第98話
そして、2次会。席は決まってなくてみんなバラバラに座ったのだけど、私はりっちゃんと來未ちゃんに引っ張られて隅っこに。
「で、久重先輩と何があったの?」
そう言えばそんな話、試験前にしてたなぁ、なんて遠い目をしてしまう。逃がさないとばかりに単刀直入に言われてしまうと、視線を泳がせるくらいしか逃げるすべがない。
「その…話すと長くなるからまた今度…」
「試験終わったら話すって言ってたのに」
ぼそっと來未ちゃんが呟く。うっ、と、フライドポテトが喉に詰まる。
「で、でも…ほら、今日は新歓だから、1年生の相手を…」
「だって1年生はもうみんな相手してる人がいるじゃん。1年同士の仲も良さそうだし」
りっちゃんが顎で示した先には、1年生だけで固まって話してるテーブルがある。1年生と2年以上が混ざってるテーブルもあるけど、1年生の数に比べて2年以上の数が多い以上、私達みたいに学年だけで固まってしまっても仕方ない。
つまり、逃げる言い訳が見つからない。
視線を泳がせ続ける私に、來未ちゃんが口を開いた。
「で、久重先輩に何て言われたの? 告白まがいの」
「……よく、覚えてますね…」
「ほらほら吐いてしまいなさいよ。じゃないと久重先輩に聞かなきゃいけないじゃん」
「ちょっ、それはやめて! っていうか先輩に聞くの!?」
「ミツのことは散々分かりきってるから聞きやすいんだよねー」
りっちゃんは頬杖をついて梅酒を飲む。その表情と口調には妙なすごみがあった。
…水族館で、言われたこと。
「…その、凪砂くんと付き合ってるの、とか…」
「ほう」
「そもそも何で名前で呼んでるの、とか…」
「そう言えば! それ何で?」
「中学のとき名前で呼んでたから…その延長で。あとは、たまたま凪砂くんがうちに入るのを見られてたりとか…」
「それ何してたのアンタ」
りっちゃんが冷ややかな目を私に向けた。慌てて手を顔の前でパタパタ振る。
「あ、あの、みんなで宅飲みする予定の日で! 凪砂くんだけ遅れて1人で来たのを偶々先輩が勘違いしただけ、」
「ふぅん…」
釈然としていない表情をされるけど、凪砂くんの話を説明すると長くなる。大体、人に言われないために延々凪砂くんの我儘に付き合わされてたのに。私の3ヶ月の努力が無駄になる。




