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イーブン・イフ  作者: 裏柳 白青
3. Dis Advantage
30/108

第30話


 金曜日、雨が酷くて、膝下くらいまで濡れて講義室に辿り着いた。湿気のせいで髪もボサボサで、傘を閉じて席に着いた後、カバンの中からゴムを取り出して結ぶ。毛先が跳ねてたのでそれを誤魔化すためにもお団子状態にした。



「おはよーミツ」

「おはよー。雨酷いねー」

「ほんとに。しかも蒸し暑い!」


 講義室はクーラーきいてていいわぁ、とりっちゃんがパタパタと手で仰ぎながら私の隣にカバンを置いて、その隣に座る。來未ちゃんも逆方向の扉から入って来て、「おはよー」と笑いながら私とりっちゃんの前の机に来た。


「おい」


 と、その時、後ろから声をかけられ、げっと振り向く。「おい」なんて言うのは桐生くんしかいない。

 と、そこにはビッショリ濡れた桐生くんがいた。髪から水が滴ってる。


「ど、どーしたの桐生くん! 傘忘れたわけじゃあるまいし…」


 昨夜から降り続いてる雨だから、忘れようがない。すると、桐生くんは手を出しながら言い訳した。


「傘、穴が開いてたんだよ。妙に濡れると思ったら」

「馬鹿なの…早く拭いたら? それから、その手は?」

「レジュメ、貸して。前回寝てた」

「前回のは私も今から使います! っていうかそんな濡れた手にレジュメ渡すわけないでしょ!」


 何言ってんのコイツ、と、桐生くんを睨みつける。桐生くんはカバンの中からタオルを取り出して手を拭いて、腕とか頭を拭き始めた。


「あー、じゃあ写メらせて。始まるまでに返す」

「もう…」


 カバンの中からレジュメを取り出して渡すと、桐生くんはスマホでそれを写メった。


「あ、今日、雨で部活流れるから」


 それを何で來未ちゃんとりっちゃんの前で言う! 流れるからなんなのか、2人が気にするでしょうが!

 と思いながらも、頭を高速回転させて続ける言葉を考える。2人に聞こえるように誤魔化さないと。


「…なるほど、今日の飲み会は遅れずに行けるってことね!」

「あ?」


 怪訝な顔をした桐生くん。空気読んでよ!


「写メった? はい、返して! 講義始まるから!」

「あぁ…」


 またゴチャゴチャ言い始める前に早くどっか行け、とレジュメを受け取ってしっしっと手を払った。桐生くんがいなくなって、ほっと溜息をつく。


「…ミツ、やっぱ桐生くんと仲良いよね~」

「うん…最近よく話してるね」

「そう…? だんだん朝起きるのが辛くなって、授業聞かなくなっただけなんじゃないかしら…」


 苦しい言い訳だと分かってるから、レジュメを整理するフリをして2人から目を逸らす。來未ちゃんは「ふぅん」と相槌を打った。


「でも実際、仲良いよね」

「そうでもないわ! 2人がいるときにたまたま喋ってるだけだから!」

「…でもLIME来てるよ、ミツ」


 りっちゃんに言われてバッと机の上を見ると、桐生の名前が表示されたLIMEがきてる。


 ≪今日の飯なに?≫


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