ノマド
また依頼をこなす日々に戻る。やってる事は全く変わらないが、何か他のメンバーの様に情報組織を意識する事が無く、依頼としてこなしてるとどうも味気なさも感じてしまう。木材伐採の護衛任務とあんまり変わらない。何かこう違うんだよな…。強く不満を持ってるわけじゃない。組織の仕組みを熟知してるから自分がやっていた事と大差無いから。
でも依頼と言う形になってしまうと、孤児院の子らの薬草採取、木材伐採、輸送の護衛とダンジョンの攻略が同じになってしまう。もちろん他の要因で刺激が極端に落ちてるのが大きい。それでも以前から僕自身にとっては実はギルドに組み込まれるのは良くないと思っていた。
おかしな話だ僕が立案してルルミラをトップにつけたのに、僕は同時にギルドの冒険者になりたくなかった。そこも今の僕の超人的依頼遂行によって、無理矢理利益を出している高度な情報組織の存在も気に入らなかった部分。ギルドの幹部にはなりたかったが、ギルドの冒険者にはなりたくなかった。
大きな商会などの上の人間じゃなくて、これじゃ個人の店のオーナーが別に居る店長だ。やりたかった事の違いがこれなら鮮明になる。そして冒険者がいやなんじゃない。ギルドの一員の冒険者として働くのを危惧していた。ただ最初から嫌がっていても受け入れたのは、ルルミラの僕の取り込み方がべらぼうに上手かった事にある。信念ぐらい嫌がってる事を自分の意思で受け入れさせれた。
ノマド構想が変な形で始動した。出来る限り適当にルルミラに伝えてくれと言うニュアンスがすごく伝わってきた。これしかないぐらい思ってるアイデアだけど同時に上手く行くわけ無いと思ってる。僕が居るから。これほど合理的な方法は無い。調査員と冒険者をくっつけた存在。どこに合理性があるか?と言えば攻略する競争相手がほとんど居ないから。
一度見つければライバルがほとんど居ない場所でずっと居座れる。実はこれ本来なら定住に近い。本当はこれ移動生活に向いてない。僕はこれをしらみ潰しに攻略していく存在。僕の存在がまず上手く行くだろうと思うスタイルをボロボロにする。ギルドとしてこの2つを実行する事は矛盾してる。
だから僕はすごく適当にやって欲しいとお願いした。本格的な移動住民じゃなくて良い点、他に定住場所があっても設備を貸し与える。次に調査員の価値の高い情報をタダで教える。それが無いと僕とまともにやりあえないなら。そもそもこれが移動式簡易住居の開発実験にあってノマドと言う住民自体はどうでも良い点。これを使えば、移動可能なため安く簡易的な中継地点の臨時施設が作れるから。
後どう働くか?の情報組織の最終的決定がある。情報を元に依頼を作らなければ良い。ルルミラにノマドがいるため依頼について考慮してもらう判断を付け加える。ただし絶対じゃない。中継地点の住人のためのダンジョンが減る可能性があるから。これを情報分析を超えたルルミラの責任で実行する。彼らが判断するのはノマドの住居を発見してからの経過日数などの考慮。
ただしこれらを超える明るい希望もある。彼らの存在によってまたダンジョンの全体の数が増える点。実はまだまだ情報を探りきれてない事を発見する。所詮僕だけの組織なので思い切り手を抜ける部分は抜いてある。まだまだ想定より多いダンジョン数が発見される可能性は残されている。
単純な話し一人一人の質を上げるように努力してるが、たっぷりな数雇えばすぐ綿密な調査が出来る。それをやってない。特に重要なのは担当地区で区分された調査員をまとめる間の人間の存在。この間の人間が何をするか?と言うと、時間的経緯を調査する。常に攻略と生成を繰り返すのでそのプラスマイナスを正確に把握しなくてはいけない。
当然こんなもの毎回やる事は無い。徹底調査に必要な部分。なおかつこれにまだある。ジェニーの予想では長いスパンでは全体数自体が上下の波を持ってるからそれをならした平均値の調査になる。これを出来たら通常の依頼と繋げた調査と平行して行ったほうが良い。いずれ回りを固めてやるらしい。各地に散らばった調査員のための小屋。調査員と冒険者の村。ノマド実験もその一つになる。
間の調査員同士が合成した全体の時期ごとの変化を最終的な分析官であるジェニーがまとめる。そこに依頼達成のデータを組みあわせて整合性を取る事で。
次に模倣ノマドの存在。これは事実じゃない。いつか模倣して増えてくれれば。ギルドの計画として遂行しなければ矛盾じゃないって屁理屈だけど。確かにこれ疑問を感じる計画だから。真似をしていく中でより洗練された人達が淘汰されて残っていく可能性があるから。当然その人達は思いもよらない方法で生き残って行くかもしれない。可能性の話しだが。
退屈なのか?と言うと多分ある。そんな日々がまた過ぎていった。僕は結局根底の部分で父さんの束縛から逃れら無い。僕には命の脅威となるような敵が必要なんだと思う。安全を確保するための不安や恐れの排除、その過程が楽しいと気がついてしまった。得た安全なんてどうも僕には合わない。僕は本当の意味で仲間の安全なんて求めてないのかもしれない。
欠陥人間だとなんとなく思ってたけど、ここまで歪んでるとは。僕は危険を求めてない。安全を求めてるが、それを得て長期間過ぎるとその維持はどうでも良くなってしまうようだ。僕は安全を求める性格からてっきり危険を求めるような人間じゃないと思ってた。常に危機感があったためそれを欲していたがその継続から来る幸せはあまり強く感じてない。
自分から破壊しようとは微塵も思ってないが、依頼遂行者じゃなくて未知なる物への冒険者なんだけどな。プロフェッショナルである事なんて正直どうでも良いんだよな。
僕をギルドに繋ぎ止めてるのは人間関係じゃない。この国の未来がまだまだ多くの不確定要素に溢れて未知だから。だからはっきり言ってもう退屈になっていた依頼をコツコツこなしていた。
ずっと退屈を誤魔化してきた。でもやっと分かった僕が楽しんでるのはこの国、このギルドの行末であって、そのための依頼自体はまるで楽しんでなかった。何故面倒になってるのにやめられないのか?で本当は好きなんだろうと思っていたのは、実は別の楽しみと混同した勘違いだったんだ。




