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イーブン・イフ  作者: 裏柳 白青
4. Re Strain
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第48話

 ぐっと、スマホを握りしめる。どうしよう、無理だ。今日は、久重先輩と普通に接することができない。普通に接するには、昨日の凪砂くんが意識にありすぎる。


「…男扱いしかされないんです、基本的に。だからそういうのじゃ、」

「そう? 女扱いされてると思うけどなぁ」

「どの辺がですか…? あ、先輩、そろそろ戻りましょうよ」


 お昼食べましょう、と時間を見た。久重先輩の表情を見ることができなくて、少し俯く。スマホに凪砂くんからの新しい連絡はない。


「…せやな」


 久重先輩は、そのことをどう思ったのだろう。

 静かな声と、気まずい空気。何で気まずくなるのか、わかんないけど。まだ私、先輩に告白したわけでもないし。知られてるわけでもないし。


 まさか、先輩が私を好きなわけでもないし。


 でも、仮に。仮に、先輩が私を好きだとしても。このタイミングで告白したって、どうにもならない気がする。

 どう考えても、私と凪砂くんとの関係が怪しすぎる。頻繁に連絡が入ってるし、よく話題が出るし…、中学の同級生だし。しかも、実際、“ああいうこと”になったから、問い詰められたら嘘をつくことになる。


 微妙な空気でレストランに戻って、どこまで名前が呼ばれてるか確認して。ぎこちなく、無理矢理話題を捻りだすように新歓とか試験とかの話をしてたら、「ヒサシゲ様~」と呼ばれた。一瞬自分のことって分からなくて、久重先輩が立ち上がってから慌てて立ち上がった。 


 メニューは普通だったけど、運ばれて来たお皿が可愛かった。フォークの先がカニの鋏に見立ててあって、ナイフの柄にもサメの絵が入ってる。


「可愛い…」

「これ、土産にもなってるんか」


 チラッと久重先輩がレジの方を見た。目を凝らすと、目の前にあるフォークとナイフが、スプーンとの3本セットで箱に入ってるのが置いてあった。


「あると可愛いですよね。お皿まで揃えたくなっちゃいますけど」

「模様可愛いなぁ。でも男が持つと、な」

「確かに、久重先輩の家でここのお皿出てきたら可愛いですね」

「マジで? 女子力高いって褒められる?」

「…そうですね!」


 一瞬反応に困った私に、久重先輩は苦笑した。


「冗談。昨日、皿1枚割ってん」

「えっ!? 怪我とか、」

「ん、それは特に」


 大丈夫、と答え、久重先輩は少し視線を泳がせた。


「あの…どうかしましたか?」

「いや…」


 なんだろう。首を傾げてみたけど、久重先輩は何も言わない。


「そう言えばこの間ワタがな、」


 何かを誤魔化すように、久重先輩は綿貫先輩の名前を口にした。その理由は分からなかったけど、先輩相手に問いただすこともできなくて、その話題に乗った。


 けれど、問題はすぐやってきた。


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