第55話 終騎士の務め
ミズキ死亡。ヘイト・スプリガンのキャラが強烈過ぎてインパクトが薄いなぁ……。
冥王城最上階・儀式の間――。
ロシーボはついにここに乗り込んだ――。
「うぬぬぬぬ! 来たな、女神ウィーナの刺客め! 者共、こ奴を倒せえええっ!」
キヌーゴの号令により、儀式の間にいる大量の兵士と神官達が大挙してロシーボに襲い掛かってくる。
「このおおおおっ!」
ロシーボは腕部・胸部・脚部のレーザー砲を乱射した。
儀式の間に激しい轟音と閃光がとどろき、爆発と共に兵士や神官がゴミのように吹き飛ぶ。
一瞬にして雑魚敵はその数を半数に減らした。床には倒れた兵士達が大量に散乱する。
「何してるのよ、あんた達! さっさとあいつを殺してよ!」
負傷しているミズキが慌てて生き残った兵士達を煽った。
「待てミズキ! この者達では無駄死にさせるだけじゃ! ワシが自ら戦う! 者共、巻き添えを食わんように下がっておれ!」
キヌーゴはそのドラゴンの顔を威圧的に強張らせ、兵士達を退かせた。そして、自ら前へ出ようとミズキの前を通り過ぎる。
「待ってよ!」
ミズキは慌ててキヌーゴが身にまとう豪奢な法衣の裾をつかんだ。
「なんじゃ?」
「あなたが行っちゃったら誰が儀式するのよ?」
「今そんな事を言っている場合ではなかろう! 中止じゃ中止!」
「嫌よ! 私が女王になればこんな奴なんか一瞬で……」
「ワシ一人で十分じゃ! それにそこのデカイのにも戦わせればよかろう!」
キヌーゴがヘイト・スプリガンを見上げた。
「そんな暇ないわ! 今儀式をしないと続々と正規軍の連中がここになだれ込んでくるわ。そうなると本当に間に合わないんだから!」
「状況を考えんか! 今、目の前の障害を何とかしないとどうしようもなかろう」
「嫌嫌嫌あああっ! そんなの嫌ああああっ! あの兵士達を壁にして儀式やるのよ!」
「ふざけるな! お主一人の為に我々の反乱に身を託した同志達を捨て駒にはできぬ! あんな奴ワシが一発で掃除してやるからちょっと待っておれ!」
「嫌あああああっ!」
ミズキが癇癪を起してキヌーゴに尻尾を振りかざした。キヌーゴは「ぐわっ!」っと悲鳴を上げ床に倒れ込む。
「食らえええええっ!」
ロシーボは敵が会話している間に、肩部のレーザーキャノンのチャージを行っていた。ミズキがキヌーゴを攻撃した隙を突き、出力20%まで溜まったレーザーキャノンを発射した。
「キャアアアッ!」
レーザーはミズキに直撃した。激しい閃光と爆発が再び巻き起こってミズキは儀式の間の奥へ吹き飛ばされた。
「くそおおおおっ! こうなったら……。ヘイト・スプリガン、あいつをさっさとやっちゃいなさい!」
ミズキはすぐに上体を置き上がらせる。体から煙が上がったままだが、ロシーボを指差してヘイト・スプリガンに指図した。
「俺に指図するなボケが! お前をぶっ殺すぞ!」
ヘイト・スプリガンがピンク色の目でミズキを睨んだ。
「何言ってんのよ! アイツを倒して儀式を行わないと、いつまでもあなたは冥王を辞めることができないわよ! せっかく生き返って、体も手に入ったのに。イケメンコに復讐したくないの?」
ミズキが必死な様子でヘイト・スプリガンをそそのかす。
「ミズキの言う通りじゃ。ヘイト・スプリガン。お前があいつを倒してくれい!」
キヌーゴもミズキに追従した。ヘイト・スプリガンがその気になれば自分が戦わなくてもいいと判断したのだろう。
「待って下さい、ヘイト・スプリガンさん! その人達あなたを騙してますよ?」
ロシーボが咄嗟に大声を上げ、ヘイト・スプリガンに語りかけた。
「な、何だとおおおっ!?」
ヘイト・スプリガンが驚きと怒りに溢れた声を上げた。
「何言ってるの? 騙しているわけないじゃないの!」
ミズキが慌てて取り繕う。
「そのまま儀式やったら、冥王の座だけでなく、ヘイト・スプリガンさんの力までミズキに吸い取られますよ! そしたらあなた凄く弱くなって、もう用済みとして消されるんじゃないですか? 俺どうなっても知りませんよ?」
