に、ぷにぷにしたお腹を引き締めるのが先だろう。
某局の筋肉体操がスゴイらしいです。