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イーブン・イフ  作者: 裏柳 白青
4. Re Strain
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第49話

 遅いお昼を食べ終わって、そろそろイルカとアザラシのショーでも、と2人で立ち上がる。すっと、久重先輩が伝票を持った。


「あっ、いいですよ、払います!」

「別にええって」

「なんか悪いですし!」

「気にせんで」


 本当に、気にしなくていいように、久重先輩はさっさとレジに行ってしまう。慌ててバッグを持って追いかけるけど、久重先輩は払わせようとしない。


「私1人しかいないのに申し訳ないですよ」

「1人やからええのに」


 入場料は出させたし、と久重先輩は言って、私が財布を持つ手を押さえた。


「なら、代わりに1個聞いていい?」

「え? なんですか?」


 おつりを受け取って、久重先輩は歩き出すから、慌てて隣に並んだ。


「ミツと凪砂、付き合ってるん?」


 …え?


 どっと、冷や汗が流れた。どういうこと。何でそんなこと急に。っていうか、この間、何もなかったって言ったはずなのに。


 思わずレストランを出たところで立ち止まった私に気づいて、久重先輩は苦笑した。


「答えたくないなら、ええけど」


 まさか、私と凪砂くんの事故を知ってるとか? 凪砂くんが喋るはずはない…し、知ってるはず、ないけど。もしかして、凪砂くんが何かあの時の写真を撮ってて、たまたまそれを見た、とか?


 嫌な想像がどんどん膨らむ。心臓がうるさい。息が詰まりそう。怖い。


「付き合ってないですけど、何で、ですか? 私、何か変なこと言いました?」


 この人に、誤解されたくない。


「いや、別に、めっちゃ仲良かったみたいやし…なんとなく」

「でも、凪砂くんとは確かに仲良かったですけど…あの時も、付き合うなんてなくて、今もそういうことは、」

「ほら、な?」

「え?」

「ミツ、凪砂のこと名前で呼ぶやろ?」


 え?

 あれ、待って。


 いつから?


 ドクンドクンドクンと心臓が酷く激しく動いてる。誤魔化しようのない、自分の言動。



「凪砂くんって、私、言ってました…?」

「着いた辺りから、言っとったやん? 凪砂に女子紹介してあげたら、って話んとき」


 そう、だっけ? もしかして、だから、久重先輩はあのとき、変な顔を?


「名前で呼ぶってことは、付き合ってるんかなぁと、思って」

「ち、違います! それは、その…名前で呼ぶのは、中学のとき、名前しか知らなかったからで!」

「でもいま名字で呼んどるやん? わざわざ呼び方変えたのはなんで?」

「その、名前で呼んでたら、へんに思われるかと思って、」

「へんって、何が?」

「その……」


 告白したって、バレそうで。


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