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 澪が最近とても綺麗になった。

 いや、もともと澪は我が姉ながらけっこう美人なほうだったけれど。

 男の俺には具体的にどうとかはよくわからないけれど、最近澪は変わった。ファッション雑誌とにらめっこしていることが多くなった。こそこそとスマホをいじってにやけていることが多くなった。なんだか買い物に出かける頻度も増えた気がする。


「男ができたせいよ」


 ニーナは澪が垢抜けていくにつれてひどく悔しがった。


「許せない」


 俺は、俺と、愚痴しか言わないニーナの間で板挟みになりながら、澪がどんどん「女子高生」になっていく様を黙って眺めていた。


「ねえ、直」


 ある日の夜、澪が俺の部屋に入ってきた。俺が澪の部屋に入るときはノックをしないと怒るくせに、なんだって自分はノックしないんだろう。


「ノックくらいしろよ」

「いいじゃないノックくらい」


 澪は夜だっていうのに髪の毛をふわふわに巻いて、化粧までしていた。部屋にこもっていると思ったら、そんなことをしていたのか。まったく澪の行動が理解できない。男子ネットワークで回ってきたエロ本を枕の下に押し込みながら、「なんだよ」と俺は澪につっけんどんに言った。

 澪はひるまずにずんずん俺の部屋に入ってくる。


「どっちがかわいい?」


 澪は両手にワンピースを二着持っていた。右のワンピースも左のワンピースも花柄で、俺には色の違いくらいしかわからない。右が白で左がピンク。


「どっちがいいって? 俺は着ねえぞ」

「バカ、直じゃなくてあたしが着るの。できるわけないけどもし直に彼女ができたとして」

「余計なお世話だ」

「彼女がデートに着てくるとしたらどっちがいい?」


 ははん、合点がいった。化粧の髪の毛も彼氏とのデートの予行演習なんだな。


「右かな」

「清純派ね」

「ピンクはちょっとぶりっこだ」

「わかった」


 澪が白いワンピースを体の前に合わせる。うん、似合ってる。


「いいんじゃね?」

「じゃあこれにする」


 出ていくとき、澪が立ち止まって振り返った。


「ニーナ、また男子のことフッたんだってね。いい加減彼氏作ればいいのに」


 澪はなんて鈍感なんだろうか、と思った。事態はそんなに単純じゃないというのに。


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