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ギレイの旅  作者: 千夜
2章
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ミサイル?

 儀礼と獅子は王都を出て歩いていた。

 王都で車を走らせるには許可が必要と言われたので、そう何日もいる予定でもなかったため、町の外に車を置いていた。

 王都の中で一度拓と会ったが、特に問題も無く利香を連れて帰ってくれたので、今回は平和だったと言えるだろう。

「はぁ、さすが王都。読み応えあったな」

「図書館荒らしが何か言いやがった」

 ああ、獅子の気配が怖い。


 まもなく車を止めた林に着くというところで、背後から聞き覚えのある声がした。

「おいっ! 儀礼!」

 振り返れば帰ったはずの拓と利香。

「あれ! お前のじゃないだろうな!」

 拓が鞘に入ったままの剣を儀礼に向かって投げつける。

 真っ直ぐに儀礼の顔に向かうそれを、当たる直前で獅子が掴む。

「あれって?」

 目の前にある剣にぎこちなくなりながら、儀礼が拓に問い返す。

「あれだよっ」

 拓は遠い空を指差す。

 そこには煙のようなものを上げながら飛ぶ見たことのない機械の様なもの。

 それの向かう先には王都ほどではないが大きな町がある。

「違うよ、ちょっと護衛機借りるよ」

 言って儀礼は利香の護衛機を操り機械の群れに向かわせる。


 体当たりするように攻撃してきたそれにマシンガンのような攻撃を返し破壊する。

 上空で大きな爆発が起こった。

「お前、利香の物にどんな装備つけてんだよ……」

「いざという時のために。利香ちゃん守るためだし……。今の爆発は相手の物だよ。飛んでるのは爆弾みたいだ」

 真剣な顔で遠い空を睨みつける儀礼。

「お前のじゃないんだな?」

「あれは僕のと作りがだいぶ違う。たぶんだけど、一つ一つを魔法使いかなんかが意識を乗せて操ってるんだと思う」

 少し自信なさそうに儀礼は言う。ドルエドで育った者は魔法についての知識が乏しい。

「どうにかなんのか?」

 拓が聞く。

「やってみるよ」

 護衛機を操り、少しずつ儀礼たちの方へ誘き寄せる。

 すると、相手も儀礼たちの存在に気付いたようで、幾人もの気配が近付いてきた。

「こっちは任せろ」

 拓に剣を返すと獅子は自分の剣を抜く。

「利香、儀礼の側にいろ」

 利香にそう言うと、拓も剣を抜き、周りを取り巻く敵と戦闘を開始した。


 予想もしていなかった時に大勢の敵と戦うことになったので状況はあまりよくない。

 拓と獅子は次々と敵を倒しているが、想像以上に敵の数が多かった。

 こいつら、戦争でもするつもりだったのだろうか。

 儀礼の側へとやってきた利香。

 儀礼は手袋のキーで利香の護衛機を操り、遠くから飛んでくるミサイルみたいな物を打ち落とす。

 そのたびに大きな爆発が起こる。

 自在に飛んでいるようなそれは狙いを定めるのが難しい。しかし、連携などは感じられない。

 一機、一機が別の意識体でそれぞれの感覚に頼って飛んでいるようだ。

「あれが複数を一人で操る魔法だったら怖いけど、一つだけなら大したことないな」


 儀礼は護衛機を敵から引き離すと、手袋のキー操作し、車から小型のミサイルを発射する。

 小さいけれど追尾形のそれは逃げ回る空飛ぶ爆弾に狙いを定め追い回す。

 すぐに上空で複数の爆発が起こった。

 意識を乗せていたのなら、相手の魔法使いはしばらく動けないだろう。


 空にもう敵は無い。

 地上の敵も残り僅か。

 儀礼は改造銃を取り出すと狙いを定める。

 ダン、ダン、ダン

 連続した硬い音と共に麻酔弾が発射され、バタバタと当たった者が倒れていく。

 まだ余裕のある獅子とさすがに疲れてきた様子の拓。


 戦わない利香を見て逃げるための人質にでもしようとしたのか、近付いてくる男。

 それに護衛機が弾を撃つ。足を打ちぬかれた男はその場に倒れうめき声を上げる。

 騒ぐ声がうるさいので儀礼は麻酔弾で男を撃ち眠らせる。

 間もなく、あたりに静寂が戻った。


「この始末どうしよっか」

 儀礼は大人数が倒れる様を見て、遠い空を眺める。

「しょうがねぇな、あの狙われてた町の領主とは知り合いだからうまく話しつけてやるよ。恩をたっぷり着せてな」

 楽しそうに拓は笑っている。

「じゃぁ、僕の名前は伏せて、獅子の手柄にしてよ。獅子の名が売れるほど剣を狙う奴も減るだろ」

 こそりと言った儀礼の提案に不満はないようで拓はにやりと笑い返した。

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