17・蝶
声が主は、ふあらであった。
体育館の壁が裂け、そこから入って来たのだ。
「……何だお前は。どうやって入った」
ぼるけいのが怪訝な顔をしてふあらを睨む。
「どうでもいいでしょう。面倒だからこっちの言い分だけ言うわ。サンダーストームは始末した。電波も通じる。あなたたちは終わり。OK?」
淡々とふあらは言った。
「は? サンダーストームを始末した? あなたみたいなガキがそんな事できるわけ……」
ふらつどの質問を無視し、ふあらがこちらへ歩いてくる。
「何をやっているの? 胴狸三十郎ともあろう者が情けない」
言われようだが、事実だ。……む?
「お嬢ちゃん、いい度胸してるなァ。ぐちゃぐちゃに潰されて死にたいのか?」
「寄るな。汚らわしい。私に触れていいのは三十郎だけよ」
「はぁ?」
まただ。また言った。
「何ゆえその名を知っている」
「なぜまだわからないの? 私の事が。誰よりも長く寄り添い、誰より長く愛を受けた私がわからないってどういうつもりなの?」
「知らぬ。何を言っているのだ?」
いなばであった頃にも、そのような記憶は無い。
すとおかあとか言う奴かもしれぬ。
「ハハハ。この状況で乳繰り合うとは、気でも触れたのかい?」
「思い出して! 名器と私、どちらを選ぶか問われて、即座に私を選んだあの日の出会いを!!」
「アハハハハ!! 何よこれ! なんて下世話なのかしら!!」
狂ったようにふらつどが嗤う。だが、斯様な事はどうでも良い。
名器とは、茶の湯の名物。
戦ばたらきの褒美として、殿より名物と秤にかけられしは一つ。
「そ、そなたはまさか……!!」
ふあらが喜色満面に笑みを浮かべる。
「そう! 刃文に小湾れに小互の目まじり」
「それに金筋、砂流が入る!」
即ち――
「蝶々開!!」




