表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やるせなき脱力神  作者: 伊達サクット
第3話 正規軍VS反乱軍
36/98

第36話 最凶最悪の刺客

 ウィーナが冥王の城へ再度突入する少し前。

 城の三階ではアメリカーンは自ら兵を率い、立ちふさがる反乱軍と戦っていた。

 広大な敷地を持つ城内の部屋、回廊、階段、その全てが戦場となっている。もはや一階から三階まではどの場所でも正規軍と反乱軍が入り混じっていた。

 アメリカーンは部下達と共に四階へ進むべく、階段に続く廊下へと突き進む。すると、前方に普通の兵士とは明らかに格が違う雰囲気を漂わせる者が現れた。

「現れたなアメリカーン! へっへっへ、手柄が首持ってやってきやがった」

 それは、鋭い眼光に鋭い爪、まるで鋭利な刃物のように逆立ち光る銀髪を持った魔族の男だった。各所に鎖をあてがった漆黒のコートからのぞかせる胸元は、鋼鉄のような灰色の筋肉で覆われている。

「あなたは……、レブラック殿、い、いや、レブラック……!」

 アメリカーンと共にここまで進軍してきた冥王軍エリート兵士、ネルギーも熟練の戦士でありがなら眼前の敵が放つ強大な殺気に思わずたじろいだ。

 もちろんアメリカーンもこの男をよく知っている。

 ミズキの側近であり、彼女の敵となる者全てをズタズタに切り裂いて血の海に沈める最強最悪の刺客、「メタルファントム」の異名を持つレブラックだ。

 ちなみに、ミズキは冥王四天王だけでなく、歌手やファッションモデルといった芸能人としての顔も持っており、レブラックはファンクラブの会長を務めている。

 今までの敵とは明らかに格の違うレブラックを前に、アメリカーンが無言で一歩踏み出した。この敵は自分が相手をするという意思表示であろう。

 その意思をくみ取り、ネルギーをはじめとするバイル、デッキ、ジョアンらその他の兵士数名は戦いの邪魔をしないよう後方へ退き、様子を見守る。

「ミズキの番犬か……」

 アメリカーンは吐き捨てるようにつぶやいた。

「もうお前は冥王ではない。口のきき方に気をつけてもらおうか!」

 レブラックの先制攻撃。

 力強く振りかざした両手の爪からまるでかまいたちのような衝撃波が巻き起こりアメリカーン達に襲いかかる。

「漆黒の龍!」

 アメリカーンの右腕から、闇が渦巻き赤く光る眼光を持った龍が生まれる。そしてその漆黒の龍は、レブラックの放った衝撃波を飲み込み、闇を渦巻きながらレブラック本体へと突っ込んでいく。

「しゃああっ!」

 レブラックは素早く、そして高く跳躍して漆黒の龍を回避し、着地と同時に両手の爪を光らせアメリカーンに迫った。

「リフレクターウォール!」

 レブラックの接近に反応し、アメリカーンの配下である冥王軍宮廷魔術士・ワーパが後方より白銀の杖を振りかざし、アメリカーンとレブラック双方の間に魔力の壁を張り巡らせる。

 その老練なる魔術で作られたワーパの防壁は、分厚い魔力の膜で覆われており、レブラックの侵攻を間一髪で阻んだ。

 ここで敵に一瞬の隙ができた。

 アメリカーンはその時間を無駄にせず、すぐさま次の攻撃を行うべく、手に魔力を凝縮する。

「それがどうしたああぁ!」

 しかし、レブラックは片手を大きく振り上げ、禍々しく光を放つ爪をリフレクターウォールに深々とえぐり込ませると、壁が八つ裂きにされ、魔法は打ち破られた。

「何ッ!?」

 自身の魔法を破られて、思わずワーパが声を上げる。

「うおおおぉっ!」

 アメリカーンの背後に控えていたネルギーが、間髪入れずにアメリカーンを守るべくレブラックに躍りかかる。


 彼は両手に持った長剣を力強く振りかざしたが、レブラックは難なくその攻撃をかわし、ネルギーの横腹に重いひじ打ちを浴びせた。ネルギーは歯を食いしばってダメージに耐えようとするが、たまらずその場に崩れ落ち、床にひざをついた。

