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イーブン・イフ  作者: 裏柳 白青
6. Rail Way
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第92話

 ──新歓の居酒屋に着くと、宏林先輩が先に来た3年生を仕切っていた。手には座席表らしき髪を持っていて、私と四ツ橋くんに気付くと顔を上げる。


「あ、お疲れ様。えーと、四ツ橋くんは左の一番奥。深里ちゃんはその手前のテーブルね。この紙あげるから、1年生上手く誘導して」

「はーい」


 四ツ橋くんと2人で座席表のコピーを受け取って、入り口の両脇に立って1年生の名前を聞きながら座席の場所を見せながら誘導する。まだろくに顔も名前も分からない子だらけ。といっても、四ツ橋くんと2人で分担すれば5人ずつの誘導で済むのだけど。


「ミツ、お疲れ」

「自家先輩! 今日はよろしくお願いします。先輩は右手の一番奥です」

「はいはーい」

「おうミツ、先輩面しとるやん」

「面じゃないです先輩です! 久重先輩は、」


 笑いながら現れた久重先輩に、一瞬心臓がドキリとした。来る前の四ツ橋くんとの会話が頭にひっかかってしまって。けれど、そうも言ってられない。


「私と同じテーブルです! 真ん中のテーブル、手前から2番目ですね」

「了解、俺が滑ったらフォロー頼むわ」


 言い返す前に、その冗談めいた言葉を残して久重先輩はすっと中に入って行った。四ツ橋くんの視線がこっちを向いてるけど、変にからかわれる前に気にしないで次の先輩達の対応。先輩方が入りきってしまえば、最後が2年生。


「ミツ、おつかれさまー」

「りっちゃん! りっちゃんは一番奥ね。先輩方の隣」

「うわぁ…緊張しそう」


 先輩と仲良いりっちゃんは笑ってる。來未ちゃんの席も案内して、全員の案内を終えてから私と四ツ橋くんも席に着く。私の隣に栄美ちゃん、その前に久重先輩、その隣には4年の永沢先輩。4人で1組のテーブルに、私達は男女2人ずつ。永沢先輩が「お疲れ様」と声をかけてくれた。


「ありがとうございます、」

「自分が3年のときの1年が仕事してるってすっげー不思議な気分だわ―。なぁ新也」

「そっすねー。特にミツなんて俺ん中じゃ1年のイメージしかないんで」

「だから意地悪言わないでくださいよ」


 回ってきた宏林先輩が久重先輩にビール瓶を渡し、久重先輩が永沢先輩のグラスにつぐ。


「久重先輩、私いれますよ」

「あ、ありがとう」


 久重先輩のグラスには、私が注ぐ。


「栄美ちゃん、ビール飲める?」

「あ、すいません、できればウーロン茶とか…」

「あ、じゃあ向こうのテーブルから貰ってくるね」

「ミツはビール?」

「そうします!」


 張り切って答えた後、はっと気づく。隣の栄美ちゃんはウーロン茶飲んでるのに、私はビールを飲む、この、可愛げのなさ。


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