第95話
だいぶ盛り上がってきてから各テーブルに自己紹介のマイクが回り、1年生と部長副部長の挨拶が終わったころには宴会も終盤。
最初の座席配置に関係なくみんなバラバラになっていた。いまテーブルにいるのは、私と栄美ちゃんと伊勢先輩と宏林先輩と自家先輩。
その話題を出したのは宏林先輩だった。
「キャンパス出る時、深里ちゃんと一緒に歩いてたの誰?」
「え? 四ツ橋くんじゃなくてですか?」
「違う違う、背が高くて日焼けしてる方!」
すっとぼけてみたけど、まさか宏林先輩にまで見られていたとは。栄美ちゃんが頷いた。
「そうです、私それで聞きたかったんです! 元カレがどうとか聞こえたんで」
「えっ付き合ってたの!?」
「伊勢先輩声大きいです!! しかも付き合ってないですよ!」
吃驚して大きな声を出した伊勢先輩に、慌てて人差し指を唇に当てた。伊勢先輩は「えー」と不満そうな顔をする。
「でもかなーり仲良さげだったじゃん? ほっぺつねったり」
「あれは中学生のときよくされてたんで…」
「あとは元カレ疑惑」
「それは別の人でして…」
凪砂くんが絡んでくると話がごちゃごちゃになる。あぁもうっと頭を抱えながら、とりあえず先輩達に弁解した。
「確かに私、中学のとき彼氏いましたけど! それは来るとき話してた人とは別の人で、というか高校から違ったんで結構長い間連絡も取ってないんです!」
「そーなの? まぁ現状元カレと仲良しじゃないなら別に…」
「ちょっと伊勢」
宏林先輩が伊勢先輩の脇腹を肘で小突いた。どういう意味だろう、と目を瞬くと、伊勢先輩は溜息をついた。
「なんか面倒くさいからぶっちゃけ聞くけどさー、久重とどこまでいったの?」
「………はい?」
ひくひくっと、頬がひきつるのを感じた。自家先輩、セクハラですよと宏林先輩が顔をしかめる。栄美ちゃんは驚いて私を見た。
「えっ…やっぱり付き合ってらっしゃるんですか!?」
「違うの違うの! 伊勢先輩、どういう意味ですかそれ…」
「隠さないでいいじゃん。だってお前ら、いつくっつくのかなーってみんなで言ってんのに」
…え。