 レブラックはそんなネルギーを気にもせず、攻撃目標であるアメリカーンに肉薄する。

「ヒャッハー! 手柄首だーっ!」

 レブラックが邪悪な笑みを浮かべ、アメリカーンの喉元に向かって爪を振りかざした。

「ダーク・エクスプロージョン!」

 同時にアメリカーンは両手に闇を作り出し、レブラックの胸元で爆発させた。

 レブラックの爪の残光、アメリカーンの黒炎、二つの攻撃は互いの身体を打ちのめし、両者を吹き飛ばした。

「ぬうう……」

 アメリカーンは床に倒れ、苦悶の表情でレブラックの爪が達した首の傷を手で覆い隠す。

 一方、ダーク・エクスプロージョンにより後方に吹き飛ばされたレブラックは、床には倒れず、直立のまま何とか踏みとどまる。

「相討ちだが、アメリカーン様の方がダメージが大きいか……」

 ネルギーは腹部を押さえ、息を切らしながら両者の様子を見比べた。

「ガハアッ!」

 そのとき、突如レブラックが激しく吐血し、彼の足もとの床が青い血に染まった。

 目が激しく充血し、彼の体力的消耗が感じ取れるが、こちらに向ける鋭い眼光は凶悪さに加えて狂気を帯び、その恐ろしさはむしろ増したかのように見える。

「アメリカーン様、回復を」

 ワーパがすぐさま杖を振り、アメリカーンに回復魔法を唱えたが、彼の首元の傷は癒えなかった。

「傷が治らないだと?」

 ネルギーが驚愕する。

「肌に刻まれし闇の爪痕……、簡単に癒えれば苦労はしない」

 アメリカーンが力強く立ち上がったが、表情で彼の苦痛は見て取れた。

「ワーパ殿、これは一体?」

 ネルギーは状況を正確に把握できず、年老いた魔道士に質問した。

「うむ……。レブラックの一撃、あやつが爪に宿した闇の力がアメリカーン様の傷口に残っている。その闇の力は傷口から体内に入り込み、アメリカーン様の体力を蝕んでいくことじゃろう。この強力な闇の毒牙、ワシの力では祓いきれん」

 ワーパがしわだらけの顔に、さらにしわを作り出して解説する。

「何ですと? このままでは」

 ネルギーが不安げな表情でアメリカーンに視線を移した。

「しかし、先程の相討ち、威力自体はアメリカーン様のダーク・エクスプロージョンの方が数段上じゃ。ワシの張った壁と、お主のしかけた攻撃でわずかな時間が生みだされ、アメリカーン様がより多くの魔力をためることができたのじゃ。奴を見てみろ、相当弱っておる」

「そうでしたか……」

 ワーパの丁寧な解説を聞き、ネルギーは次にすべきことを見出した。

「ヘッ! 笑わせるな。この程度の傷、ミズキ様のわがままに耐えることと比べたら屁でもねえんだよ!」

 レブラックが強気な言葉を吐きだしたが、同時に血も吐き出しており、先程の攻撃が大いに有効であったのは目に見えて分かった。

「追い打ちをかける!」

 勝負を早急につけるべく、ネルギーが長剣を構え、手傷を負ったレブラックに走り寄る。

 その瞬間、突如アメリカーンが叫んだ。

「待て! ネルギー!」

 その有無を言わさぬ迫力を持つ声に、慌ててネルギーは攻撃をやめ、背後に身を引いた。

「アメリカーン様?」

 ネルギーは自分の行動が制止された理由が分からず、身構えつつアメリカーンに問いかけた。

「奴からまだ別の力を感じる、とても強大な力を。不用意な攻撃は死を招く」

 アメリカーンはそう言ってレブラックをにらみつけた。

「ほう……。気づくとはさすがは元冥王と言っておこうか」

 レブラックはかすれた声をしぼりだした。小さくせき込むと、まだ口から少量の血液が噴き出される。

「使うっきゃねえか。ミズキ様からいただいたモンスターを」

 レブラックが手を前面にかざすと、空間は彼を中心に赤い光に包まれる。その光景に驚愕する暇も警戒する暇も周囲の人物に与えず、すぐに光は収まった。

 レブラックが手をかざしていた場所に現れたのは、回廊の天井に届きそうなくらいの体格を持つ、巨人のような魔物であった。身体全体が鋼鉄のような物質で構成されており、表情のない顔からは丸い眼球だけが怪しげに光っている。

