第15話
──食材を一緒に買って、春最後のお鍋かななんて言いながらIHの電源をつける。部屋着に着替えた桐生くんはテレビをつけた。
「うわー、最近の海外怖っ」
「少しは手伝ってよ、桐生くん」
「んぁー。味見するわ」
「そういうこと言ってんじゃないの。ほら早くお野菜入れて」
「うぃっす」
気怠い目で私が渡した皿を受け取り、お野菜を菜箸で入れていく。お肉の皿も傍に持って来て置いて、ソファに座る。
「──で、結局桐生くん、マネに好きな子でもいるわけ?」
少し胸は痛んだが──優位に立てるのかも、と桐生くんの横顔を見ながら、思った。
桐生くんの眉が寄り、しかし野菜を入れ続ける。
「…お前にそれ関係ある?」
「…ないけど。興味よ」
「あっそ。別に、そういうわけじゃねぇよ」
野菜終わり、と桐生くんは皿と箸を置いた。
ソファに座り、そのせいで体が近くなる。
ドクンと体の奥が反応する。
「…え、ちょっと…」
「あー、明日の試合行きたくねぇなぁ」
「何でよ? スタメンじゃないの?」
桐生くんは何でもないように、普通の声で言う。
私もそれに合わせるように、なるべく冷静な声を装うように絞り出す。
「スタメンだけど。明日、交流戦の後に飲み会あんだよね」
「いやなの?」
「めんどい。まぁ流石私立なだけあってマネ多いし、可愛いのいんだけどね」
結局可愛い顔が好きなんじゃん、と苦笑いしてみせる。
可愛い子が嫌いな男なんていねーよ、と桐生くんは笑った。
「あ、そういうわけで、明日は飯いらねーわ」
「はいはい…なんかもうお母さんになった気分よ…」
ご飯がいる・いらないをLIMEで連絡される度にそう思う。
桐生君、いつまで私にご飯をたかる気だろう。そのうちお弁当作れとか言われないだろうか。
というか、彼女ができたらどうするつもりなんだろう。
ていうか、私に彼氏できたら解放してもらえるの…?




