11・起こり
翌日。
天曇り、いつ雨が降りだしても不思議では無き不快なる湿度。
それに不吉の気配を孕ませ、風が吹く。
さだめしそれは予兆であった。
今さら悔やんだところで時は戻りはせぬが、打てる手はあったのではないかと思う。
拙者が治部少輔が如く聡明さを持ち合わせておらぬのが悔やまれる。
学校が始まると同時に、激しい雨が降り出した。
雷が鳴り、滝のような豪雨は、まるで中の者どもを閉じ込めているかのようであった。
否。それははっきりと閉じ込める意図を持っていた。
最初に異変が発覚せしは、一限目開けの級友の女子が一言であった。
「ケータイ入らなくない?」
その言葉に、我も我もと声が上がる。
そこで、ふあらが拙者の袖を引いた。
「……考えが甘かったかも」
「何がだ?」
「電波妨害がされてる。相手がどっちなのかはわからないけど、完全に後手に回ったわ」
どっちとは、てろりすとかえれめんとふおうの事であろう。
しかし……。
「待て。そうだとして、それではこの学校が目的のようではないか」
「そうね。そうとしか考えられない。でも理由が全くわからないわ。……仕方ないわね。私は少し校内を調べて来る」
「女人に行かせるわけにはいかぬ。ここは拙者が……」
「貴方に妨害電波の出所やその方法が見当がつくのかしら?」
「つかぬ」
「ならここに居なさい。あなた隠密に向いていないでしょう? 私一人の方が動きやすいわ」
「承知した」
あまりに的確ゆえ、癪に思う気も起こらぬ。
拙者は、人の上に立つ器にあらじ。戦ばたらきが拙者の本質。
ふあらがそこまで読んでいるならば、残っていた方が良いであろう。
あの隙の無い身のこなし、ただものでは有り得ぬ。
されど、敵にも思えぬし、彼女が拙者らを嵌める動機にも思い至らぬ。
信用して問題無かろう。
教室に残りて、暫し様子見。休憩時間が終わり、授業が再開さる。
すると、窓際の席のぐしおんが叫んだ。
「ああっ! 危なくねえかあれ!」
皆が、窓に向かう。
すると、商店街の「ああけえど」から、真っ黒な「とらつく」が飛び出して来ている所であった。
ぐしおんが危ないと声が上げたのも無理は無い。
それはこの雨の中、猛スピードで学校に向かって来るからだ。とても止まるとも思えぬ。
そのままとらつくは正門を超え、学校の玄関に突っ込んだ。
振動が、二階であるここまで響いてくる衝撃。学級も、近隣の学級も大騒ぎしている声が響き渡る。
「き、君たちはここで待っているように。先生が調べてきます」
そう言って教師殿は部屋を出て行った。
「す、すげえな。事故かな?」
ぐしおんが言うが、拙者には事故に思えなかった。
本来なら車止めで入れなかった筈の車だ。
さあらば、ここに突っ込む為にどかしたとしか思えぬ。
即ち、あの車の目的はこの学校そのものであろう。
「……」
拙者は掃除用具入れから、箒を取りだした。
武器としては心もとないが、杖の代わり程度にはなるであろう。




