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ギレイの旅  作者: 千夜
19章
520/561

犯人の正体

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

「朝月、他に狼になってしまってる人がいないか探って」

言いながら、儀礼はアナザーへとメッセージを送る。


儀礼:“ドルエドの王都で、変身の魔法薬、もしくは魔法を研究している人を探して。”

穴兎:“また急だな。いいけどな。何かあったか?”

儀礼:“人道的な問題だよ。管理局は長い間放置しすぎてる。”

穴兎:“変身薬な。姿を変えられた人でも出てきたか?”

儀礼:“狼に。”


 真剣な顔で小型のパソコンにメッセージを打ち込みながら、儀礼は狼にされたガスカルを見た。

儀礼も以前、望まずに姿を変えられてしまったことがある。

あれは、人間のままではあったが、それでも不安だった。


「大丈夫。絶対元に戻してあげるからね」

優しく微笑んで儀礼はガスカルに言った。真剣な瞳をしている少年に。

何も言わない少年は、静かに尻尾を揺らしていた。


 それから、朝月はドルエドの王都の中に、灰色のメスの狼とこげ茶色の大きなオスの狼を見付け出してくれた。

獅子とゼラードに頼んでその捕獲を任せる。

町の中に狼の姿の人間を放置しておくわけにはいかない。

すぐに、二人は二匹の狼を連れて戻ってきた。


 気絶したものを、それぞれ肩に抱えている。

「手荒なまねは……!」

儀礼が顔を青くして言うが、二人は肩をすくめる。

「仕方ないだろう。いきなり襲い掛かってきたんだから。怪我はさせてねぇよ」

「こちらも同じく」


 儀礼のように、麻酔で眠らせるような手を持っている二人ではない。

強制的に気絶させて連れて来たらしい。

しかし、公園の中を拠点にするわけにもいかない。

とりあえず、場所を移すことにした。


「管理局がいいかな。ガスカル君が借りた部屋も調べてみたいし。その二人にも目が覚めたら話を聞いてみたいんだけど……おとなしく話してくれるかなぁ?」

気絶した二匹の狼を見て、儀礼は眉をしかめる。

獅子達に襲い掛かってきたのも、恐らくは怯えての行動だろう。

敵意はないと思うが、彼らもガスカルと同じく、元は管理局に居たのだろうか。


 儀礼は管理局へと入る。

受付で、ガスカルが借りていた部屋を聞く。

「申し訳ありませんが、関係者以外に情報をお渡しすることはできないのですが……」

受付けの女性が申し訳なさそうに儀礼達に言う。

申し訳なさそうというよりかは、怯えられているようだ。


 狼を3頭も引き連れた儀礼たちは管理局で浮きまくっている。

冒険者ギルドで依頼を受けた帰りか何かだと思われているようだが、それにしても、気絶している二匹はともかく、ガスカルは自由に歩いている状態だ。

「ガスカル君から研究に助言の依頼を受けまして。申請は通っているはずです、確認してください」

儀礼が管理局のライセンスを見せれば、女性は慌てたようにパソコンの操作を始める。


「はい。確かに。手続きの確認をいたしました。ガスカルさんの部屋は廊下を右に曲がった一番手前の部屋になります」

緊張した様子で語る受付けの女性に、儀礼はにっこりと微笑んで、「ありがとう」と告げてその部屋へ向けて歩き出した。

研究室の扉には当然、鍵がかかっている。

「ガスカル君、鍵……持ってないよね。無理やりあけてもいい?」

困ったように儀礼は狼のガスカルを見る。

何か物を持っているようには見えない。


 研究室は絶対不可侵。許可なく立ち入ることはSランクと言えど許されない。

今回は、ガスカルから許可を得てはいるのだが、手続き自体はアナザーがした強制的なものだ。

「ウォウ」

戸惑うことなく、ガスカルは肯定を示す。


「じゃ、開けるね」

軽く言って、カチャリと鍵を開ける儀礼。

「「泥棒だな」」

獅子とゼラードが声を揃えた。


「許可は取ったから、問題なし」

相手にもせず、にっこりと笑ったまま、儀礼は研究室の中へと入っていく。

獅子とゼラードが後に続き、最後に白が戸惑ったようにおずおずと室内へと足を入れた。


 白にとっては、今現在、何が起こっているのかまったく分からない状況だった。

突然、儀礼が狼を見つけて、それを人間だといい、他にも狼を見付けて来て、今度は管理局の研究室への侵入。

相変わらず、儀礼らしい、意味不明な行動だ。

困りながらも、くすりと白は笑っていた。

結局、いつも他人のために動き出してしまう。それが白の知っている、儀礼なのだ。


 室内には、ガスカルの着ていたと思われる衣類と、鞄がそのまま置かれていた。

机の上には、今使っていたかのようにお茶のセットまで置いてある。

「ちゃんと洗って使った?」

「ウォウ」

儀礼の問いにガスカルはもちろんと肯定を返す。


「とりあえず、室内を調べてみるか。それと、その二人の正体も調べないと。アナザーにこの管理局で行方不明扱いになってる研究者を探してもらおう」

カタカタとパソコンを操作して儀礼はアナザーへとメッセージを送る。

同時に、儀礼の求めていた変身薬の研究をしていた研究者の名をアナザーが送り返してきた。

「ブローザ・ジェイニ、管理局ランクAか。拠点は、王都に別で研究施設を持ってるみたいだな」

考え込むように、儀礼は拳を口元に当てた。


穴兎:“ドルエドで魔法薬の研究をしていて、変身薬をデータ収集の域にまで高められているのは彼女だけだ。”

儀礼:“魔法後進国のドルエドでは珍しい、魔法薬の権威ってとこだね。”


「ドルエドではかなり実力を持ってるみたいだね」

真剣な顔で儀礼が言えば、ガスカルは落ち込んだようにうなだれる。

「大丈夫だよ。僕も負けてないから」

その頭を力強く撫でてから、儀礼はガスカルを励ました。

ニィと笑った顔は不安を感じさせない、自信にあふれたものだった。

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