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ギレイの旅  作者: 千夜
18章
496/561

シャーロ

 白と儀礼たちが楽しく話を続けていると、ガンガンガンと荒々しく扉が音を上げた。

「シャーロ様! いらっしゃいますか?! ご無事ですか!」

エンゲルの慌てた叫び声が聞こえた。

獅子は眉間にシワを寄せて煩そうに扉を開ける。


 途端に、飛び込むようにして騎士の姿をした男が部屋の中へと飛び込んできた。

今すぐにでも剣を抜きさるかのような迫力で、腰に提げた剣に手を当てている。

そして、白の姿をその瞳に捉えると、途端に安堵したように息を吐き殺気を消した。

「シャーロ様、ご無事で安心いたしました。どこかへお出掛けの時には、このエンゲルを供にお連れください。」

白の前に丁寧に腰を折る。


 その光景をポカンと見ていたのは獅子だ。

「白、お前、えらい貴族だったのか?」

騎士が『シャーロ様』と呼び、この敬いっぷり。

儀礼と獅子が拾った時の白は、弱りきった捨て犬のようなありさまだったというのに。


「そう言えば、ドルエドの城に呼ばれたんだもんな、俺ら。」

何となく、納得したように獅子は一人で頷く。


「それは……。」

「シャーロ様はただの貴族ではない! とても貴い御方だ!」

白を背後に隠すようにして、エンゲルが言った。

その言葉に白は慌てる。

獅子や儀礼たちを信用していないわけではないが、今、白の正体を明かすことは多くの敵に狙われることに繋がる。


「これ、エンゲル。落ち着きなさい。」

静かな声と共に室内に入ってきたのは白髪に、白い髭を蓄えた騎士、ロッド。

「部屋の周りに見物客ができてしまっておるぞ。恥ずかしい真似をしおって。皆様、連れがお騒がせしまして、大変ご迷惑をおかけしました。」

ロッドは集まっていた人々に言った。

丁寧に思える物腰だが、その言葉には、言外に早く散りなさいと言う迫力のようなものが含まれていた。


 扉は閉まり、室内には儀礼と獅子、白と、エンゲルとロッドと言う騎士の合わせて5人になった。

それなのに室内は気まずい空気に、しんと静まり返っている。


「この二人は私にじゃなくて、父に恩義があるの。だから私を助けてくれてる。私はただのシャーロ・ランデ。Dランクの冒険者だよ。」

言いながら、白は、以前、獅子と一緒に取った冒険者ライセンスを見せる。

そこには確かに、『シャーロ・ランデ ランクD』と書かれていた。


「お前、まだランクDなのか。」

意外そうに獅子がそのライセンスを見る。

「儀礼でもランクCに上がったぞ。」

「僕でもって何だよ。失礼な。」

不満そうに儀礼は頬を膨らませる。


「二人が、私がギルドの仕事するのに賛成してくれなくて。だからランクはDのままなんだ。」

二人の騎士をちらりと見てから、にっこりと白は微笑む。

「じゃあさ、白! また一緒にパーティ組まない? 3人一緒だとAランクの遺跡にも入れるよ。」

わくわくとしたように瞳を輝かせて儀礼は言う。


「お前はまた遺跡か。20以上の遺跡を攻略してもまだ飽きないのか。」

呆れたように苦笑を浮かべて獅子は儀礼を見る。

「いいよ! 私もまた仕事したいし。」

嬉しそうに白は笑う。

儀礼も嬉しそうに笑うと二人は手のひらを打ち合わせた。


「まずどこ行く? 近くだと、ここかここで、愛華を迎えに行ってからなら、こっちの遺跡が近いよ。遺跡はやっぱりフェードにいいのがたくさんあるけど、ドルエドにある遺跡も制覇したいよね。」

机の上にいくつものマップを広げて儀礼は言う。

その顔は楽しそうに輝いている。


 ゴホン、とロッドが咳払いをした。

自身でも儀礼の雰囲気に飲まれていたことに気付いたらしい。

「お二人とも。お二人がシャーロ様の護衛として雇われたのだと言うことをお忘れなく。シャーロ様も、浮かれている場合ではございませんぞ。何のためにアルバドリスクへ戻ろうとしているのかお忘れなく。」

厳しいロッドの意見に、白は自分の国が今、どういう状況なのかを思い出した。

儀礼達に出会えた嬉しさで、忘れ去ってしまっていた。

顔を俯け、反省したように白は黙りこむ。


「忘れていた方がいいこともありますよ。特に、どうにもならないことだったら。」

さらにマップを広げながら儀礼は言う。

しかし、その声は真剣だ。

「アリバドリスクに向かうなら、愛華が必要だね。愛華を取りに行って、その足で野宿のかわりに、この遺跡に泊まろう。焦ることないよ白。アルバドリスクの状況は僕も知ってる。でも、信じるしかないよ。白を安全のためにドルエドへと送り出してくれた家族は、そんなに簡単に居場所を追われるような人たちなの?」

何も知らないはずの儀礼が、まるで、全てを知っているかのように語る。


 白の中に膨らんでいた焦燥が小さくしぼんでいく。

まるで、大丈夫だと言われたかのようだった。


「お前は、遺跡に入りたいだけだろう。」

バシンと獅子が儀礼の頭を叩く。

「痛いよ獅子。」

目に涙を浮かべて儀礼は不満を表す。


 ふふ、と声を出して、白は思わず笑ってしまった。

変わっていない。

半年前に旅した時の少年たちのそのままだと白は安心した。

アルバドリスクの内乱の情報を聞いてから、ずっと不安だったものが、少しだけ軽くなったような気がしていた。

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