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イーブン・イフ  作者: 裏柳 白青
2. Cut In
22/108

第22話


 火曜日、勉強会。今日の担当は副部長の宏林先輩。深里ちゃん深里ちゃんと可愛がってくれる、背が低くて華奢で、可愛い先輩。


「範囲が重なるって書いてあるけど、これはちょっとややこしい言い方になってるだけなんだよね。処理が一緒になるってだけで、構成としては別の話」


 ふんふん、と説明を聞いて、答案の書き方を習う。みんなの勉強が終わる頃、部長さんが「今日飯行く人~」と声を掛け始めた。


「深里ちゃん、今日は?」

「行きます行きます」

「俺も行く~」

「久重くんには聞いてないでしょ」

「そんなこと言わんでや。ミツは俺がおらんと寂しいやんなー」

「そ、そうですね」

「な!」

「パワハラじゃないの…」


 今日も明るく笑う久重先輩。ぐしゃっと頭を撫でられて、宏林先輩が頬をひきつらせてる。


「み、深里ちゃん…本当に訴えたくなったら言っていいんだよ? 久重くんのセクハラに耐えられないって…」

「あ、いえ、全然…」


 嬉しいんで大丈夫です、なんて言えない。

 久重先輩は私の答案を覗き込んで、ぱっと手に取る。


「ミツ、字綺麗やんなー」

「久重くん…今日は担当じゃないでしょ。そんなに深里ちゃんが好きなの?」

「実は大好きやねん」

「もー、そんな適当なことばっかり言って…深里ちゃんが困ってるでしょ」


 にかっと、冗談なのかなんなのか分からない笑顔で言う久重先輩。宏林先輩のフォローがなかったら、本気で照れてたと思う。すごく、困る。


「でもミツも俺のこと好きやんな」

「えーっと…」

「ほら困ってる。いいんだよ深里ちゃん、正直セクハラに困ってますって言ってやって」

「えー、それ傷つくわー」


 宏林先輩に軽くあしらわれ、久重先輩はどこかに行ってしまった。勉強も教え終わったから、ってことだと思うけど、他の先輩達とわいわい話してる。


「もうごめんねー、深里ちゃん。久重くん、本当にちょっかいかけてばっかりで」

「別に大丈夫ですよー」


 さっさと彼女作ればいいのに、と宏林先輩は毒づく。


「久重くん、顔はいいじゃん?」

「…先輩、中身もいいと思いますけど…」

「そう思うなら深里ちゃん、彼女になってあげなよー。久重くん、サッカーの話しかできないんだよ? あれじゃーだめだよ」


 私サッカーに興味ないもん、と宏林先輩は頬を膨らませた。サッカー以外の話もできるけど、と思うと、私だけみたいで嬉しい。


「ねー、深里ちゃんは彼氏みたいな人いないの? 深里ちゃん可愛いじゃん」

「そんなこと言ってくれるのは先輩だけです…」

「そんなこと言って―、本当はかなりいい感じの男いるんじゃない?」


 宏林先輩にそう言ってからかわれてた、ご飯に行く前。


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