第101話
「だからミツ、今から手を打ちさえすればいいよ」
「手を打つって?」
「栄美ちゃん、腹黒そうだった?」
「はい?」
唐突に変わった話題に目を点にする。
「そんな感じは…しなかった、けど…」
1次会で帰ってしまったから、いま見渡したところでその判断はできないし。
「ミツが久重先輩を好きじゃなくなったなら、逆にあの子が腹黒だったらやりやすいの」
「く、來未ちゃん…」
「絶対に久重先輩を狙っていくと思うから、栄美ちゃんと久重先輩を入れたメンバーで花火に行けばいい。春香さん事件を聞く限り、久重先輩がそういう女の子を無下にできるとも思えないし」
つまり久重先輩の優しさも含めて利用すると。
「もし久重先輩に何か誘われたら、みんなで行くことにすればいい。その“みんな”に栄美ちゃんを入れれば、久重先輩に告白されるような機会をみすみすあの子が作るとは思えない」
「みすみすって…もう栄美ちゃんが腹黒なの確定…?」
「出会って僅かな後輩の悪口を言いたいわけじゃないけど、頭の回る子だとは思う。それが悪いとは言ってないし」
確かにそうだけども。
「それに、栄美ちゃんが久重先輩狙いなら、栄美ちゃんにとっても悪い話じゃないはずだし。腹黒なら余計にね」
そんなことを考えている來未ちゃんのほうが腹黒だと思うとは、言えなかった。
そして、2次会終了後。お疲れ様でしたー、とみんなで声をかけあって、私と來未ちゃんが帰路につく。來未ちゃんはスマホを取り出しながら、「あ」と声を発した。
「ごめんミツ、迎えが来る…」
「あ、彼氏?」
2次会で、りっちゃんがトイレから戻って来てからは來未ちゃんの彼氏の話を聞いていた。試験前に唐突に言われてそれっきりだったから、りっちゃんも食いついて。お蔭で私と久重先輩の話をせずに済んだから、助かった。
そして、2次会では一言も久重先輩と話さないまま。




