プロローグ/第一話 自由を求めるエンキリ
たんぽぽさん、感想ありがとうございます。連載開始となりましたこの小説、皆さんも出来ましたら応援してください。はじめはちょっとあれですが末永く読んで欲しいと思います。
プロローグ
駅前に長旅の疲れを発散するように一人の少年があくびをした。高校生ぐらいだろうか?最近の若者にしては珍しく黒髪で短髪だ。目は切れ長でどことなく鋭い印象を受けるが、和やかな雰囲気を持っているという感じでミスマッチだった。
「ん〜〜〜ひっさしぶりだな」
背中に背負っているのは彼の最低限の身の回りの道具だ。既に必要な道具は彼の自宅に送られているだろう………
目の前に広がるのは田舎と都会のちょうど真ん中ほどの賑わいを見せる街だった。少年が背負っている唐草模様の竹刀袋を見ると剣道部に所属していると思われるに違いない。
「さて、いくとするかな………」
少年は歩き出した。
一、
「ただいまぁ!」
俺の名前は縁切霧耶。
由緒正しいか知らないが、人と人との縁を切って生活してきた一族の末裔である………と、なんともかっこいいと思われる仕事かもしれないが、これが意外と収入に困る。
それこそ、歴史はかなり前からあって嘘か本当かはわからんが縄文時代より前の頃から仕事をやっていたそうだ。
時がたっても偉い人とのつながりしかなくて、そのせいで今では顧客を求めているといった現状でこの“エンキリ”という能力を使うものはあまりいなくて普通に働いていたりする。
そんで、仕事内容はただ単に縁を断ち切る………言葉にしたら簡単………そういった感じだが、これが意外とやっていることはすごい。
一度断ち切ってしまえばその縁が戻るには再び新たなきっかけを生むしかない。
何のことかはよくわからないと思うので説明するにはまず………この“エンキリ”について説明したいと思う。
俺たちには人と人との縁が見え、それが太さによってどのくらい親密なのかわかる。
腐れ縁だって見えるし、運命の赤い糸だって見える。
それを棒状のもの(棒ならなんでもいい。
)できってしまうのが俺たち縁切り一族のお仕事である。
縁を断ち切ることによって不幸要素も切ることが可能で………不幸との縁を切ればある程度は幸せになることが出来る。
たとえば、一人女性がストーカー行為にあっているとしよう。
相手が誰なのかわかっていれば………まぁ、ここまでわかっているのなら警察にいくだろうが………その人物との縁の糸を見つけて断ち切りやすい。
断ち切った結果、相手は切れてしまった縁の糸のおかげでふとした拍子にその相手と疎遠となってしまう。
その反動か知らないが、縁の糸を断ち切ると、断ち切ってしまった相手と自分に何らかの事象が起こる。
縁を切った相手がストーカーだったらそのストーカーが警察に捕まるか、結婚することになったりするのだ。
つまり、警察と縁ができたりするわけである。
まぁ、きってしまった縁の糸を戻すには努力というか、執念というか………そういったものの類があれば戻そうと思えば戻すことが出来る……かもしれない…………さて、俺たち一族の能力についてはこんなものだろうか?それなら、幸せになることが可能じゃんか!しかし、その昔に調子に乗って不安要素をぶっつんぶっつん切っちゃうような一人の“エンキリ”がいたそうだ。
エンキリは自分の縁の糸を切るのが非常に難しく、一人の男を幸福にするためにその力を使ったそうだが………その男は幸福を求めすぎたために不幸をも招きいれてしまったのだ。
理解できないと思われるので一つのわかりやすい例を挙げよう。
まず、一人の男が宝くじに当たった。
物凄い額を手に入れ、男は大富豪となって豪邸を建てたのだった。
勿論、財産を守るためにセキュリティを万全にしていた。
だが、ある日………強盗に入られて殺されてしまったのだ。
彼が宝くじに当たらなければそんなことにはならなかったかもしれないのだ。そんなことで、どうやらこの“エンキリ”という能力は使いどころの難しい力のようで他にも一つの糸を断ち切ろうとして他の糸も切っちゃったといううっかりミスも報告されている。よって、扱いがうまいものしか使うことが許されていない。
まぁ、繰り返すことにはなるがとりあえず他人の縁を切るのが俺たち一族のお仕事ということだ。これで理解してもらえただろうか?
