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やるせなき脱力神  作者: 伊達サクット
第3話 正規軍VS反乱軍
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第37話 厚揚げ+USA=熱燗

 老魔術士ワーパは後方の広間に撤退し、ここまで進軍してきた友軍の兵士に対して声高らかに呼びかけた。

「皆の衆、アメリカーン様に力を集めよ!」

 ワーパの呼びかけに応じて、正規軍の兵士達が続々と集まる。

 兵士達はワーパの指示に従い、アメリカーンを中心に据え、その周囲で肩を組み輪になった。

「もびへやぱっぱみめぎぇぶぶぶーっ!」

 ワーパが杖を頭上に掲げて呪文を高らかに唱えた。すると、円陣を組んでいる兵士達から激しいオーラが発生し、そのオーラはアメリカーンに吸収されていく。

「うあああーっ! 我らの力がアメリカーン様に結集されているとでもいうのか!?」

「かくなる上は俺達の戦闘力の全てをアメリカーン様に注ぎ込んじゃえ!」

「お前達、すまない……。この力、決して無駄には使わぬぞ」

 アメリカーンはみなぎるパワーを全身に感じ、己の使命感を心中で煮えたぎらせた。

 そのときだった。

 部屋の窓側の壁が突然爆発するようにぶち破れ、そこから深紅の鎧に身を包んだ騎士が飛び出してきたのだ。そして、その騎士は力を結集している最中であるアメリカーンに衝突した。

 その瞬間、部屋を吹き飛ばすようなオーラの大爆発が発生した。

 暴発するパワーが周囲に拡散し、肩を組んで円になっていた兵士達は各々周囲360度に吹き飛ばされた。

「こ、これは一体……」

 ワーパが爆発の後に見た姿は、力強い、中年男性の顔を持ったアメリカーンのそれではなく、女性と言っても通じそうな優しげな顔立ちを持った若い男性の顔を持つ、漆黒の鎧に身を包んだ騎士であった。

 頭部から生えている山羊のような歪曲した二本の角に、アメリカーンの名残が見られる。

「我が名はアツカーン! アメリカーンとアツアーが融合した者なり」

 アツカーンと名乗った男は、力強い表情で、固く唇を結んだ。

「では、今外から飛んできたのはアツアー様であったか……」

 ワーパはアメリカーンと冥王四天王の一人アツアーが合体したアツカーンの強大なパワーを感じ取っていた。

 アツカーンは驚いているワーパや兵士を尻目に、独り言を始めた。いや、正しくは一人会話と言うべきだろうか。

「おいアツアー、もうちょっとましな名前はないのか? まるで酒みたいではないか」

「いや、響きがいいと思ったんですが……」

「まあよい、このパワーならミズキやキヌーゴに対抗できる」

「私は剣術が専門ですので。魔力のパワーアップは期待しないでください」

「総合的な戦闘能力は大幅に上がった。もっとも、私が冥王の座にいたころの力には遠く及ばないが……」

「奴らを倒すには十分だと思います」

「違いない」

 自分の言葉に自分で納得するアツカーンだった。

「なんか一人でぶつぶつ言ってんぞ」

「大丈夫この人?」

 一人で会話をしているアツカーンに、兵士達は不審そうな眼差しを送った。

 そのとき、三人の兵士達が前方の通路から逃げるように部屋へ駆け込んできた。そのうちの一人は、重傷を負ったらしい兵士を負ぶさっている。マキシマムゴーレムを時間稼ぎのために食い止めていたネルギー達である。

