小型触手のかき揚げ ~快楽調教触手服~
料理名
『超小型触手のかき揚げ』
食材名
『触手(通常種)』
生息地:とある裏組織の研究施設
ランク:E-
保有スキル:【生命力吸収】【粘液分泌】【体液分解】【魔力貯蔵】【■薬分泌】【高速振動】
0.5~0.1 cmほどの小さな触手。一定以上のサイズにならず、ひたすら魔力を吸収し続ける特殊な個体。裏社会で作られた「強制進化獣」の一種と思われる。
皮膚の神経を敏感にする成分や、肉体の奧が熱を帯びた感覚を覚える成分を分泌する。また、動きまわるタイミングに独特の周期があり、突如として激しく動くこともあれば、ゆっくりと嬲るように動くこともある。
違法薬物密売組織『呼吸する魚』で製造されていた特殊品種。
疎水性・伸縮性のある布を用意し、その上に培地を塗って触手を植え付ける。触手には餌として小型の生命体を与え、臭いや汚れが付かないように毎日洗浄する。枯れた個体や過剰成長した個体は間引き、隙間ができたら新たな株を植える。
増殖した触手が布一面にびっしりと成長したら、その布を触手ごと服に加工する。
そうしてできるのが、裏面に触手がびっしりと生えた特殊スーツ『触手服』である。
伸縮性を活かして肉体にぴったりとはりつき、全身から生命力を吸収する。汗や老廃物は分解し、そこから魔力を取り出して吸収する。相手を殺さない程度に吸収する生命力の量をとどめているため、
一定の刺激を与えるだけでは相手が慣れてしまう問題を、動きに周期を作ることで解決。定期的に全体の極小触手が高速で動き、全身を激しくくすぐる。また、触手の振動は「体液を吸収している個体」ほど激しくなる性質があり、場所によって振動数は大幅に変化する。
被害者
『潜入捜査官(23歳、女性)』
身体能力:A+
魔力量:B
属性:火・水・雷
国家で運営されている対裏社会専門の組織【|黄金の孔雀《ゴールデン・ピーコック】の潜入捜査官。
潜入捜査官、とは言っているが本人的には戦闘の方が得意らしく、今回の任務は上から言われて無理やり参加させられたらしい。一応、潜入に関しての一通りの訓練は積んでいたものの、実際に潜入したのは数えるほどしかなかったらしい。
潜入先の組織は、『呼吸する魚』
宗教組織を源流とする違法薬物売買組織。「人々を神の下に導く」という教義の下、各地に依存性のある薬物をバラまいていた。彼等の薬は飲んだ者に多大な快楽と神のような万能感を与えるが、効果が切れた瞬間に陸に上がった魚のような苦しさを与えたという。
彼等にとって、多大な快楽を得ることは「神の下に至るためのアプローチ」である。快楽を積極的に享受することが、理性を削り取ることに削る。その結果、自分から人間としての要素が排除され、純粋な神に近い精神性を得る……と、されていた。
また、彼らは「異教徒の改修」と称して、組織に逆らった人間に対し薬物と触手を組み合わせた儀式を与えるという噂があった。過度の快楽を与え続ける行為。脳が焼き切れんばかりの負荷を与えるのは、もはや拷問にも匹敵する。『呼吸する魚』には今まで捜査官が何人も送られていたが、その内正体がバレた者は全員色に狂った廃人になっていた。
歴史の長い組織だけあり、『呼吸する魚』は潜入捜査官の正体を即座に看破。
彼女は捉えられ、新開発の触手服による拷問を受けることとなった。
材料
極小触手:1 kg
小麦粉:100 g
片栗粉:30 g
水:1 L
断魔油:適量
解説
小型の触手を、小麦粉で1塊にまとめたレシピ。
魔力を吸収しない油「断魔油」を使い、シンプルに小麦粉で作成した1品。はっきり言って、料理本に載せるにはどうよというレベルのシンプル具合。
今回材料とした触手は【体液分解】という組織により、付着した体液を分解していた。そのためかなり清潔であり、加熱さえすればそのまま食べても問題がなかった。それに、この触手は1人の人間の魔力のみを吸収したものであるため、野生のものとは違い「呪詛を吸収した可能性」などを考慮する必要がなかった。
今回のように、ある程度触手の清潔性が証明されている場合は、そのまま食べても良い。
強制進化獣は、魔術的・科学的処理により強制的に肉体を改造された生物の総称である。単に肉体を大きくしたものから、身体性能を強化したもの、新たな部位やスキルを獲得したものと種類は様々。国や地域によっては、手術による肉体改造もこれに含まれる。
主に、研究材料や戦力にすることを目的に製造されており、この分野の研究が進んだことで生物を使役する魔物調教師の社会的地位は非常に高まった。ただ、研究によって特殊な生態を獲得した生物が野生に還ることを連合政府は問題視しており、国によって研究には厳しい基準がもうけられている。
