表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イーブン・イフ  作者: 裏柳 白青
5. Alter Ation
78/108

第78話

「またそれ? 凪砂くん、本ッ当に夕飯作りしないの? いい加減凪砂くんがうちにいるのには飽き飽きなのよ」


 何かを期待してた分──何かは分からないけどともかく──なんだかがっくりして、思わず適当に返してしまった。気分としては、好きな男の子に興奮ゆえ「大嫌い」と言ってしまったかのような。


 はっと気づいたけれど、凪砂くんは無言。


「あ、別に、凪砂くんのことがき、嫌いなわけじゃ…」

「──お前、新也先輩のこと、何で好きなの?」


 いつかも聞かれた質問。文脈もなく出てきたそのセリフに、さっきの(恐らく)失言のせいで誤魔化す気は起きなかった。


「な、なんでって…優しいし…、」

「優しい奴ならいくらでもいるじゃん」

「…それはそうだけどさ…」


 もごもごと口ごもる。凪砂くんはじっと私の横顔を見つめた。


「ずっと優しくされてりゃ、好きになんの?」

「…だからそういうのじゃなくて…」

「新也先輩の特別ってなに?」


 久重先輩の特別…久重先輩に、特別だったこと。


「…優しいところ」

「なに、それ。お前、馬鹿なの?」


 同じこと繰り返しやがってオウムかよ、と凪砂くんは不機嫌そうな馬鹿にしたような笑いを零した。そして、私のスマホが振動してひっしーの連絡先が送られてくる。「ありがと」と口にした後で、溜息をついた。


 私が久重先輩を好きな理由は、優しいから。その理由は、きっと馬鹿じゃない。優しい人が好きだとか、そういうのじゃなくて。


「…去年の夏前なんだけど、」

「うん?」

「…誘拐っていうか、監禁っていうか…そんなことされたのよ」

「は?」


 凪砂くんが珍しい声を発した。当然のことながら予想できてないというか、想定外というか、私の口からそんな言葉が出てくるとは思ってなかったみたいで。でも当然よね、とちょっと苦笑した。


「もう去年の話だから、そんなに気にしてないんだけどね。高校生だったなぁ、ヤンキーの男子高校生たちにちょっと変な絡まれ方されちゃって」


 そう、まだ大学生になって間もない頃。まだ実家から通ってた頃で、大学と実家の間の駅にあるファミレスでバイトしてた。そのバイトに行く途中だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