表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イーブン・イフ  作者: 裏柳 白青
2. Cut In
18/108

第18話


「なんだよ」

「……肉割れ…」


 お鍋の具が入ったお椀をテーブルに置く。


「あ? してないんだからいいじゃん、って話だろ」

「………なんで、してないって、知ってるのよ…」


 何かに回されるように、ゆっくりと私の首は回った。

 桐生くんは一瞬訳が分からなそうな顔をしていたけど、なんだそんなことか、と肩を竦めた。


「そりゃ見たし触ったし」


 さっき、お椀をテーブルに置いた私を褒めてあげたいわと、そう思った。

 だって絶対、落としてたと思う。


「み、た…、さわ……?」

「お前、さっきまで自分がしてた話忘れたのかよ。何で俺は晩飯食えるんだろー」

「そ、それは、黙っててもらうため…」

「何を?」

「……………………この話、やめませんか…?」


 ソファの上で正座してしまった。

 桐生くんは「お前が聞きかえしたくせに」と言ってお鍋の具を食べ続ける。


「……ねぇ、桐生くん」

「ん」

「………あの、私は、覚えてないんだけど、その、桐生くんは、はっきりと…?」

「うん」

「………お願い、忘れて…」

「あんなもの見せられて簡単に忘れられるわけないだろ」


 桐生くんのにやにや顔が、始まった気がした。

 俯いてる私からは見えないけれど、多分にやにやしてる。


「お前、もっと足出せば新也先輩誘惑できるんじゃね」

「…そういう話では」

「あとはいつもニット系着てるのももったいないなー。体のライン出せよ」

「……太ってた名残で」

「あー、そうだ、教えといてやるけど、」


 桐生くんはお鍋のスープを少し飲んで、お椀を置いた。


「お前、ここにほくろあるんだ?」


 ふわっと、私の髪を掻き揚げた桐生くんはそのまま耳の下、首に指で触れた。

 お椀で温まった桐生くんの指と、熱い私の首。

 ニヤッと笑った桐生くんの顔と、硬直した私の顔。


 ぐつぐつとお鍋の音がする中で、はっと我に返った。


「な、な…、な…!」


 いつもロングの髪に覆われてる私の首に、ほくろがあるとか。


「なんで、分かるのよ!?」

「見たって言ってんじゃん」

「っ──」


 叫びたくて息を吸い込んだ口が、桐生くんの手で塞がれた。


「ん!」

「近所迷惑だから叫ぶな」


 その手を両手でつかんで外して、バクバクし始めた心臓のあたりを押さえた。

 桐生くんはやっぱりニヤッと笑う。


「先輩にも見てもらえる日がくればいいな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