「馬鹿な!? この一瞬で召喚しただと!?」

 ネルギーは慌てて敵との距離をとる。

 通常、召喚などという高度な技はある程度の呪文の詠唱が必要であり、そんなすぐに完了するものではない。先程、アメリカーンに制止されていなかったら、この魔物にひねり潰されていたかもしれない。

「さあ、やってしまえマキシマムフルパワーゴーレム! こいつらを殺せ」

「マキシマムフルパワーゴーレムウゥゥゥ!」

 地を這うような野太い雄たけびを上げたマキシマムフルパワーゴーレムが、巨大な鉄腕をアメリカーンに振り下ろす。

「イビルサンダー!」

 アメリカーンが右腕から、黒い雷撃を放射して迎え撃つ。

「マキシマムフルパワーゴーレムウゥゥゥ!」

「ぐおおおっ!」

 しかし、マキシマムフルパワーゴーレムはイビルサンダーの魔法をものともせず、アメリカーンを激しく殴り飛ばした。

「いかん、分が悪すぎる!」

 吹き飛ばされたアメリカーンを見て、ネルギーが窮地を感じ取る。

「ワーパ殿! アメリカーン様を後方へ一旦下げましょう! そして、他の兵に召集を!」

 この状況下にして、ネルギーが慎重論を提示する。

「うむ、賢明な判断じゃ」

 ワーパがアメリカーンに肩を貸し、後方へと逃げる。

「おい、逃がすな! マキシマムフルパワーゴーレム!」

 レブラックがアメリカーン達を指差し、マキシマムフルパワーゴーレムに指示を出す。

「マキシマムフルパワーゴーレムウゥゥゥ!」

 マキシマムフルパワーゴーレムが雄たけびを上げ、何の前触れもなしに横にいるレブラックの脳天目がけ城中を揺るがすような重いパンチを叩きつけた。

「ですよねええええっ!」

 レブラックは鉄拳を受ける寸前に断末魔の台詞を叫び、自分が呼び出したマキシマムフルパワーゴーレムの犠牲となった。

 プレスされ、圧縮されたレブラックの死体は悲惨の一言で目も当てられない。

「マキシマムフルパワーゴーレムウゥゥゥ! マキシマムフルパワーゴーレムウゥゥゥ! マ・キ・シ・マ・ム・フルパワーゴーレムウゥゥゥ!」

 敵はさらなる生贄を求め、咆哮を繰り返しながらこちらに歩みを進めてきた。

「ワーパ殿、ここは私が引き受けます!」

 ネルギーが巨大な魔物に対して戦闘態勢をとる。

「我々も付き合う!」

 上級兵士バイルが剣を抜き、ネルギーの右手に現れる。

「やってやろうじゃんか!」

 中級兵士デッキもネルギーの左手で防戦の構えをとる。

「とにかくやってみせます!」

 そこには下級兵士ジョアンの姿もあった。

「すまん! ワシは他の戦士の力をアメリカーン様に集める秘術を使う! それまで辛抱してくれ!」

 そう言い残し、ワーパは元冥王を担ぎながら、老体に鞭を打って撤退していった。


・レブラック


 ヘイト・スプリガン事件において、反乱軍に所属した魔族タイプの戦士で、その実力と残虐さから「メタルファントム」の異名を持つ。

 鋭い眼光に鋭い爪、まるで鋭利な刃物のように逆立ち光る銀髪を持ち、各所に鎖をあてがった漆黒のコートからのぞかせる胸元は、鋼鉄のような灰色の筋肉で覆われている。

 冥王四天王ミズキがアメリカーンに差し向けた最強最悪の刺客。

 ミズキのファンクラブの会長を務めており、彼女の障害となる存在を排除することを役目としている。

 アメリカーンが率いる部隊に単身攻撃をしかけ、アメリカーンに深手を負わせるも自身も負傷した。

 そこでレブラックは奥の手としてミズキから授かった超強力モンスター、マキシマムフルパワーゴーレムを召喚したが、自分で呼んだはずのマキシマムフルパワーゴーレムのパンチを喰らって自滅した。

 戦闘中、敵に向かってミズキのわがままに耐えるのは大変だと愚痴めいた発言をした。


HP 1000 MP 500 攻撃力 1000 防御力 600 スピード 1700

運動能力 700 魔力 700 魔法耐性 800  総合戦闘力 7000


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