突然の
長野さんが自殺した。
それが分かったのは誕生日から2日後、調べによると誕生日の夜に自殺したと分かった。
誰もが信じられなかった。誕生日パーティーで長野さんはニコニコしていたし、仕事中にもそんな雰囲気は微塵も見せてなかった。
葬儀には由美も呼んで貰ったので行くことにした。
「長野さん…なんで…」
由美は始終呆けていてそればかり口にしていた。
「よう、大丈夫か。」
平井が声をかけてきた。
「平井くん…」
やっと周りを見渡す余裕が出てきた。
瞳はずっと泣いているし、おじ様は一言も話さず下を向いている。
ロックをする男の子達も、喪服を着ていて今まで見た事もない顔で俯いていた。
「長野さん、なんで死んじゃったのかな…私達が悪い事したのかな…」
「お前考え過ぎ、俺も最後まで居たから責任感じてるけど、俺達のせいとかじゃないよ、店長何かを押し付ける人じゃなかった、当てつけとか絶対ないよ。」
「そっか…私今何も考えられないや…」
「だろうな、なんか、俺も悪かったよ。」
やっと恋を自覚したばかりだった。それを後押ししたのが平井の言葉だっただけに、責任を感じてるのだろう。
「平井くんのせいじゃないよ、私が鈍かっただけ。」
「由美さん?」
ぼんやりしてると初老の女性が声をかけてきた。
「はい」
生返事をすると女性はそっと由美の側に座った。
「長野の姉の辰子です、和也がお世話になったようで。」
「お世話になっただなんて、私の方がお世話になってます。」
つい現在進行形で言ってしまった。
まだ長野が死んだ事に実感が無いのだろう。
「和也はあなたの事をずっと気にかけてね。自分を見てるみたいだってよく漏らしてたわ。」
「自分を?長野さんも悪かったんですか?」
「ええ、お店の人達には絶対見せなかったみたいだけど、酷いうつだったのよ。家に帰ると薬をたくさん飲んでお酒で流し込む事も当たり前にしてたわ。「俺がしっかりしてないとみんなに悪い」が口癖だった。私は早く休むように言ってたんだけどね、体を壊したら逆効果だって言って。離婚したのも全部自分のせいだって嘆く事も多くてね。」
由美は衝撃だった。何でも話してきたつもりだったのに、何も、それどころか何ひとつ知らなかっただなんて。
「ごめんなさいね、こんな話をしてしまって、和也はもし自分になにかあった時に、あなたが自分を責めてしまわないかを一番に心配してたのよ、だから話してた方がいいと思って…」
辰子さんは少し申し訳なさそうに言った。由美は涙も流さずショックを隠せない顔をしてたからだろう。
「無理すんな」
平井が肩に手をかけた。
「すみません、こいつ結構こういうの弱いから、続きは俺が聞いときます。」
「そうね、由美ちゃん、ごめんなさいね。少しゆっくりして行って。」
由美は頷く事もできなかった。
「由美ちゃん、大丈夫?」
瞳が声をかけてきた。目は完全に腫れていて、やっと泣き止んだという感じだ。
「やだなぁ、みんな私に大丈夫って聞くんだもん。大丈夫だよ私。」
由美は強がって見せたが、顔が引きつっているのが自分でも分かった。
「由美ちゃん…私、私…」
瞳はそれ以上話せず、由美に抱きついて泣いた。瞳も由美と同じ気持ちなのだろう。
ここに居る人達は、みんな長野さんが大好きだったのに、誰一人長野さんの苦しみを知らなかった。その強烈な痛みが空気を通して伝わって来るようだった。