初めてのバイト
両親からの勧めもあり、由美は次の夜から楽器屋にお邪魔する事になった。
バイトで入るかという提案もあったが、体調との兼ね合いもあり遊びに行く事になった。
長野さんが留守をする時はレジを手伝う形になり、由美は緊張しながらレジの椅子に座っていると、見た事のあるお客さんが
「あら、やっと降りてきてくれたんだぁ。今からスタジオ借ります。」
由美が一番大好きな音を出す女の子達がこぞって声をかけてくれた。
「あ、はじめまして、なのかな?よろしくお願いします。」
由美はだいぶ人と話してないのでハニカミながら小声でそう言った。
「よろしくねー」
今時のファッションで身を包んだ女の子達はニコニコしていて由美のコンプレックスを少しざわつかせた。
次に入ってきたのは由美の苦手なパンク・ロックをする由美より若い人達だった。
「あれ?知らない姉ちゃんがレジに居る、すみません、今日長野さん休みですか?」
彼らは由美の事を知らなかったらしい、見た目とは違う丁寧な言葉で由美に話しかけて来た。
「長野さんは少し買い物があるらしくて、少しの間私がレジをしてるんですけど、すぐ帰って来ると思います。」
「あ、そうなんだ。スタジオのスケジュールの話し合いだけだから、ちょっと待たせてもらいます。」
そういうと奥の机の方へ入って行った。
「由美ちゃんただいま、ありがとうねレジ受付してくれるだけで凄く助かるよ。」
狭いレジの中、由美の背中に触れそうになりながら買ったものを棚に置いた。
由美は何故だかドキドキしたが、かなりの間人と接してないからだろうと心を落ち着かせた。
一人きりで部屋にいる時は人という感覚が遠のいくので、話したり接するだけで由美の心臓は早まった。
その日のレジ受付が終わるとぐったりとベットで寝転ぶ事が多かったが今まで感じた事がない心地よい疲れだった。