その結果、自由な研究を求めたマッドサイエンティスト達が国の研究所から流出。裏社会の組織の庇護下に入り、後ろ盾と研究資金を提供してもらうことで、大幅に研究を進展させている。その結果、裏社会では現在、凶悪な能力を持つ魔物がメインの戦力となり、裏稼業同士で過激な研究競争が繰り広げられている。
合成獣や人工生物、生体人形などの、もはや既存の生物の枠組みを超えた怪物も作られているらしく、神聖教会勢力が【|魔神の使い魔《セト・ビースト】と称して根絶を訴えかけている。
今回、私が受け持ったのは裏社会『呼吸する魚』の本部へのガサ入れに同行した。理由は勿論決まっていた。触手型モンスターの確保である。
裏社会では、触手を好む好色家は非常に多い。
古来より邪淫の象徴とされた触手は、やはり求める人間が非常に多い。プレイの一環として使う者、嗜虐性癖を満たすために使う者、自分で体験する者とその楽しみ方は人によって様々だ。ニーズがあるということは、金になるということ。しかし、国の研究機関では、エッチな触手の開発なんて不可能。
その結果、裏社会では性的な行為に使える触手型モンスターが大量に開発された。
特殊な物質を分泌する個体から始まり、球体が連なった形状の触手、高速で振動する触手、ドリル触手、出たり入ったりする触手、侵入したら膨らむ触手などの、スケベな行為を目的とした触手が、次々と裏社会では開発された。
私の目的は、そうした裏社会の触手たちを食べることだった。裏社会の触手は、人間の都合で改良された悲しき生命体とはいえ、特殊な性質を獲得した個体も多い。また、彼等はその身体能力を人間を傷つけない程度に制限されているため、吸収した生命力を過剰に消費せずにためこみやすいのだ。
しかし、私のもくろみは外れた。触手工房に入った瞬間、私の目に入ったのは、低級のクローン・オークに絡みつく触手の姿だった。
裏組織『呼吸する魚』が触手の維持に使っていたのは、人間ではなく、質の悪い人造生命体の生命力だったのだのだ。
後から考えてみれば、それは当然である。
いくら裏社会とはいえ、触手を維持するために魔物や人間を確保し続けるのは面倒だ。クローンは専用の設備が必要とはいえ、培養装置と液体栄養があれば作れる。人造生命体を大量生産できるだけの設備があるなら、そっちを使った方が断然効率が良いだろう。
だが、裏社会の新種触手を食えることで頭がいっぱいだった俺は、そんな当たり前の現実にすら気づかなかった。
強力な魔物や人間の魔力を吸収し、内部に蓄積した触手。私が美味と感じるのはそういった触手である。私は触手の触感ではなく、触手にためこまれた旨みが好きなのだ。
クローンの触手は生命力の質が異常に悪く、食べた瞬間強烈な吐き気に襲われた。
そうして悲嘆に暮れていた私が見つけたのが、触手服をまとった潜入捜査官の姿だった。
潜入捜査官の良質な魔力を吸収した触手。改造により成長が制限されていたそれは、1 cmにも満たない小さな体に膨大な旨みを秘めていた。試しに1つ口の中で潰した瞬間に、口の中で芳醇な魔力が広がるほどだった。
私が、この触手を調理する上で選んだ方法は、かき揚げであった。
1つ1つが膨大な魔力を秘めたそれを小麦でまとめあげることで、口の中で膨大な量の魔力がはじけるようにしたのである。食べた瞬間の衝撃たるや、まさに旨みの拷問だった。食べた瞬間、極楽に至ったかのような快楽に襲われるほどだ。
裏組織への潜入任務。最初は理想と現実のギャップに襲われたが、思わぬ収穫もあり結果的には大成功だった。
その後の調べで判明したのだが、今回のガサ入れの直前、研究のリーダー格の人間が逃亡していた。頼りにしていた組織がつぶれた瞬間に立ち去るなんて、薄情者にもほどがある存在である。
また、その研究者はどうやら逃げる時に触手服のデータも持ち去ったらしい。今回、トップクラスの戦闘力を持つ人間に触手服が通用したことで、その凄さを理解したのだろう。ひょっとすると今後、触手服による被害者と遭遇する機会もあるかもしれない。その時が非常に楽しみである。
救出した潜入捜査官の彼女には転職を勧めておいた。
そもそも、今回彼女がこの任務に参加することになったのは、暗殺や護衛などの任務で成功続きだった彼女を陥れるための上層部の罠だったらしい。迷宮探索者になった彼女は、今は様々な迷宮にもぐり、様々なモンスターを打ち取っているときいた。