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イーブン・イフ  作者: 裏柳 白青
6. Rail Way
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第94話

 さっぱり思い当たらない理由を考えながら、綿貫先輩に変わって立ち上がった真木先輩に視線を注ぐ。その手にはウーロン茶の入ったグラスがあった。


「──では、みなさんグラスを手にお持ちください。かんぱーい!」


 かんぱーい、と唱和の声が上がった。テーブルで久重先輩達3人とグラスを合わせた上で、隣のテーブルにいるりっちゃんにも手を伸ばしてグラスを合わせる。


「さっき、そっちのテーブル空気凍ってなかった?」

「あー、うん…何でか分からないけど…また終わったら話すわ」


 こそっと尋ねたりっちゃんに返事をし、ビールを一口だけ飲んだ。アルコールの味がする。あんまり無理しないほうがいいかも。


 とりあえず自己紹介しとくか、と永沢先輩が言った。


「4年の永沢です。最近あんまり勉強会に顔出してないけど、まぁよろしく。初対面なのは俺だけ?」

「そっすね。俺もミツも、見学ん時話しましたし」

「お前、話したことがあって楽な相手を選んだな」

「んなことないっすよ」


 軽く笑って流した久重先輩は私を示した。


「ミツがこの子と仲良さそうだったからっすよ。だからまぁ、ミツいるなら緊張せんかな思って」

「先にミツ突っ込んだの?」

「しゃーないんですよ、男女比的に」


 先輩の言葉にギクリとしたけど、久重先輩は何でもないように言った。つまり、他意はない、と。


「あ、すいません、私まだ自己紹介してないですけど…」

「あ、そうだ、ごめん。何チャン?」

「渕上栄美です! よろしくお願いします」


 ぺこっと頭を下げる栄美ちゃん。拍子にサラサラした艶のある黒髪が揺れた。


「栄美ちゃんね。よし、覚えた」

「んなこと言って、先輩すぐ忘れるじゃないっすか」

「はぁ? んなことないだろ。なぁミツ」

「そうですね、私は一回で覚えてもらった気が…」


 久重先輩の指摘に心外だとばかりに顔をしかめてみせる永沢先輩。しかし、私の賛成を得られなかった久重先輩が、今度は顔をしかめた。


「え? 俺結構何回も聞かれた記憶ありますよ?」

「えー? 多分お前が男だからかな?」

「男女差別! 14条違反っすよ!」

「おーおー、じゃあ私人間効から言ってみろよ」


 憲法のネタに走る先輩2人。まだ憲法の勉強を始めたばかりの私と、まだそもそも入学したばかりの栄美ちゃんは何の話か分からずに、顔を見合わせる。


「えーっと…栄美ちゃんって将来弁護士とか目指してるの?」

「いえ、まだそこまで考えてないんですけどー…法律には興味あったんで、勉強はしっかりしとこうかと思いまして」

「そっかぁ。2人とも賢い先輩だから、今後勉強会で頼りにしていくといいよ」

「おいミツ、やめいや。大体、本来教えるのお前やぞ」

「ミツも偉くなったなぁ。まぁ、俺は新也がミツに勉強教えてるのも不思議な気がするけど」

「そんなもんじゃないっすか? 俺もミツが下に教えるの変な気分っすよ」


 勉強といい仕事といい…。先輩ずっとそれ言ってますね、と相槌を打ってから、栄美ちゃんも話に巻き込んで、4人で会話が回っていく。何で久重先輩と私の席が一緒なんだろうとは思いつつ、ただ盛り上がってるからいいか、とだけ思っていた。


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