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イーブン・イフ  作者: 裏柳 白青
2. Cut In
11/108

第11話

 桐生くんとの事件があった次の週の金曜日。私のいるサークルは法律学研究会で、平日週2回法律の勉強をするという、有り得ないほど真面目なサークルだ。法学部だから勉強しようという気があって入ったけど、正直勉強会後に先輩達と食べる夕飯のほうが楽しみ。


 もう1つ、ビーズアクセサリー製作部にも入ってるけど、そっちは水曜日の夕方しか活動に参加しないことに決めてるから、兼ねやすい。


「やほー、ミツ」

「あ、こんにちはー」


 わいわいとみんなで話しているところに、久重先輩はやってきた。ストレートに近い、桐生くんよりは明るい茶色。一重だけど涙袋がくっきりしてる目と、少し笑った口元。身長も180cmくらいあるし、本当に、彼女がいないのが不思議なイケメン。


「今日は部活ないんですね」

「あぁ。明日試合やし、今日したかってんけどなー」


 一応勉強会終わったら体動かすくらいするか、と返ってくる。先輩の試合を見れることを考えると、マネージャーは羨ましい。


「今日俺、ミツとペア?」

「そうです、お願いします」

「んー」


 3年が2年に勉強を教えてくれる、勉強会。各学年の人数に合わせて適当にローテーションでペアが決まる。4年になると任意参加で、来る先輩は3年の教え方に指導を加えたりする。


 久重先輩は、頭が良い。サッカー部だし、見た目はちょっとチャラいイケメンなのに、中身は真面目だし。


「ここの論点なー、判例と学説がずれてんねん。判例やと──」


 久重先輩の説明は分かりやすいから、久重先輩を意識するしないは関係なくきちんと頭に入ってくる。1年の時にまぁまぁの成績を収められたのも、久重先輩のお陰だろう。


 2時間の勉強会が終わって、久重先輩に「ありがとうございました」と言う。本当ならこの後、大体はみんなとご飯を食べに行くのだけれど。今日、桐生くんと夕飯を食べる約束をしてしまった。


 本当にずっとこのままだったらどうしよう…、と溜息をついて、帰る支度をしていると、久重先輩がきょとんとした顔をした。


「ミツ、飯食わへんの?」

「あ、はい。今日はちょっと用事があるんで帰ります」

「じゃあ途中まで一緒行こ。俺、部室行くわ」

「はい!」

「おい新也、後輩ナンパしてんなよ」


 私と久重先輩の会話を聞いた伊勢先輩がからかう。久重先輩にナンパされたら喜んで付いて行く。


 久重先輩はへらへらっと笑いながら私の頬をつまんだ。


「え、ナンパしたらあかんの? ミツ、彼氏おらへんやん」

「へんふぁい、ほっへのふぃふぁふ(せんぱい、ほっぺのびます)!」

「セクハラやセクハラ」


 冗談交じりで笑う先輩達につれられて笑い、頬を放されてからカバンを肩にかけ、久重先輩に付いて行く。


「お疲れ様でしたー」

「お疲れ様ー」

「深里ちゃん、久重くんにセクハラされたら言っていいからね!」

「あはは、大丈夫ですー」


 副部長の宏林(ひろばやし)先輩に言われて、笑って返事をする。どうせ久重先輩は本気ではない。


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