―――
「今日からここが俺の家かぁ………」
俺の声は弾んでいる。目の前に広がる少し古ぼけた日本家屋。ここはその昔に名のある“エンキリ”が使用していたという………反省小屋である。
「……………はぁ」
俺の声は沈んだ。
状況を説明しよう。
俺の一族はもう、ナウマン像を追いかけていた頃からの家系であり………許婚制度を未だにとっている。
縁断ち切るときは歯のない刀の柄を使ったりしているのだから充分古い。
まぁ、それはいい………許婚というのは知っている人も多いだろが………小さい頃から結婚する相手が決まっていることをいうそうだ。
俺にもその許婚がいた。
ああ、そりゃうらやましいなぁと思う人もいるだろう。
だが、甘い。
可愛い相手ならまだしも、俺の相手はぎょっとするような人物だった。
大富豪の娘らしく、わがままの限りを尽くす許婚に俺はぎょっとした後に頭にきた。
だから俺は当然、婚約破棄を訴えたのだが通らなかったので俺は許婚の相手の背後を取って………俺と許婚の縁をめっためったに切ってやった。それはもう、俺の“エンキリ”史上最大最高にして後も残らないように断ち切ってあげましたとも。そして、俺の許婚は新たな縁が生まれてそっちにいったそうだ。これでもう、完璧に疎遠となった俺だったのだが……血を重んずる俺の一族の人たちはこの行為を
「一族に反逆するものの行為」とみなしたらしい。
そして、今の状態となっている。
ちなみに、俺がこっそりと逃げ出さないように俺を監視する“エンキリ”、その数四人。トップ10の中から10、9、8、7で来ている。本当はトップ10が全員俺を監視するはずだったそうなのだが………出来なかったそうだ。先にばらしておくが俺の爺ちゃんがトップで次にばあちゃん、次が俺の父さん、母さん、姉さんで5まで………実力は高いのだが、どこは偏屈なところもあるので
「たまには一人で考えろ。お前に時間を割きたくない!このままお前との縁を断ち切りたい!」と全員が全員おっしゃっていた。ああ、そういえばばあちゃんはそんなことをいっていなかった。ばあちゃんは
「残念ながら、あたしゃ、目が悪いから縁の糸を断ち切る前にお前の首を断ち切りそうじゃ、イヒヒヒ♪」といっていた。ぞっとした。
「ま、俺が五番目だから逃げようと思えば逃げれるんだけどね♪」
ちなみに俺を見張っている人たちは俺をどこかに見逃してしまった場合…………“エンキリ”の一族と縁を切られてしまうそうだ。まぁ、それを行えるのは今の一族の宗主である俺の父さんだけなのだが………
俺が飛ばされたのは俺たち一族とはあまり関係を持たない場所だ。
ここで俺が反省するまで………つまり、許婚を自分で失ったのだから自分で結婚する相手を見つけなくてはいけないのだ………実家に帰ることは許されない。個人的な意見としてはまだ結婚するには早い。それに、結婚してしまってはもう“エンキリ”は自由になれないのである。これもまた、古めかしい制度で……家庭を持った“エンキリ”は常に妻と一緒ではないといけないのだ。どこに行くにでも一緒、四六時中一緒なんて考えられねぇ………
そういった事情で、俺はまだまだ一人でいたいのだ。女の子?そんなの興味のかけらもないね!
「お、可愛い女の子発見!どう?そこの君ぃ、俺とお茶しない?」
「………きゃあ!変態よ!!」
ちっ、逃げられたか…………
こほん、まぁ、さっきも言ったとおり………俺はまだ結婚しない予定である。これもまた、俺自身に女性との縁が薄いということもあるのだが………
「ねぇねぇ、そこの君!俺のバットを使ってみないかい?」
「何よ!この変態!」
ばしーん!!
これはまぁ、あれだ。許婚との縁を断ち切ったときにやりすぎたらしい。俺自体がもてないわけではないのだ。
「許婚との縁を切る」はずが………
「女性全般との縁」を断ち切っちゃったようだ。そんな細かい力加減なんて俺、ちょっと苦手なのだ。切るなら最後まで切る!切らないなら初めから切らない!というのが俺のモットーであるからやるなら最後までなのが………悲しいことに約束を護る最後の手段なのである。もっとも、そんなお馬鹿なことをいうのも好き勝手なのだが………とりあえず、女友達の一人でも作っておかないといずれまたおかしな
「許婚」が現れる可能性がある。あの時は
「これ、俺の部屋の鍵だから………」と言って(ちなみに、俺の部屋には鍵がつけられていない)俺の部屋に入った許婚の背後を取ったのだ。だが、次は両親が本気を出してしまうかもしれん……というわけで、俺による俺のための俺の自由な生活を守るために俺は女の子と仲良くならなくてはいけないのだ!なりふり構っていられねぇ!今日から俺の戦いの始まりなのだ!
さて、どうだったでしょうか?うまく話しが続くような感じになっていたら幸いです。今後はどういった感じにするか一応決めていますが……まぁ、ゆっくりやっていこうと思ってます。短編とはちょっと違っていると思ってください。




