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ギレイの旅  作者: 千夜
2章
53/561

アーデス来る

 ”まずい。まずいぞ、ギレイ!!”

 突然、アナザーからの焦ったメッセージ。

 ”何? どうしたの?”

 アナザーがこんなに焦るなんて、珍しい。

 ”大物が動き出した。今、お前の情報にアクセスした奴がいて、探ったら、アーデスって奴だった”

 ”アーデス?”

 ”管理局、冒険者ともにランクA。もっともSランクに近いと言われてた男だ。ま、その前にギレイがSランクになっちまったんだけどな。最年少でなるかもって言われてた。”


 最もSランクに近い。最年少。

 ”……それって、僕、恨まれてる?”

 相手の得るはずだった栄光を全て奪ったことになる。

 ”かもな。正直俺も相手にしたくない奴だ。言ってみればAAランクだな。”

 ”AAランク……。僕と違って本物ってことだよね。”

 ”いや、お前も本物だろ。”

 呆れたような穴兎。


 ”アクセス元はフェードだ。昨日、アーデスの名でキュールの遺跡が完全攻略されてる。”

「”キュールが!!!”」

 文字を打ち込みながら、儀礼は思わず叫んだ。

 ”マップ見たいっ!”

 ”お前、それどころじゃないって話してんのに……。送っといてやるよ。とにかくだ、おそらくアーデスって奴がお前に会いに行くはずだ。パーティーに転移魔法の使える奴がいる。なるべく一人になるな、黒獅子といろよ。”

 ”それは……難しいな。獅子は今朝から仕事で別行動なんだ。”

 まるで、仕組まれたように、突然獅子に舞い込んだ仕事。

 ”来るな。注意しろよ。氏はない、『双璧』のアーデスだ。悪いが俺も追跡がかかった。切るぞ。”

 プツリとモニターの文字が途絶えた。


 儀礼は車の上にいた。

 どこにいてもAAランクの人などまともに相手にできない。

 なら、せめて周りに迷惑がかからないように、人気のない場所へと移動したのだ。

 それに、人がいなければ多少無理な兵器が使える。


 儀礼は真っ青に晴れた空を仰いだ。

「ギレイ・マドイ様、ですね」

 気配も足音もなく、その男はやってきた。

 儀礼の額を冷や汗が伝う。

「アーデスさん、ですよね」

 努めて冷静に儀礼は振り返る。

 使い込まれた鎧、装飾も美しい名のあるであろう剣。兜はなく、緑色の瞳が儀礼を捉える。

「存じていただけたとは、光栄です」

 丁寧な口調、落ち着いた物腰。

 儀礼の頭の中に疑問が浮かぶ。


「思っていたのと違っていたので、少し驚きました」

 意外そうな顔で儀礼は素直に言う。

 お互いに相手を探り合っているような短い沈黙。緊張から手の中が汗ですべる。

「もっと冒険者らしい男を想像してましたか? よく言われるんですよ」

 アーデスが笑みを浮かべる。油断のない仮面のような笑顔。

「そうじゃなくて……」

 儀礼は少しばつの悪い、困ったような顔をする。

「うらまれたり、怒ったりしてると思ってたんで」

 それならば、こんな接近を許す前に儀礼は気付けた。そのために準備をしていたのに。

(最初の挨拶を真に受けたと言うことだろうか。やはり子供か)

 アーデスの目が鋭くなる。

 それでも、儀礼に怒りは向かない。それが、儀礼には不思議でならない。

「何しに来たのか聞いていいですか?」

「あなたの持つ情報、全て渡していただきたい」

 真剣な顔で言い、戦闘態勢に入ったアーデス。

 獅子と比較しても格段に上回る闘気。圧倒的なプレッシャー。

 儀礼に緊張が増す。


 公開されている情報では、儀礼が使うのは麻酔薬、痺れ薬、霧状に拡散する装置。

 それに、死の山を打ち壊したあのミサイル。儀礼自体の戦闘能力はないに等しい。とある。

 それでどこまで凌げるか。

(AAランクか……すごいプレッシャー。でも……敵意を感じない)

 わざわざ獅子を別の仕事に誘導までして来たというのに。

 では、一体何のために来たのか。情報を貰って自分がSランクになろうとしているのか。


 目で追えぬ速さでアーデスが儀礼に迫る。

 情報を奪うなら、儀礼の意識を奪うことはないか、それともどこかに連れ去るつもりか。

 どちらにしろ、相手は儀礼の間合いに入らなくてはならない。

 車に足をかけたアーデスが瞬間的に飛び退る。

 アーデスの飛び去った場所で、小さなトラバサミの様な物が閉じる。

「トラップか……」

 アーデスは笑う。子供だましだとでも言うように。

「さすが、キュールを攻略した冒険者ですね」

 感心したように言う儀礼。儀礼のトラップの発動速度はそこらの遺跡よりずっと速いのだ。

 キュール攻略。それは出回るにはまだ早い情報。

 アーデスは再び笑う。別に近付く必要などないのだ。

 気絶させて、後でゆっくり聞き出せばいい。

 車ごと破壊するために、アーデスは剣を下段に構え、気を溜める。

「ちょっ……と待ってください。それ、しゃれにならないです」

 焦ったように儀礼が言い、車から飛び降りる。そして、車から距離を取るように走っていく。

 あの車は儀礼を守るための仕掛けではなかったのか?まぁ、どちらにしろ逃がすつもりはない。

 威力を減らし、その剣圧を儀礼へと切り放つ。

 戦闘能力のない儀礼には必ず当たるはずのそれが、空を切り裂き通り過ぎる。

 当の儀礼は空中へ、頭を下向きに宙返りするように飛び上がっていた。

「何!?」

 前情報では、儀礼の運動能力は一般人程度のはずだった。

 その跳躍は明らかにそれを超えている。

「ふっ、面白い」

 次の構えを見せたアーデスに、儀礼は上空から狙いを定める。

 その手にはいつの間にか銃のような武器。もちろんドルエドには出回っていない。

 ガン、ガン、ガンッ

 金属のはじける音が三度続き、アーデスはそれを剣で打ち落とす。

 儀礼は着地と同時にナイフを投げつける。

「そんないい加減な狙いで当たるか」

 難なくかわしたアーデスは素早く儀礼へと次の一撃を放つ。

 大きく右に跳んだ儀礼。着地の前にまた銃を撃つ。

 空中で狙い定められるのは三発。

 しかし、その三発の間に、アーデスは儀礼へと詰め寄る。

「くっ」

 逃げ場のない態勢。これが、AAランクの実力か。

 アーデスが闘気を込めた剣を近距離で打ち放つ。

 死ぬかも、と思った儀礼の前に、何かが割って入った。


 ガキーィン

 鈍い金属同士の衝撃音。

 目の前には、見たことのない女の人。

 露出部の多い体には、服の代わりのように使い込まれた鎧が装着されている。

 持っている巨大なハンマーはアーデスの剣を完全に受け止めている。

「おいおい、アーデス。お前らしくもない、熱くなりすぎじゃないか?」

 女性が大きくハンマーを振り、アーデスは後ろに跳び退る。

「ワルツ。邪魔はしない約束だろ」

 邪魔をされたことに機嫌を悪くしたのか、睨むような顔のアーデス。

「あたしは、こいつの護衛に付くって決めてんだ。怪我でもされたらたまんないね」

 二人の怒りのオーラに儀礼は自分の体が固まっていくのがわかった。

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