第17話
「………桐生くん…ねぇ、あのさ…もし、もしもだよ…」
「あ?」
「……私に彼氏ができたら、この関係って終わるの……?」
恐る恐る聞いてみる。
桐生くんは「いただきます」と言ってえのきを食べていたが、ピタリと止まる。
そして首ごと回して私を見る。
「…お前に彼氏? 何、新也先輩とそこまでいったわけ?」
「違うよ! もしもだって言ってるじゃん!」
「もしもね。有り得ねぇんじゃね? 別にお前モテないし」
私のこめかみに反射に等しい青筋が浮かんだ。
確かに、モテないわよ。
もう大学2年になってしまったというのに、彼氏いないどころか仲良い男子もいないし。いるとしたら桐生くらいだわでも桐生くんにはとっくの昔にフラれてるわ!
そもそも男の子を好きになったことすら桐生くん以外になかったのに、我ながらハードル高い相手だわ。
でもね。
「…じゃあそういう桐生くんはモテるのかしら」
「お前とか」
「それは昔の話でしょ! 私以外の女の子に好きって言われたことがあるのかしらって言ってるのよ!」
ビシッと、箸で桐生くんを指差した。桐生くんは顔をしかめる。
「ないけど」
「ほらみなさい。桐生くんもモテないでしょ」
「あぁそうだな。お前がモテないのと同じで」
「……一言多いわね。そんな性格だからモテないのよ」
「お前は折角痩せたのに、男に媚びることを相変わらず知らねぇな」
「余計なお世話よ」
ふんっとそっぽを向く。
そう、中学当時に比べて、私は痩せた。
ダイエット。
桐生くんを好きになってから暫くして、ダイエットは始めてたのだけど。
結局高校2年くらいまでは中学のぽっちゃり体型を維持、2年から3年にかけて、体重は10kg近く落とした。
中学生の時は150cmの身長にして56kgっていう、すごくヤバい体重だったけど。
それから身長は少し伸びたのに、体重は減った。
だから中学の友達にはすごく変わったって言われる。
「つか、あれから何kg落ちたの?」
「…いまの私は50kgないとだけ答えておくわ」
「中学の頃確実に50kg超えてたろ。すげーなお前」
バシッと、デリカシーのない桐生君の頭を叩いた。
「でもそんだけ落として肉割れとかしねーのな。テレビでよく見るだろ」
「そうねぇ。でも急激に落ちたわけじゃないし、そこまで極端な肥満体型だったわけでもな──…」
少し冷ましたえのきを口に運びながら話してて、はたと気づく。
何か重大なことをスルーした気がするのだけど。




