第16話
「き、きりゅうくぅん…」
「何だその呼び方。気色悪い」
ソファにふんぞりかえって、桐生くんは偉そうに言う。
そう言われても媚びずにはいられない。
「…この関係っていつ終わります?」
「主従関係? んー」
「主従!? 何言ってんの!? 私夕飯以外で桐生くんに従う気ないけど!!」
何て表現するべきかは分からなかったがとりあえず“この関係”と言った私に対し、桐生くんはさらりと告げた。
何言ってるのこの人。
どうりで偉そうだと思ったら。
桐生くんは野菜が良さげと言いながら頭を戻し、菜箸でお肉を取りながらけろりとした顔を向けた。
「え、今は飯だけ要求してるけど。今後何か言ったら、どうせお前、俺に逆らえないんだぜ?」
「ぐっ………」
押し黙る。くそっ、と内心毒づきながら、お鍋の中身をとる準備をする。
震える手でお箸を持ち、白菜をとりながら、桐生くんにひきつった笑みを向けて見せる。
「…あ、あのさ…ちょっとそれせこくない…?」
「何が?」
「その、何個でも言うこときくっていう…」
「別に聞けとは言ってないじゃん? お前が快く了承してくれるよな?って言ってるだけ」
「それ、言うこときけってことよ! ねぇだからさ、あれをネタに揺さぶるのは晩ごはんくらいにしておいてよ…あっお金はないから!!」
「んなことするかよ…なんかそれマジで犯罪臭するじゃん…」
桐生くんもわくわく嬉しそうな顔でおネギなりえのきなりをとっていく。確かに、ダイレクトに金銭をとり始めたら犯罪だ。
「まぁ、そうだなー。今んとこ特に何か聞いてほしいことかー…」
「な、ないよね! わたくしめにできることなんてないわよね!」
「わたくしめ、て。別にまた“して”もいいのよ?」
「いーーーやーーーー!! 桐生くん女の子の体狙うとか最低!! 下衆男!!」
「冗談」
んな拒否るなよ、と桐生くんは私になど興味なさそうに言う。そんなに興味ないなら解放してよ、と思うのだが。




