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イーブン・イフ  作者: 裏柳 白青
5. Alter Ation
76/108

第76話

 っていうかなんでこんなに根掘り葉掘り聞きたがるのかしら、と、とりあえずドリンクメニューを見ながら返事をする。


「何も」

「完全に出来レース走ってるくせに、何やってんの?」

「その出来レースに誰かさんが割り込んできたからでしょ!」


 馬鹿にするような言い方に、反射的にイライラした声で返した。水族館での告白まがいがあってから、今になって振り返れば、出来レースと言っても、大袈裟じゃなかったんだ。


「すいません、カシオレください」

「飲むの?」

「このくらいなら飲めるし」

「そうじゃなくて。また俺にお持ち帰りされても知らねーぞって言ってんの」

「さすがの私もカシオレでお持ち帰りはされません!」


 肘をついて、カクテルグラスに口をつける凪砂くん。


「何飲んでるの、今日は」

「レイククイーン。飲んだらお持ち帰りされるって覚えとけ」


 要はそこそこ度数のあるお酒ってことね…。


「お前、何で酒飲めないの? 飲めそうなのに」

「そうなのよねー…家族はみんな飲めるのに」


 突然変異よねー、と言いながら出てきたカシオレに手を伸ばす。


「でもいいの、別にお酒が好きなわけじゃないし」

「まぁ多少弱い方が可愛げあるよな。ハニートラップかけらんねぇけど」

「なにそれ、どういう意味?」

「よくあるじゃん。酔っちゃった~って酔ったフリした女に男が騙される場面」


 心配しなくてもお前にはできない、と言われて、カチンとくる。呼び出したくせに、さっきからなんだか当たりが強い。


「…ねぇ、機嫌悪いの?」

「お前が5分で来なかったから」

「絶対そうじゃないでしょ…っていうかその程度、根に持たないでよ…」


 なんだろう…ほとんど1カ月ぶりに話したけど、そんな感じがしない。…あの言葉を、許したわけではないけれど。


「お前、試験勉強進んでんの?」

「まぁ、ぼちぼち」

「試験勉強口実に新也先輩に近付けるだろ。そのくらい上手くやれよ」

「…さっきからなんなの? 私を応援してるつもりなの、その嫌味交じりのセリフで」


 真意が読み取れない凪砂くんに、顔をしかめる。凪砂くんの目はちらっと私を見たけど、すぐに逸らされた。


「別に。お前と新也先輩見てんの、馬鹿馬鹿しいなと思って」

「…どういう意味よ」

「だって、どう考えてもおかしいだろ、現時点で付き合ってないとか」


 くっと、凪砂くんは口角を吊り上げた。


「俺が新也先輩の立場だったら、絶対いけるって確信してるね。新也先輩があんなに構ってるもんだとは思ってなかった」

「…」

「どー見てもその気じゃん。お前だって、告白されたら即ok出してるだろ」

「…まぁ、」

「それをズルズル引っ張って、いまになって漸くデートしたかと思えば、お前が煮え切らない態度取ってるし」


 誰のせいよ。そう言いたかったけれど、言えなかった。凪砂くんとの関係を断ち切れないことだけじゃない、凪砂くんへの初恋を断ち切ってないことが、煮え切らない態度の理由だから。


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