その異世界転移はおかしいだろ
息抜きで書いてみただけの小説っぽい何か第2弾。
えっと、あたしは田原トモカ。
ダイエットが気になるお年頃のOLです。
突然まぶしい光に包まれて、気が付いたらゲームの世界にいました。
ここは、間違い無く見覚えがある世界です。
よくゲームの世界に転移する話は小説で読みました。
VRMOとか、乙女ゲーとか、いろんなゲームがありますよね?
「HEYレディー!オレとWithダンシング!リズムを刻めYo!」
なんでダンスゲーの世界なんだYo!
踊り狂うパイナップル。
流れるご機嫌なリズム。
あちこちから出てくるステップマーク。
違うよ!あたしの知ってる転移のお話って、そういうのじゃないから!!
もっとこう……あるでしょ?
勇者として召喚されるとか、逆ハーのヒロインとか、悪役令嬢はちょっと嫌だけどさ。
それに、そこの踊ってるパイナップル。
あんた、彼女の設定のキャラ居たでしょ?その人と踊ったら?
「あいつとは、婚約破棄になったYo!」
そんなところで流行りのキーワードいらないから!
っていうかお前、あのキャラと婚約してたのかYo!
ミラーボールが、くるくる回る。
あいつに釣られて、あたしも回る。
回りすぎて、あたしの目も回る。
「ここからが熱いBeatだZe!!」
ステップマークが四方八方から押し寄せてくる。
そして、流れ出すハードトランス。
やばいよ、あたしが越したことのない曲だ。
最難関ともいわれる曲で、クリアできるものは一握りと言われる。
「こいつを越せなきゃ世界が滅ぶYo!!」
さらっと恐ろしいことを言うパイナップル。
やるしか……ないのか……。
ステップステップ、タン、タン、タン
ステップステップ、タン、タン、タン
ワン、トゥ、ワン、トゥ
ワン、トゥ、スリー、フォー、さん、にー、さん、し
順調にグレートを重ねるあたし達。
ここまでは良いんだ。
ここまではあたしも経験済みだ。
問題は、この先にある、変調――――
「きたZe……ここからのBeatは地獄Da……」
弱気になるパイナッポー。
自慢のヘタも下がり気味。
せまるステップマーク。
曲はさっきよりスローテンポになったのに、なぜかステップマークの速度は上がるし、リズムゲーなのにリズム取れないよね?
それはまぁ良いとするよ?でもさぁ……
なんで6ヶ所同時踏みとかあるんだよぉぉぉ!!
良く考えて作れよ!足は2本しかないんですよ!?
くそぅ、もう意味がわかんなくなってきた。
何であたしこんなゲームの世界に転移しちゃったんだろう。
「ボブ!」
突然パイナポーの本名を呼ぶ女性の声。
「お前は……キャサリン!?」
たいして略せてないよね?
「私が間違っていたわ、ボブ!やり直しましょう!」
「だが俺はお前を捨てた……」
「もう、怒っていないわ」
何か始まってしまった。
同時踏みがどんどんせまる。
「キャッシィ……俺が悪かったYo……」
なんだこれ、なんだこれ。
その瞬間、目の前に光が広がる。
パイナポーとキャッシィは、そのまま天へと上がっていく。
「お前の熱いBeat……忘れないZe……」
「あなたはあなたの幸せを掴んで……」
よくわかんないんですけど、成仏するの?お前ら。
あと、光眩しいんですけど。
良い感じに締めようとしてるけど、意味がわからないYo!
どうすんのよこれ!
もうあたしのステップじゃ限界なんだけど!
あと、リア充爆発してしまえ!
あ、もう成仏したんだっけ?
目の前に広がるBADの嵐。
神様、あたしはこんな世界よりももっと華やかで落ち着いたゲームに転移したかったです。
そして、イケメンをたくさん侍らせたかったです。
もう駄目だ、世界は滅んでしまう!
ごめんよみんな……がんばったけど、あたしじゃ駄目だったYo……
ジリリリと目覚ましが聞こえる。
あれ?世界は?パイナップルは?
テレビのモニターを見ると、パイナップルとキャサリンがデモプレイで優雅に踊っていた。
あれ?夢だったの?
そういえば、ダイエットしたくてこのゲーム久しぶりにやってたんだっけ。
疲れてそのまま寝ちゃってたんだね、あたし。
ボロボロのマットだけど、小さい頃よくお父さんと遊んでた。
お父さんはこのゲームのことよくわかってなかったけど、あたしに合わせて一緒に遊んでくれていたんだった。
懐かしいなぁ……。
そういえば、今日はお父さんの命日だ。忘れてたわけじゃないよ?
ちゃんとカレンダーにも印しつけてあるし。
でも、まぁ……お墓参り行かないとね。
それにしても、変な夢だったなー。
次は乙女ゲーでもしながら寝ることにしよう。
そして、逆ハーのチートでウハウハになるんだ。
あたしはそう誓って、実家へと向かうのだった。