第26話
「でもそんなに仲良かったんやな」
…しかも、久重先輩に、桐生くんと仲良かったアピールして、どうすんの。
「…いえ、そういうわけでは…」
「実は付き合ってたとか、そういうのないん?」
「ないですよ!!」
ばたばたと手を横に振った。ふーん、と久重先輩は、前を向いたまま真顔で言う。
…なんで、真顔?
「あ、あの、さっきも言いましたけど、本当にそういうことは…」
「え? あぁ、分かってる分かってる。別にそこ隠す必要ないもんなー」
でも、それは一瞬で、こっちを向いたときの久重先輩はまたにこっと笑った。
どういうわけか分からないけれど──まさか本当に久重先輩、私のこと好きとか。
…そんなわけないか。
駅でみんなと別れて、逆方面のりっちゃんとか久重先輩に手を振って、別の子達と下宿に向かう。
そんなわけ、ないない。
帰ってる途中で、バイブに気付いてスマホを見たら、相手は桐生くんだし。明日何か用意しといて、飯、との一言のLIME。本ッ当に何様のつもりよ、と手が震える。
そう。久重先輩が私を好きなのかも、なんてのは妄想だと、現実に引き戻された。
先に、コイツをどうにかしなければ。




