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ギレイの旅  作者: 千夜
2章
47/561

証明書の発行

 まずは、管理局の夜間窓口へ向かう。

 管理局は基本的に24時間体制を取れるようになっている。が、夜になればさすがに閑散としており、一人の老人と二、三人の研究者らしき者がいるだけだ。

 受付へと向かう儀礼。

 目立たないように待ってろ、と言われた獅子は剣をマントの下に隠したまま、隅のソファーに座った。

「……申請者はギレイ・マドイ。持ち主はリョウ・シシクラ。冒険者登録しています。破片の回収手続きはすんでるんで、研究施設行きにお願いします」

 話している儀礼の声が聞こえてくる。

「ああ、はい、はい」

 眠そうな、なんともやる気のない受付の男の声。

 カタッカタッと、のろのろした様子でパソコンに打ち込んでいる。

「すみません、急いでるんで、すぐに剣の証書貰いたいんですが……」

 急かせるような口調の儀礼。

「そんなバカを言っちゃいけないよ。申請から許可まで、審査があって一週間はかかるんだから」

 男は子供である儀礼を見下したように見て、伸びと同時にあくびをする。

 ピーッ という電子音と共に、横にある機械から紙が出てくる。男は紙を手に取ると目をやる。


 その瞬間、バチッという音がしそうな勢いで男の目が見開かれた。

「し、失礼いたしました!!」

 ピンと背を伸ばしてから、深々とお辞儀をする男。

 それを見て苦笑する儀礼。

 印刷された用紙に記されていたのは、

『所持要請:リョウ・シシクラ 冒険者ランク:B 管理局:初回

 申請者:ギレイ・マドイ 冒険者ランク:E 管理局ランク:S』

 ランク“S”の文字。

 国家、どころか世界レベルの域だ。小さな国の王よりさらに上、特別な存在だ。

「そんなかしこまらなくていいですから、手続きを進めてください。保証人が要りますか?」

 慣れた様子のギレイ。

「す、すぐに!」

 飛び上がらんばかりに体を起こすと、再びパソコンに向かう。

 その指は震えているが、打ち込む速さは相当なものだ。

「保証人はどなたで? マドイ様にいたしますか? ですが、要請書が届くのが早くても明日になりますので、証書の方も……」

 男が汗をかきながらおそるおそる、といった感じでしゃべっている。

 儀礼はその間にも電話に手をかけ、ダイヤルを回す。

「この町の人間に頼むよ。それなら今貰えるだろ?」

「は、確かにそうですが、保証人の手続きが済みませんと本証書は……」

 言いかけた男を儀礼は手で制す。

 電話の相手が出たようだ。


「夜分に失礼致します。先ほど伺った者ですが、管理局の手続きで、保証人になっていただきたいのです」

「まさか、つぼの件ですか……?」

 不安そうな男の声。

「いえいえ、つぼの事ではありませんが、処理をした者が『光の剣』を抜きまして」

「は?」

 間の抜けた声。電話の相手は話しが理解できていないようだ。

 まぁ、当然だろう。ありえないことが起こったのだから。

「腕は保証済みですよね、あれを倒したのですから。何分急ぐ身なので今すぐに許可が必要なんですよ。コレクターをしているあなたならお分かりでしょう。ええ、そうです。はい、ありがとうございます」

 そこで儀礼は電話を受付の男に渡す。

「彼が保証人を引き受けてくださるそうです。手続きは明日」

 儀礼の言葉に戸惑いながら、男が受話器を受け取る。

「もしもし、管理局夜間受付ですが……はい! わかりました!」

 電話を受ける男の背が再び伸ばされる。聞こえたのは、この町の有力者の声だった。


 受付の男が何枚かの書類に印を押し、文字を書いてゆく。

 その間に儀礼は獅子の方を向き手招きした。獅子は静かに立つと、気配を消したまま歩いてくる。

 受付の男が獅子を見ると、

「剣の確認をします」

 と言って、台の上に剣を出すようにうながす。

 儀礼を見て、頷いているので、剣を台の上に置く。

 男が剣の写真を撮ってから、柄を握る。引き抜こうとするが抜けない。

 ああ、本物だ。男はなんとも複雑な表情をした。

 本物の光の剣を間近に見れた事への喜び、自分が抜けなかった事への悲しみ、そして、子供の頃からあった伝説が、旅立っていく寂しさ。

 男は首を振り、それらを追い払う。

「中身の確認を、剣を抜いてください」

 男の声は穏やかだった。

 獅子が握ると、剣は淡く光を放ち、スーーッとその美しい刀身を見せた。

 ほんの数瞬、見とれてから男は言った。

「ありがとうございます。剣はお返しします。これで全ての手続きは完了いたしました。こちらが証書になります。大切に保管してください」

 何度となく繰り返してきた営業文句が、深い響きに聞こえた。

2014/7/7、ギレイの冒険者ランクをCからEに修正しました。

読んでくださりありがとうございます。

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