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19・あはれ

「ふ、ふざけるな! 何だ貴様らは!?」

 ぼるけいのが炎を全身に纏わせ叫ぶ。先程までの余裕顔はどこにも無い。

「武士だ」

「その刀よ」

「はぁ!? 言っている意味がわからん! 貴様らの目的は何だ!?」

「貴様を斬り捨てる」

「俺を斬り捨ててどうなる!? 所詮は俺は役人だ。俺を殺したところで何も変わらんぞ!」

「貴様は大きな勘違いをしている」

 武士は忠を尽くすもの。

 この世界、忠を尽くす殿も帝もおらぬ。

 即ち――

「ここは国民主権の世界。ならば貴様が忠を尽くすべきは役所ではなく国民! それを弑逆すなど言語道断! 故に拙者は貴様を斬る!!」

 蝶々開と歩を合わせ、一気に突っ込む。

「バカどもが! 別にやり合っても俺は負けやしねえんだよ!!」

 ぼるけいのの全身の炎が更に猛る。

 不動明王が如き風体なれど、その心邪悪にして矮小。

 ならば恐れる事は有らじ。

「フレイムスターターセル・フルドライブ!!」

 交差するように重ねた掌から、猛烈な炎が放出された。

 さながら龍が如く、うねる炎が迫る。床が瞬時に木炭と化す熱量。

「行けるな」

「刀が鉄火場を恐れると思う?」

「よき答えだ。ならばいざ行かん!!」

 蝶々開を腰だめに構え、炎の龍へ走る。

 衝突の刹那、熱風を頬に受け、刀を一閃。

 大気を鞘走らせながら、抜き打つ!

 瞬間、龍が裂けた。

 風が吹き、体育館の壁が逆袈裟に両断される。

 豆腐が如く下に滑り落ちて空が現れた。さんだあすとおむがおらぬ以上、それが雲一つ無い青空なのは自然であった。

 同時に、ぼるけいのの右の腰から左肩が、激しく血を噴き出す。

 その血が炎に触れ、真っ赤な蒸気として桜が如き有様となる。

「が、ぐあ……」

 燃え上がる体がその炎によってかろうじて繋がっているぼるけいの。

 その命は、さながら風前の蝋燭。

「武士の情けだ。辞世の句を読むなら聞いてやろう」

「ふ、ふざけんな……し、死にたくねえ……」

 そこまで言って、口から大量の血を吹き出して事切れた。

「外道の死に様など斯様なものか……」

 己が人生を振り返り、辞世の句をしたためる事すら出来ぬとは、如何に傍若無人に生きておったか。

 まっこと哀れなるかな。

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