居場所
雨ばかりが続く季節が来た、こうなると由美は夜の楽器屋も休みがちになる。
頭痛も酷いし吐き気も酷い、挙句マイナス思考が巡って来て両親と会話すらできなくなってしまっている。
自分なんかがレジ受付なんて遊び事でしてはいけないとか、やはり皆同情で話しかけて来るんだとか、あの時あんな事を言わなければ良かった、など由美の頭の中は凄く忙しかった。
「しんどいー。もう嫌だ。」
体を何とか起こすと自律神経にいいという漢方薬を飲んだ。
が、横になると同じような考えが巡ってくる。
この時ばかりは誰にも助けを求められなかった。
寝込む日が3日続いただろう時に母から声をかけられた。
「由美、玄関に綺麗な花の鉢植えが置いてあるんだけど、これあなたにじゃない?」
「鉢植え…?なんで私だと思うの?」
「ここにカードが入っててね、楽器屋さんすぐそこだし、由美にじゃないかと思って。」
「見せて」
由美は母が持っているカードを手に取って見た。
[雨の季節ってしんどいよな、俺の所の母親も悪いから何となく分かる。お見舞いじゃないけどこれ育ててたら少しは紛れそうだから送る]
カードにはそう書いてるだけで名前は書いてなかった
でも由美の悪さを分かっているような文章だ。
「多分長野さんだよ。ありがとう、鉢植えは部屋に置くから。」
花はなんという名前か分からなかったが白い花が素朴で綺麗な鉢植えだった。
「でもお見舞いに鉢植えなんてねぇ、根付くっていってあまりいい意味じゃないのよ?」
「まぁいいじゃない。気持ち受け取っておけば。長野さんらしいミスだし。」
由美は少し気持ちが楽になるのを感じた。
自分が行けなくても誰かが自分を気にかけてくれる。それだけで心が暖かくなった。