第27話
梅雨入りして、雨が降りしきる日々が始まった。私は溜息をつく。
「あーもう、洗濯物が乾かない…」
「だよな。俺も部活の洗い物あるのにめんどくせぇったら」
ソファに座ってる桐生くんがテレビを見ながら相槌を打った。
「じめじめして暑いし、この間春最後の鍋って言ってたのが嘘みたいだよな。あれいつの話だっけ」
「それは5月半ばくらいじゃないっけ…」
「あーそっか、あの日だけ涼しかったからか。鍋片付けてなかったからついでに最後にやるかっていう」
「そうそう。…って、なんでさも当然のようにうちにいるの…?」
私はその様子を何でもないように眺めてたけど、違った。桐生くんがうちに居座るようになって1ヶ月近く経つから違和感がなくなってきたけど、違う。彼はここにいるべき人じゃない。
「雨降ってるから」
「だったらうちに来るのも面倒でしょ…?」
暗にもう来るなと告げるけれど、絶対に気付いておきながら「飯作る方が面倒かな」と返事をする。
「っていうか、桐生くんがいると洗濯物に気を遣わないといけないから嫌なんだけど」
「あ? あー」
桐生くんがリビングに来るせいで、普段はリビングに干されてる洗濯物は寝室行き。服はともかく、下着類を見られてはたまらない。
しかし、桐生くんはちょっと首を傾けるだけ。視線はテレビに注がれたまま。
「別に良くね? もう1回見たし」
その横っ面に、思い切りクッションを押し付けた。軽々とそれを片手で押し返してくるこの男、なんてことを言うのかしら。
「あのねぇ……それは記憶から抹殺してって言ってるでしょ!?」
「いや、無理だろ。普通に。担ぎ込んだから電気付けてたし」
「っだからそういうこと言わないでよ!?」
「お前のせいだろ」
「……もうやめようよ、この話…」
「話振ってきたのお前だろ」
何も言えない。項垂れる私に目も向けず、テレビを見ていた桐生くんが「あ」と言った。




