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イーブン・イフ  作者: 裏柳 白青
5. Alter Ation
84/108

第84話

 お店を出た後、凪砂くんは私の傘も持って歩き出した。アルコールにぼーっと浮かされた頭で、その後ろ姿についていく。雨上がりの匂いが鼻をつき、冷房の涼しさも消え失せた蒸し暑さもあって、いつもなら顔をしかめるところだった。


「お前、飲み過ぎ。ブルドッグ飲んでみたいとか、言い始めて」

「…だって、2杯くらい、ゆっくり飲めば平気かなと思って」

「いつも1杯でやめてたろ。送ってくれるヤツがいないときはやめとけよ」


 足まで赤くなってる、と言われて見下ろすけど、ショーパンから伸びる自分の足の色は、辺りが暗くて判然としなかった。その視界に、凪砂くんの手が割り込んでくる。


「おい、頼むから急に立ち止まんな。気付いたらいなかったとかやめろよ」

「…別に、家まで近いから平気だし」

「近くても攫われたらどーすんだよ」


 凪砂くんの手が私の左腕を掴んだ。ぐっと引っ張られてたたらを踏むと、凪砂くんの胸に飛び込む形になった。ぼふん、と額が胸にぶつかる。


「お前な…」

「ん…」

「ほら、しゃんとしろ。誰かに見られたらどーすんだ」


 2本の傘を腕に引っかけ、凪砂くんは私の肩を掴んで引き離した。改めて腕を掴んで、私を引っ張って歩き出す。


「1人で歩けるわよ…」

「だったら今しがた俺に頭突きしたのはなんだ? わざとか?」

「わざとじゃないし…」

「だーかーらー、危ねぇって言ってんだろ! くそっ、だから空きっ腹に飲むなっつったのに…」


 歩幅も小さく、ゆっくり歩く凪砂くんの隣を小走りで歩く。膝がかくんと曲がって、凪砂くんの腕に思いっきり体重をかけると、頭を叩かれた。


「な、なんで叩くの…」

「重いんだよ馬鹿野郎」

「失礼な…」


 ぶつくさ言ってると、凪砂くんが急に止まった。追い抜きそうになって、腕を掴んでいたせいで後ろに引っ張られて立ち止まる。


 凪砂くんを見ると、珍しい表情をしていた。今にも「やべぇとこ見られた」と口走りそうな表情。


「…どしたの、」

「おーっす凪砂じゃん!!」


 ばっと、腕を引かれた。後ろに隠され、凪砂くんを挟んで前の人達を見る。4人いた。みんな日焼けしてる…から、サッカー部の友達だろうか。


「え!? お前、彼女いたっけ!?」

「馬鹿違──」

「あ、例の中学の同級生?」

「マジ?」

「なんでそんなイチャついてんの?」

「コイツが酔ったから送ってるだけだよ! 大体、コイツ、新也先輩の彼女候補だからな?」


 …なんでそんな説明の仕方するのよ。咄嗟の言い訳にしても酷いセリフに、凪砂くんの後ろで顔を歪めた。そんなに私と付き合ってるって言われるのが嫌なの。


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