事実を暴露する。嘘ではなく本当のことである。
「貴様ら、この俺を騙しやがったなあああっ!」
ヘイト・スプリガンの全身が緑色のオーラに覆われ、恐ろしい威圧感を出し始めた。ミズキの顔が恐怖一色に染まった。
「そんなことないわ! 嘘ついているのはあいつの方よ! あいつこそがあなたをいいように利用しようとしているの!」
ミズキは負けじと反論した。
「俺はヘイト・スプリガンさんをイケメンコに会わせてあげようとここまで来たんです。俺はあなたの味方ですよ」
ロシーボは腰を低くし、優しげな声で言った。ここでヘイト・スプリガンをこちら側に引き込まないと、ロシーボに活路は見えない。なにせ、敵には冥王四天王のミズキとキヌーゴの両名がいるのだ。ミズキがダメージを負っているとはいえ、まともに戦えばロシーボに勝ち目は到底ない。
「貴様、こいつが俺をいいように利用しているって言ったな、どう俺を利用しようとしているっていうんだ?」
ヘイト・スプリガンがミズキに問いかける。
「うっ……。そ、それは……」
ミズキは言葉に詰まった。
「我々がもうすぐここにイケメンコを連れてきます。それでヘイト・スプリガンさんは存分に恨みを晴らせばいいのです」
ロシーボが更に言葉の攻勢を仕掛けた。
そのとき、部屋そのものを揺るがすような強大な魔力をロシーボのヘルメットが感知した。ミズキにも勝るとも劣らないほどの強い魔力値を計測。コンピュータの警告音が鳴り響く。反応のある方向に視線を移して、目に広がった光景。それは、キヌーゴがまさに杖の先端から、巨大な漆黒の波動を放射した瞬間であった。
ロシーボの意志に関係なく、アーマーが危険を察知して、緊急的にバリアフィールドを最大出力で展開した。
一瞬でロシーボの視界が闇に染まり上がる。漆黒の闇の波動はロシーボを飲み込まんとバリアを打ちのめし続ける。
「うわああっ!」
闇はついにバリアを飲み込み、ロシーボに襲い掛かった。腕を交差し身を守る。爆発。闇一色の視界に急に刺すまばゆい光。身体が浮遊し、強い衝撃と共に地面に叩きつけられた。
視界が開け、儀式の間の光景が蘇る。生きている。しかし、今の攻撃でヘビーアーマーに、光を帯びた亀裂がところどころに入り、粉々に砕け散った。
ロシーボのマルチプルスーツのバトルモードが解除され、非戦闘時形態である工兵服に戻っていた。ヘビースーツが攻撃に耐えきれずエネルギーが尽きてしまい、変身前の姿に戻ってしまったのである。
儀式の間はロシーボが立つ入口側が半壊しており、周囲の壁は破壊され、外の景色が丸見えになっている有様だった。周囲では兵士や神官が必死に衝撃の余波を防御して身震いしている様子であった。
「耐えるとは。意外だな……」
杖を構えたままの姿勢で、キヌーゴが感心したように言った。
「ちょっとキヌーゴ、私まで巻き添えにする気? 次期女王の大事な体なんだから」
ミズキがキヌーゴに抗議する。
「その位で死ぬようなタマじゃあるまい……」
キヌーゴがしかめっ面で長い口髭を撫でた。
「ふざけるなああこのクソ人魚、俺を騙しやがったなああっ!」
「ちょっと待っ……!」
突如としてヘイト・スプリガンが巨大な足を上げて、ミズキを踏み潰した。床がまるで地震が起きたかのように揺るぐ。
ヘイト・スプリガンの足が上がると、息も絶え絶えになったミズキが姿を現した。口から激しく血を吐き、下半身の尻尾をバタバタと振るっている。
「そんな馬鹿な……。この私が、この私がこんなところで……」
ミズキは傷だらけの体を震わせ、夜叉のような表情で悔しがった。
「いいぞ、ヘイト・スプリガンさん! そのままやっちゃって下さい!」
ロシーボが勢いづいてヘイト・スプリガンを応援する。形勢逆転。もうこっちのものだ。
「うう……。キヌーゴ、助けて……。私に回復魔法を」
