第68話
あ、れ…、どうしよう…。
「図星」
來未ちゃんがボソッと呟いた。
「そう言えばミツと久重、仲良いもんなぁ。久重、今日なんか不機嫌そうだったけど」
その言葉を拾って、自家先輩は男の人にしては綺麗な色白の頬に手をついてみせ、ふふっと笑った。誤解されても困るし、慌てて手を横に振る。
「あ、いえ、久重先輩は別に…気にならないです…」
「気になんないの?」
「ならない…ですね…だって、ただの先輩ですし…」
りっちゃんと來未ちゃんがじーっと私を見てくるけど、4年生の先輩にそんな風に思い込まれるのは、困る。
…どうしよう。でも、あの子がまだ入るかどうか分からないからかもしれないし。いくら美少女って言っても、今日しか会わないかもしれないから気にならないだけなのかも。
ふぅん、と自家先輩は僅かに首を傾げた。
「そうなんだ。まぁ、2人とも仲良いわりにはサークル以外で会ってるのも見たことないしなぁ」
「そ、そうなんですよ、本当に勉強会中によく面倒見てもらってるだけで」
水族館の話、伊勢先輩本当に誰にも言ってないみたい。よかった、とほっとしながらぱたぱた手を仰ぐ。りっちゃんも來未ちゃんも何も言わなかった。
ここで「水族館に行ってましたよ」なんてことを言ってしまう空気の読めない2人ではなくて、良かった。
「なんだ、本当に何もないのか。久重もさぁ、いい加減彼女作っていいと思うんだけど」
「ですよねぇ。なんで彼女できないんでしょう」
「あ、そっか、お前らは知らないか」
首を傾げたりっちゃんに、自家先輩はぽんっと手を叩いた。何のことか分からなくて、私達3人は一斉に目を瞬かせた。そんな周知の何かがあったの?




