表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イーブン・イフ  作者: 裏柳 白青
5. Alter Ation
82/108

第82話



 こんなことをされながら久重先輩の話をするほど、私は図太くなれなかった。


「…凪砂くん、手、大きくなったね」

「あ?」


 すると、凪砂くんは手を引っ込めてしまった。残念な、寂しい気分に襲われながら、カウンターの上に乗った手を見つめる。


「昔はもっと小さかったなって、思って」

「お前の中で最後の俺は中3だろ? 成長盛りなのは高校生もなんだから、そりゃでかくなってるよ」

「あんまり考えたことなかったから、ふと思ったのよ」

「お前も成長してるよ。色々」

「…ねぇ、その色々ってどういう意味? 意味によってはセクハラで訴えるわよ」

「何も言ってねぇじゃん。被害妄想だよ」


 意地悪そうに笑って、凪砂くんは店長さんを呼ぶ。サラダと手羽先とソルティ・ドッグを頼んでた。


「お前、結局晩飯は?」

「なんだかタイミング逃しちゃったし、いいかな」

「ちゃんと食えよ。つか空きっ腹にアルコール入れたら回るぞ」

「いま凪砂くんが頼んだのからちょっと貰うわ」

「つか、お前さぁ。忘れてるみたいだけど、俺のLIMEブロックしてた話はどうなったわけ?」


 飲んでいたカシオレを思いっきり吹き出しそうになった。慌てて飲み込むと、期間に入ってしまった結局咳き込む。


 苦しげに咳を繰り返す私の前に、店長さんから凪砂くんに出されたソルティ・ドッグが流れてくる。その手に乗るかとばかりに凪砂くんにそれを押し返した。


「あのねぇっ、お水でしょ、そこは!」

「またお持ち帰りするチャンスかなと思ってさ」

「もう二度とお持ち帰りされないから」


 何度か咳をして、漸く収まる。凪砂くんが頬杖をついてじっと見ているところからすると、やっぱりLIMEのことは誤魔化しきれないらしい。


 けれど──冷静になってみれば、私は悪いことをしてない。


「…あのさぁ」

「言い訳、思いついた?」

「確かにLIMEブロックしたのは悪かったけど…凪砂くんも悪くない? 人の傷を抉るようなデリカシーないこと言って…」

「お前、俺のこともう好きじゃないんだろ? なら傷を抉るも何もなくね」

「何その理屈!? 信じられない…悪びれるどころか更にそういうこと言う!?」


 開いた口が塞がらないとはこのこと。凪砂くんは本当に、何が悪いのか分からないといった体で肩を竦めて見せた。


「なに、俺のことサイテーって思ったからブロックしたわけ?」

「…そうよ」


 本当は──あのとき、凪砂くんのことをまだ好きなんだと気付いて、だけど久重先輩を好きなままでいたくて、凪砂くんとの関わりを極力断とうとしたから、なのだけれど。そんなこと、言えない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