4・悲鳴
「以上、ヴォルケーノ氏へのインタビューでした。最近は環境管理局の強硬姿勢が目立ち、反発も大きくなっています。依然、テロにご注意下さい。では次のニュース……」
てれびじおんを消し、通学の支度。
学校へ行くにはかなり早いが、座り通しでは体が鈍ってかなわんからな。
運動がてら、歩き回ってから向かうようにしている。
他の生徒たちは徒歩など信じられぬと言う。二輪に持ち手がついただけの珍妙な乗り物で登校していくのが「普通」なのである。
これまで15年も暮らした世界と言えど、記憶が戻ってからはどうにも馴染めぬ。
土ではなく「あすふあると」や「こんくりいと」が敷かれた地面は、手製のわらじではどうにも足裏が痛むので不本意ながら靴を履かねばならん。それから「かあぼん」や「せらみつく」なる素材の馬が引かぬ鉄の……否、鉄ではないのだが、鉄にしか見えぬ車も、好きにはなれぬ。
しかも、車は実は少し浮いており、空を飛ぶ「えあかー」なのだという。
地に足を着けぬ乗り物とは空恐ろしいが、そもそも飛行機が当たり前に飛んでいる世界で、驚くほどの事ではないのかもしれぬ。
拙者は武者であるからして、やはり馬に乗りたいものだ。
自動販売機なる無人の商店が立ち並ぶ、不気味な街並み。
何より、携帯電話なる会話が出来る板が特に気味が悪い。いなばの頃は何とも思わなかったが、持ち歩く気にはなれず、家に置いている。
拙者の知る世界と変わらぬものと言えば、太陽と月、そして空くらいのもの。
川の水も飲めぬ異常な世界の河川敷であるが、それでも街中よりは落ち着く。
ここか公園に行かねば土も緑も無い。
世界に対する居心地の悪さがぬぐえぬ。
最近は、どうにも妙な視線を感じる。家に居る時でも無ければ、ほとんど常にと言ってもいい。
何者かは知らぬが……忍の類でも無ければ姿を見せずに監視など出来まい。或いは拙者の気のせいやも知れぬが、気持ちの良い事では無い。
住めば都というが、いつ馴染むやら。
拙者がこの世界で果たすべき事とは何なのであろう。
それを見つけるべく、ここでの思索する習慣がついたが、そも、拙者は頭が良いほうではござらぬ。
結局、今日も何も思い浮かばず、河川敷を後にした。
時刻を見るにまだまだ早朝だが、学校で時間を潰せばよかろう。
朝だというのにニワトリの鳴き声も聞こえぬ街を歩く。すると、学校のすぐ近く、商店街の前に差し掛かった時、ニワトリの声の代わりに、悲鳴が響いてきた。
「ひったくりよぉっ!!」