ミズキが息も絶え絶えに、キヌーゴに助けを求める。
「何だジジイ、文句あっか? ええ? この女回復するならテメーも敵だよ~ん? んん~?」
ヘイト・スプリガンがボキボキ巨大な拳を鳴らしながらキヌーゴを見下ろす。
「い、いや、ワシはお前を邪魔したりしない……」
びびって後ずさりするキヌーゴ。
「そんな! キヌーゴ……。う、裏切り者……」
ミズキは恨みがましい視線を老人に向けた。
そのとき、儀式の間に一人の人物が姿を現した。忘れもしない、深紅の鎧に身を包んだ最強の騎士、冥王四天王の一人、アツアーである。その手には輝かしく光を放つミラージュソードが握られている。
「ロシーボ平気か! 手を貸すぜ!」
「アツアーさん! 大丈夫なの?」
ロシーボは元気なアツアーの姿を認め、喜びのあまり笑顔した。
「ああ! ヒーローは遅れて現れる! あれからなんとか後続の部隊が到着して、回復魔法をかけてもらった。アメリカーン様も無事だ!」
「良かった、良かった! ハハハハハ!」
ロシーボが笑う。心が晴れ晴れした。
「そんな馬鹿なっ……! そんな馬鹿なっ……! 認めない! こんなの絶対に認めない! 認めないぃぃぃ!」
ミズキが美しい顔を醜く歪めて悔しがる。
「おおおおっ! アツアー、無事じゃったかあああっ! ワシャ心配したぞおおっ!」
突如、キヌーゴがうれし泣きしながらアツアーの前に躍り出てきて、力強く手を握った。
「え?」
アツアーが狐につままれた表情でキヌーゴを見る。
「お前敵じゃなないか」
ロシーボが言う。するとキヌーゴは鋭い目でロシーボを睨みつけ「シャラーップ!」と叫んだ。
「アツアー、聞いてくれ。ワシはミズキに未来を滅茶苦茶に操作してやるって脅されて、仕方なく反乱に手を貸したのじゃあ! お前や冥王様に刃を向けたのは、決して本意ではなかったのじゃあ!」
キヌーゴが必死そのものの表情で訴えた。
「え、ええええええっ!?」
周囲の兵士や神官が、目を丸くして驚きの声を上げた。
「あ、あなた、何を言ってるの……?」
ミズキも呆気に取られた表情でキヌーゴを見る。
「しっかーし! 真実を移すミラージュソードの側にいれば未来を読まれることもない! だからアツアー、ワシはお主が来るまで離反する機をうかがっていたんじゃ。その証拠にホレ見ろ。継承の儀式はまだ終わっていない。ワシがTAKE23まで進行を延ばすに延ばし、時間稼ぎをしてやってたんじゃ!」
「ち、違うわ! それはヘイト・スプリガンがちゃんとやらなかったからそうなったのよ。決してキヌーゴの意図的なものじゃ……」
「シャラーップ!」
キヌーゴはミズキに向かって雷撃の魔法を放った。
「イヤアアアアッ!」
ミズキの体が激しい電撃に包まれ、彼女は床に崩れ落ちる。
「嘘だーっ! アツアーさん、こいつは今さっき俺に攻撃してきたんですよ! 見て下さいこれ! 部屋そのものを吹き飛ばすくらいの恐ろしい威力の魔法で本気に殺しにかかってきたんですってば! このキヌーゴって奴は命惜しさに寝返ろうとしてるだけだ!」
ロシーボも必死に訴えた。今まさに死にかけたというのに、冗談ではない。
「あれは誤解じゃ。さっきの魔法は本当はミズキに向かって撃ったんじゃ。狙いが外れてお主の方に行ってしまったのじゃ」
キヌーゴが余りにも苦しすぎる言い訳をいけしゃあしゃあと漏らした。
「いやいやいや! さっき明らかに俺に向かって『耐えるとは意外だな』って言ってたじゃねーかテメークソジジイ!」
ロシーボが怒りの声を上げる。
「はて? そんなこと言ったかのう。ワシも最近歳でのう。言ったことをよく覚えてないんじゃ」
なおもすっとぼけるキヌーゴに対し、ロシーボは空いた口が塞がらなかった。
「この通りじゃアツアー! 信じてくれええっ! 土下座でも何でもします。何卒今言った致し方なき事情、汲んで下されえええっ!」
キヌーゴが涙ながらに土下座し、額を床に何度もこすりつけた。
