第70話
自家先輩にあらかた質問し終わった後、1年生も特に質問がなくなったみたいで、2年の先輩達と喋ってた。りっちゃんが「私達も行ってみよ」と言うから、1年生が座ってる方に行く。
ちょうど一番近くにいたのが例の美少女で、間近で見るとその肌と髪の綺麗さ、目の可愛さに余計圧倒された。
「う、わぁ…! か、可愛い…!!」
思わず声に出して言った私に、りっちゃんが吹き出す。
「ミツ、いつから男になったの?」
「でもりっちゃん、可愛くて、つい…! ご、ごめんね、あんまりにも可愛いから」
慌てて言い訳する私に、美少女は小首を傾げて微笑んだ。
「そんなに褒めてもらったの初めてです…先輩ですよね? 私、渕上栄美って言います。一応今日は見学なんですけど、入ろうかなって思ってるので、これからよろしくお願いします」
そしてきちっとお辞儀をする。謙虚で礼儀正しくて可愛くて…すごい子が入るんだ、とびっくり。
「こちらこそ! 私、2年の光宗深里です。よろしくね、栄美ちゃん」
「アタシは棚辺律子って言います。よろしく」
「渋谷來未です」
「そっちの2人は?」
順々に自己紹介した後、栄美ちゃんと一緒に来た女子2人の方に向く。
「えっと…熊野真希です」
「園道朋子です。よろしくお願いします」
2人共髪は同じくらいの茶色。長くて緩くパーマが当たってるのが真希ちゃん、ショートボブが朋子ちゃん、と頭の中で名前を反芻させる。3人共髪型がしっかり違うから、覚えやすくて嬉しい。
そんな私達を見ていた久重先輩が、ふっと笑った。
「ミツ、何先輩面してんの」
「先輩面って! 私、先輩ですよ!?」
反射的にいつものように答えてしまった。すごく久しぶりに話した気がするし、多分実際そうなのだけれど──来た時より、普通に喋れた。顔には出さないように、でも内心ほっとする。
「急に来て1年生捕まえて可愛いって言い始めて、何言ってんのって思ったわ」
「可愛いんだから仕方ないじゃないですかっ。先輩だって思うでしょうっ」
「思っても口に出さんわ。セクハラやって言われたくないし」
「私がセクハラ発言したみたいな言い方やめてください! もう、1年生の前でいじめないでくださいよ!」
「俺から言わせてもらえば、君達、1年生の前でイチャつかないでくれたまえ」
伊勢先輩が間に割って入る。はっとして口をつぐみ、慌てて栄美ちゃんたちの方を向いた。
「ご、ごめんね! 久重先輩、いつもあんな感じで後輩の女の子いじめるから気を付けてね!」
「ちょい待てミツ! 俺がいつ後輩の女子いじめてん!」
心外だとばかりに言う久重先輩。くすっと、栄美ちゃんが笑った。
「先輩方、仲良いんですね~。羨ましいです。もしかして付き合ってらっしゃるんですか?」




