第31話
何であの男はこういうことを…! 慌ててロックを解除して、LIMEが見えないようにする。でも絶対、2人とも見てる。
「……今日の飲み会のコース内容確認のLIMEみたい!」
「なんの飲み会?」
來未ちゃんが突っ込んで聞いてきた。それはそうですよね、私と桐生くんの共通点なんて、中学と学部しかない。しかも、学部は來未ちゃんもりっちゃんも同じ。
「…その、なんか、もともと桐生くんの友達が企画した飲み会で…私も詳しくは知らないのよ…ば、馬鹿だよねー、私じゃなくて友達に聞けばいいのに!」
あはははは、と笑って誤魔化す。じっと來未ちゃんもりっちゃんも私を見てる。苦しいかな、この言い訳…。
絶対に訝しんでる來未ちゃんがもう一度口を開こうとしたとき、先生が入って来た。來未ちゃんもりっちゃんも前を向き、私はほっと胸をなでおろす。膝の上にスマホを置いて、桐生くんのLIMEを開いた。
≪だからみんなの前で話しかけないでよ! それからLIMEも!≫
≪不用意に机の上に置くのが悪い≫
≪机の上にあるの見てたんならLIMEしてこないでよ!≫
授業が始まるから、そのままLIMEは閉じた。本当に、もう、信じられない。私にタカってることをバラそうとしてるの? だったら何のために私は夕飯作ってるの!!
はぁ、と溜息をついて授業を受けた後、2限に行く前に來未ちゃんがまた突っ込んできた。
「ねぇ、結局今日って何の飲み会なの?」
「さ、さぁ…親睦会みたいな感じかな…あんまりお互い知らないし」
「あれ、合コン?」
「そうじゃないよ!」
苦しい嘘になってたつもりが、別の方向に進みそうになって、慌てて手を横に振る。桐生くんが絡むとろくなことがない。
ふーん、とりっちゃんと來未ちゃんは顔を見合わせた。
「なーんか、怪しいよね」
「ね」
「な、なにが?」
「ミツ、何か隠してない?」
りっちゃんの鋭い目。ギクッとするけど──まさか、学部飲み会の後、気が付いたら一緒に寝てたなんて、言えない。あんなこと、誰かに知られたくない。相談もできない。
もし、久重先輩にバレたらと思うと──。
「なにもないよ?」
それだけは、嫌だ。
「じゃ、私、次A棟だから…また4限後に」
「ばいばーい」
「じゃねー」
來未ちゃんとりっちゃんと別れた後、2人とは違うクラスで受ける語学に向かう。講義室から出てくる桐生くんが見えたけど無視。その後ろから語学で一緒の迫村くんが見えたから、そっちに声を掛けた。
「迫村くん! おはよー」
「あ、おはー」
教室一緒に行こうよ、と言って、こっちに向かってくる桐生くんを無視。ちらっと私を見るけど、絶対に許さない。