「爺さん……。言ってることは全く心に響かないけど、いいよ別に。なんか笑えるから、こっちに寝返りなよ」
アツアーは楽しそうに言った。
「ありがとうございます!」
キヌーゴがアツアーの手をがっしりと握り締め、上下に揺すった。
それを見た周囲の兵士達も、持っている剣やら槍やらを投げ捨て、投降し始めた。
「おのれ! キヌーゴオオオオオッ!」
ミズキが怒りの形相で叫ぶ。そして、アツアーに息絶え絶えに這い進んでくる。
「アツアー。私もこのヘイト・スプリガンに脅されていただけなの……。お願い。助けてえ……」
「アツアー! 騙されてはならぬぞ。この女は大嘘つきじゃ!」
キヌーゴが言う。お前が言うなとロシーボは思った。
「おーい、ヘイト・スプリガン。あんた止め刺したい?」
アツアーが声を張ってヘイト・スプリガンに話しかける。
「待って、あなた、何を……?」
ミズキが泣きそうな顔をした。
「別に、こんな奴もうどうでもいいわい!」
ヘイト・スプリガンは既に興味を失っていたらしく、先程からあぐらをかいて座り込んでおり、欠伸までしている始末だった。
「そうか」
アツアーはそっけなく答え、ミズキにずかずかと近づいていく。ミラージュソードの刀身が光を反射して輝く。
「待ってよ、なんでキヌーゴはよくって私は……」
「お前には一度警告した。『着エロの裁き』でな。二度目はない。それに、俺はキヌーゴの爺さんは好きだが、お前はどうも好かん」
アツアーの問いかけに対して、ミズキはケラケラと笑い出した。ロシーボは背筋に寒気を覚えた。
「そうね、あなたの剣で死ねるんならいいわ……。でも冥界に生きる者達は、生ある者が死んだらどうなるかを知っている。このままでは済まさない。私の精神は誰よりも強力な悪霊に昇華してこの世界に君臨してやる! そこのヘイト・スプリガンのようにね! アハハハハ! またあなたを迎えに来てあげるから!」
アツアーがミラージュソードを振り下ろした。剣から激しい閃光が放たれ、ミズキの肉体は跡形もなく蒸発した。
「……お前の弱い心では三流の悪霊にしかなれん」
アツアーがぽつりと言った。冷たい表情だった。
・ハイム
元は魔界の住人であるアンデッドタイプの戦士で、ウィーナに仕える幹部従者。
明るい茶色の長髪を後ろで結い、漆黒の忍者装束に身を包んだ女である。
魔界の最高位のヴァンパイアの王女として生まれたが、「魔界のヴァンパイアを全て滅ぼす」と予言されたため、すぐ殺されそうになる。
しかし、生みの母親によって魔界の忍びの里へ送り込まれ、世間の目から隠されつつ、くの一として育てられた。
ハイムは予言通り、自らの一族を含めたヴァンパイアを滅ぼし、ヴァンパイアが魔界に巻き起こしていた、永遠に続くとも思われた戦争を終結させる。
その後、ハイムは自らの呪われた運命を断ち切るため、たまたま魔界に出張に来ていたウィーナに出会い、彼女の手引きにより冥界へ導かれ、冥王アメリカーンにより寿命と老化を持つ肉体を与えられた。
ウィーナの下では、彼女の影となって仕え、諜報活動や潜入捜査、果ては暗殺等の汚れ仕事もこなしている。
ヘイト・スプリガンの騒乱の最中、ウィーナの愛剣である聖剣ジークを探し出す密命を果たし、ウィーナと数年ぶりに再開した。
そしてウィーナを城下町へ撤退するよう説得し、自らはリレー作戦を引き継いでいる。
戦闘においては、両手に持った2本の短刀をメインに、様々な忍術を駆使する他、闇属性の魔法も使いこなす。
課せられた任務をこなすことに凝り固まったプロフェッショナルで私情は一切挟まないが、普段の生活においては、明るく活発なムードメーカー的存在であり、その壮絶な生い立ちや任務遂行への冷徹さは全く感じられない。
趣味:俳句、舞踊
NG:聖水、同族、ルールを破る事
HP 280 MP 270 攻撃力 410 防御力 230 スピード 620
運動能力 850 魔力 400 魔法耐性 260 総合戦闘力 3320




