14・現
黒装束の死体をあさると、短刀を見つけた。
ましんがんは使い方がわからぬし興味も無い。
包丁より小さいが切れ味は悪くなさそうだ。
箒の先に括りつけ、即席の槍とする。拙者は武者ゆえ、槍か刀が一番馴染む。
これで馬が居れば最高ではあるが、動物園なる施設にしかもう馬はおらぬという。
「さて……これよりどうすべきか」
ふあらは残れと言っておったが、事ここに至りてそうも行くまい。
きゃつらが教室に人を押し込めたのも、まとめて始末するためであろう。
うむ。そうだ。
一旦、ふあらを探して合流するがよかろう。
新たに情報を得ているやも知れぬ。そう思い、一歩踏み出した瞬間、ごう、と音がして、廊下の奥から炎が噴き出した。
さながら零れた油が如く、一気に炎が広がる。
「おのおの方! 火事にござる!」
拙者は声の限り叫び、この階の教室に触れ回る。
驚き飛び出してくる生徒を、廊下の逆側へ誘導する。
一方が炎上している以上、もう片方にしか逃げ道は無い。
上の階からも生徒が駆け降りて来ていた。
それは上にも火が回っている事を示している。
逃げる一団と混ざるようにして一階を駆けていく。背後からの炎に追い立てられ、塞がれた窓や出口を避けながら唯一開いている体育館への経路を走る。
そこで違和感を覚えた。
「唯一……開いている?」
背筋に冷たきものが走る。
これでは誘導されているようなものではないか。兵法には明るくないがこうも露骨では疑わざるを得ん。
しかし、火の勢いを見るに戻るも叶わぬ。
虎穴に入りて虎児を得る他無し。腹を括り、渡り廊下を経て体育館に駆け込む。
意外にも薄暗い他は、おかしな点は見当たらぬ。
無論、窓は「こんくりいと」で塞がれてはいるが。
やがて、おそらく全ての生徒が中に入ったのであろう、奥から駆けてくる者も居なくなった。
しかしその中にふあらの姿は無い。生徒たちは口々に不安を述べるばかり。
「な、何なんだよ一体……それに、お前その武器は……?」
普段、おちゃらけているぐしおんも、不安そうに言う。
「かかる状況はワナにしか思えぬ。先程の黒装束も殺しを生業とする者であった。油断は出来ぬ」
手製の槍を構え、いざという事態に備える。
「な、何言ってんだよお前……」
いくら否定しようが状況は変わらぬ。そして、拙者の予想は残念ながら杞憂ではなかった。
入り口奥まで迫っていた炎より、男がゆるりと歩んできた。全身が燃え上がっているのに、何の痛痒も無きが如し。
それはそうであろう。何故ならばその男こそ――