「もう限界だ!」

 ネルギーの身につけている鎧は亀裂があちこちに入っており、敵の攻撃の強力さを物語っていた。

「奴の動きが鈍くて助かったようなもんだ」

 中級兵士のデッキが息を切らして床に膝をつく。

「バイルさん、しっかりしてください!」

 下級兵士のジョアンが負ぶっている上級兵士の男を、部屋の隅で床に寝かせた。

「マキシマムフルパワーゴーレムウゥゥ!」

 通路の奥から、鋼のような体を持った魔物が姿を現した。破壊衝動しか持たないことを物語っているような無機質に光る赤い目は、冷たくて無慈悲である。

「どいていろ」

 アツカーンが周囲の兵士を下がらせ、マキシマムフルパワーゴーレムに肉薄した。

 そして、敵がその接近速度に何ら対処できないまま、アツカーンは漆黒の刀身を持つ巨大な剣を振り下ろし、マキシマムフルパワーゴーレムを一刀両断にした。

「マキシマム、フルパッパ……!」

 断末魔の言葉を最後まで発せられず、敵は煙を上げ、体中の輪郭をサラサラと失っていく。

 そして、ついには砂のような灰塵(かいじん)の山に帰した。

 その様子を周囲で見ていた人物はその圧倒的なアツカーンの力に言葉を失う。

 そんな兵士達に向き直り、アツカーンは「私は頂上へ向かう。ここは任せた」と言い、上の階に続く通路へと単身突き進んでいった。



 冥王の城の玉座の間では、アメリカーンになり代わり、ミズキが玉座に座っていた。

 その周囲に、三人の人物がミズキを守るように立っている。

 青く光る鎧で全身を武装し、穂先に呪文のような文字が刻まれたトライデントを持った魚人の男、バルバラッテ。

 漆黒の鎧に身を包み、巨大なバトルアックスを持つ紫色の肌をした大男、ドックリム。

 肌色の肌を持った人間に近い種族で、軍服を着用し、腰にサーベルを携えている男、レキ。

 三人ともレブラックと同じくミズキの側近で、いずれもかなりの実力を持った連中である。

 ミズキは非常にいらだっていた。

 理由は二つ。

 彼女は未来を見通すことができる力を持つが、また彼女の意に沿わぬ出来事が発生したというのがその一つ。

 レブラックと、ミズキが彼に与えた魔物、マキシマムフルパワーゴーレムが正規軍によって倒されたのだ。

 ミズキの予知した未来では、レブラックとマキシマムフルパワーゴーレムの戦力なら100%の確率でアメリカーンを亡き者にすることができた。

 しかし、現実はそうはならなかった。ミズキの予知する運命に干渉されない不確定要素が乱入したからだ。

 ミラージュソードを持ったアツアーである。

 アメリカーンとアツアーの融合も彼女にとっては想定外の展開であった。

「まさかレブラックがやられるとは……」

 ドックリムが苦虫を噛み潰したような表情でうなった。

「ミズキ様の思い描いた未来にならないなんて」

 レキがミズキの顔色をうかがうように、チラリと彼女の顔を見る。

「バルバラッテ! 儀式はまだ終わらないの?」

 ミズキは青く光沢を放つ尻尾を玉座にピシピシとぶつけながら魚人の戦士に問いかけた。ここでいう儀式とは、城の最上階の祭壇で行われている『冥王であるヘイト・スプリガンの権限・力をミズキに継承させる』儀式である。ヘイト・スプリガンを祭壇に呼びつけ、大神官キヌーゴが取り行っている最中だ。

 まずはキヌーゴ達の方で儀式を進めてもらい、ミズキが必要になったときは玉座の間に呼び出しがかかる段取りとなっているのだ。

 しかし、思ったより時間がかかっているらしく、いつまでたっても呼び出しがこなかった。それが彼女がいらだつ二つ目の理由であった。

「それが、その、さきほど様子を見に行ったのですが、ヘイト・スプリガンが作法を知らない上に言われた通りに動かないから、ちっとも終わらないようです」

 バルバラッテが狼狽しながら説明した。

 それを聞いたミズキはバルバラッテを射抜くような鋭い目つきで睨みつけた。

「あと何分かかるって言ってた?」

「いや、それは聞ききませんでした」

 ミズキは、指先から青白い魔法の光線を放ち、バルバラッテの胸を貫いた。

「あ、あああ、ああ……」

 バルバラッテは目を見開き、口をあんぐりと開け、体を震わせながら前のめりに床に倒れ動かなくなった。その光景に対し、ミズキは不機嫌な表情を変えようともしない。

「ねえ、ドックリム」

「え、あ、は、はい! 何でしょう!」

 唖然としていたドックリムはミズキに声をかけられて、背筋を伸ばし彼女の方へ向き直った。

「ちょっと死んで」

「ええっ!? なぜ?」

「別に」

 ミズキがドックリムを睨むと、彼の足が凍りつき、そのまま上半身や腕までもがゆっくりと凍結していく。

「待って下さい! 何で、私が何かしましたか? お願いです、すいませんでした、何でもしますから! 助けて……」

 口が凍ると静かになった。ミズキが指を鳴らすと、氷像となったドックリムは無数の氷の破片となり砕け散った。

 そして、今度はミズキはレキの方を見る。

 彼は、恐れや戸惑いではなく、力の感じられない無表情を作っていた。虚脱や諦めを感じる顔つきであった。

「ねえ、私を祭壇に連れてって。お姫様だっこで」

 ミズキはレキに対して微笑みを投げかけた。

「勘弁して下さい」

 レキは小さくため息をつくと、腰からサーベルを抜き、自分の首筋にあてがった。

 そして、両手を勢いよく引くと彼の首筋から血が噴き出し、サーベルを首に埋め込んだままの格好で倒れ、絶命した。

 三人の側近は全滅した。

「今度はあなたを部下にするから。身も心も全部この私に捧げさせてあげる」

 ミズキは玉座の間の入口に向かって言った。

 そこには、漆黒の鎧に身をまとった騎士であり、アメリカーンとアツアー合体した姿、アツカーンが大剣を構えて立っていた。ミラージュソードの力はその剣にしっかりと受け継がれているようだ。

「よくもまあ、好き放題やるものだ」

 アツカーンが呆れたような表情で歩みを進める。

「強さ、美しさ、地位、私は全てにおいて完璧だから。何をしてもいいの」

「馬鹿馬鹿しくてまともに話す気にもなれないな!」

 彼の全身から、闇のオーラが静かに放出されていく。

 戦いの火ぶたが切られようとしていた。


・マキシマムフルパワーゴーレム


 冥王四天王の一人、ミズキが部下のレブラックに与えたモンスターで巨体と剛腕を誇る巨人である。

 身体全体が鋼鉄のような物質で構成されており、表情のない顔からは丸い眼球だけが怪しげに光っている。

 自分を呼び出したレブラックを殺してしまうなど、破壊衝動は凄まじく暴れだすと手に負えない。

 冥王の力を失った後のアメリカーンや、正規軍の兵士達相手に圧倒的な強さを見せた。

 しかし、その後アメリカーンとアツアーが合体したアツカーンによって一刀両断にされてしまった。

 弱点は動きが鈍いため、比較的容易に逃げられること。


HP 3000  MP 200 攻撃力 3000 防御力 2800 スピード 100

運動能力 100  魔力 100  魔法耐性 700  総合戦闘力  10000

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