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イーブン・イフ  作者: 裏柳 白青
1. Re Start
9/108

第9話

 ──久重先輩にバレたら、どうしよう。


 ご飯を食べて満足した桐生くんが、ニュースを見終わって、じゃーな、と帰って行った後、ぼんやりとソファに座り込んで考える。


 彼氏でもない人とそういうことをする女だって軽蔑されるだろうか。その時は、桐生くんに頼んで隠れて付き合ってたことにしてもらおうか。


 でも、そもそも私が久重先輩を好きなのはどうなるんだろう。このまま、もし桐生くんにこれをネタに脅されたら。


 昔の桐生君は、こんなことする人じゃなかったのになーと膝に顔を埋める。私が好きになった桐生くんは、誠実だった。誘惑されたからって、付き合ってもない女の子とそんなことはしない。


 …はずだと、思ってた。


「…恋は盲目、か…」


 もしかしたら、その時の私は桐生くんが好きだったから、良いイメージしか持ってなかったのかも。


 桐生君は卒業と同時に転校してしまった。都会に行ってしまったから、都会で変わってしまったのかもしれない。」


 それにしても。


「…凪砂くん、好き、ね…」


 少し顔が熱くなって、髪を耳にかける。


 潜在意識か、当時の夢でも見てたのか。


 凪砂くん、なんて、呼ばないし。


 確かに、今でも、少し心は揺れる。凪砂くんが他の女の子と喋るのは──例えば末武さんとか──ちょっと、気になるし。授業前に話しかけられるのとか、楽しいし。


 でも、でも。好きだったのは昔の話だ。もう4年以上前なんだ。フラれたのが中学の卒業式だから、吹っ切ったのを考えると、厳密には、好きだったのはもう少し最近までだ。


 それでも、違う。今の私が久重先輩を好きなのは私が分かってる。


「…もう、何で、こんなことに…」


 まぁ、桐生くんにもそのうち彼女ができたら──そしたら、私は解放されるだろう。きっとその時は少し寂しいけど、私と桐生くんは恋人になんてなりえないし、お互いその気もないのだから。


 お風呂に入っている時、ふと中学を思い出した。1年生の時は背の低かった桐生くんは、3年になる頃には15cmくらい伸びてて、お前は小さいな、って頭をよく撫でられた。


「…あーあ…」


 あの仕草は今考えても狡いなぁ、と思う。あんなことされるから、好きが募って、あんなことになってしまったのだから。


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